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2007年10月 2日 (火)

ツイ・ハークと上海「小刀会」

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ツイ・ハーク、香港の古装武侠映画の雄だったはずが、最近は如何なんだろう。金はかけたらしいが「セブン・ソード」なんて駄作じゃ話にならないし。むしろ中国の方が大作主義ではあるが面白くなってきてる。それでも、やっぱり弁髪のジェット・リー主演の黄飛鴻シリーズなんか今観ても面白い。で、以前から気になっていた事があった。
音楽である。 
 「ワンス・アポナ・タイム・イン・チャイナ2 天地大乱」、(中国題)男児当自強の冒頭、提灯をさげ一枚歯の下駄をカッ、カッ鳴らしながら小娘が、白蓮教の建物の奥に誘ってゆく。白装束を纏った信徒達の前に、教主と二人の取巻きが現れ、教団旗を打ち振り始める。その時、古典楽器を使った勇壮な音楽が流れる。 
 紅衛兵娘を擬したようにも想えるその小娘の誘いから始まるイントロは僕のお気に入りでもある。
 ツイ・ハークは、中国籍のベトナム・サイゴンで少年期を過ごし、ベトナム戦争の難を避けるため一家でアメリカに移住したらしい。つまり、正に紅衛兵世代なのだ。南ベトナム→アメリカだと、反-中国共産党=反-文化大革命の図式かも知れないが、あの時代、少・青年期であってみれば、逆の、変革にシンパシイーを抱いていた可能性の方が強い。勿論実際に映画を制作する頃になってみれば、それも可成り複雑なものとなったろう。
 
 そのフレーズは、ツイ・ハークの古装武侠片「新龍門客桟」ニュー・ドラゴン・インでも、ブリジット・リンや他の仲間が大勢死んだ後、マギー・チャンやレオン・カーファイ等が住み慣れた砂漠の一軒家の宿に火を放ち去ってゆくエンディングにも使われていた。

「小刀会」という'61年の文革前でまだ「革命的」という修辞の冠されてない舞劇片のVCDを観ていると、太平天国の乱に呼応して1853年に蜂起した上海小刀会の故事(物語)のイントロで、上海の波止場で荷役人夫が欧米列強と清政府の役人に殺され、憤慨した人夫達や小刀会の構成員達が決起し、三角の小刀会の旗を打ち振る時、その勇壮な音楽が流れ始める。
 あっ、これなんだと、これがオリジナルなんだと漸く分かった。
 作曲は商易となっていた。
 彼等小刀会は蜂起後、県城に一年以上立て籠もり、別にキリスト教とは係わりがなかったが、革命=反清復明という一点で太平天国軍と連携しようとしたようだ。
 首領・劉麗川が最後に倒れ、女主人公の周秀英に自らの刀を渡す。
秀英は娘子軍やらを引き連れ県城の門から欧米列強と清軍の包囲した外へと突撃してゆく・・・ここで終劇。
 実際、周秀英は武芸に秀でていて、娘子軍を組織し、あっちこっちで活躍していたらしい。剣や刀、槍をもってである。中国の女は、トーンが高い分、やっぱり本当に怖かったのだ。
 歌劇の割には、剣戟シーンが武侠映画並にやたら多く、香港や中国の古装武侠映画の伝統、否、原型(の一つ)を見る想いがした。

 仲々勇壮(なだけではないが)で面白いんだけど、文化大革命の頃だと先ず作られなかった映画であろう。批判の的になるのは必至だし、ひょっとして制作スタッフ達は江青や紅衛兵辺りに激しく非難され自己批判を迫られたのかも知れない。
 
 で、ツイ・ハークの「天地大乱」だが、
 白蓮教を、毛沢東を信仰する紅衛兵と見立てたのか、太平天国軍(=小刀会)なのか、それとも「狂信」そのものと擬したのか・・・。
勿論端的に宗教そのものであるのかも知れない。

 因みに、「小刀会」の劇中でもでてくるが、上海の有名茶店・湖心亭のある預園の点春堂に小刀会の本部を置いていたらしい。預園には何度か行ったけど、そんなもの在ったろうか。

 VCDのラベルのコピー、
 舞劇片:描写上海小刀会起義的故事。  
 
 監督 : 叶明
  出演  : 上海歌劇院
  作曲 : 商易
  演奏 : 上海歌劇院民族楽隊
  制作 : 上海天馬電影制片庁   1961年 

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