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2007年10月 2日 (火)

シティー・オブ・ゴースト : ロンノル、ポルポト、魑魅魍魎の大地

20070702102853

劇場ではなくビデオで観たからか、アクション・シーンは大して迫力もなく面
白くもない。この映画が、決して悪くはないのに、今一つ詰まらなく感じさせ
るのは案外そんな処に原因があるのかも知れない。

同じ頃らしいオキサイド・パンのバンコクを舞台にした<テッセラクト>が、逆
にストーリーが単純なのにアクションが実にうまく作れていて、むしろ"アー
ト"といって好いくらいな質のものになっているのとちょっと対照的だ。

≪テッセラクト≫の方がスピード系なら、こっちの方は明らかに六、七十年代風
の、"ベトナム戦争"の影がちらつくようなグラス(大麻)、いや今時そんな言葉
使う奴居ないだろうからせめて如何にもアメリカンなガンジャ風とでも云うべ
きか。

ハリケーンで甚大な被害を受け、その多くの被災者達が頼るものといえば、ア
メリカではやはり自らが積み立てた災害保険らしい。
この映画は、ついこないだのハリケーン・カトリーヌより前に作られていて、
インドネシア沖地震・津波 (カラバオの・・・ツナミ・クー・アライのフレー
ズを想い出してしまう) でも事後の遅々とした復興を見れば、やはりそんなも
のなんだと納得せざるを得ない。
が、しかし、そんな頼みの綱である長年積み立てた保険が、実は"ゼロ"、つま
り一セントも掛かってなかったら、果たしてその被災者達は一体・・・

監督・主演のマット・ディロン扮するジミーが正にそのゴースト・カンパニー
たる詐欺保険会社の営業責任者で、FBIに経営者マービン(ジェームス・カーン)
の行方を追及され、身の危険を感じ、バンコクに高飛びする。バンコクには、
タイ女に入れ込み同棲している同僚のキャスパーが住んでいて、更に隣国の首
都プノンペンへマービンに会い行く事となる。

ここから本編といったところだが、サップ川近くだろうか、<ベルヴィル>とい
うフランスの俳優ジェラール・ド・パルデューが営っている植民地時代の朽ち
た建物のカフェの向かいにあるホテルに投宿する。

このド・パルデュー扮する如何見ても小綺麗とは云い難いなりのオーナーが、
ステレオ・タイプと云え、本当に好く決まっている。
ごく最近は知らないが、首都といえども赤い土埃舞うプノンペンでは、バンコ
クやチェンマイのように小綺麗では居られず(<ベルヴィル>の椅子の上にハ
ンカチを敷いて座るバンコクから来たキャスパーがカンボジアを露骨に嫌って
いる )、それにド・パルデュー以上に怪しげなフレンチの姿も少なくない。
欧米や日本・韓国からやばくなってタイへ逃げ出し、更にカンボジアへと逃げ
延びてきた怪しげな連中がそのまま画面に映っていそうだ。と、云いたいけど
、残念ながらそこまでの映像性はない。そこまで描ければ、アクション抜きに
しても、<テッセラクト>と同じくらいの傑作になったかも知れない。

でも、雰囲気は好い。
カンボジアのあらゆるジャンルの音楽を流していて"これぞカンボジア" 風では
あっても、現地人にとってはともかく、所詮外人たる僕等にとって、それは正
にカンボジア、プノンペンそのものに違いない。
変に欧米のロックやもどきを殆ど使ってないのが雰囲気を損なわず、むしろ嬉
しいぐらいに醸し出してくれている。

これもお決まりの、現地人のソクというシクロの運ちゃんとひょんな事から付
き合いが始まり、次第に信頼関係すら生まれてくる。<ベルヴィル>でソフィー
という遺跡発掘・保存関係の仕事をしている女とも知り合い、やがて惹かれ合
うようになる。
このソクやソフィー、そしてボスのマービンとの親密化してゆく人間関係を軸
に、(殊にボスのマービンとの関係の謎解きの様相すら呈し始める)映画は進行
してゆく。
子供の頃から彼の母親と親しかったマービン、そしてジミーにも親身に接して
呉れてきた父親的存在のマービン、それが最後に息を引き取る寸前に本当の父
親であったと分かってしまう。

≪クラッシュ≫でも、家で内臓を患い一人でトイレにも行けぬ父親の介護で不
眠症状態に陥っている質の悪い警官をやっていて、やっぱりアメリカ版≪父帰
る≫・・・現代風人情ものの世界なんだろうか。

まあ≪クラッシュ≫ の方はドラマチックに作られていて介護シーンが生きて
いたんだろうが、こっちの方は緩慢に謎にもならない謎解きがわざとらしいま
でに展開されてゆく。

実はボスのマービンは詐取した金を、すべてカンボジア国内の一大カジノ、世
界中の動物を放し飼いにした狩猟ゾーン等の備わった三十階建てのカジノ・プ
ロジェクトに注ぎ込んでいたのだ。

ロシアン・マフィアをかわすために、ロシアン・マフィアと通じた裏切り者キ
ャスパーを騙すため、現地側のシデス将軍と組んで自らの拉致事件の工作をす
るマービン。最後は、我が息子ジミーを助けるため将軍と撃ち合いまでし被弾
して死に至る。
この辺の展開は些か不自然過ぎていて、もう少し整合性有っても好かったので
はないかと思う。

どっちにしても、僕にとっては、カンボジア・プノンペンのあの雰囲気を、お
ざなりではなく、それなりのこだわりを以て映像化している正にその一点で評
価に値すると映画だと思っている。
 

監督: マット・ディロン
脚本: マット・ディロン、バリー・ギフォード
撮影: ジム・デノールト
制作: Banyan Tree
2002年作品(アメリカ)

Photo_13

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