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2007年10月 1日 (月)

カイバル・ホテル(ペシャワール)

20070629105906

イランからパキスタンに入り列車で一気にアフガン
国境に近いペシャワールに向かった。 
イラン国境から一緒になったセミ・プロ‐カメラマ
ン氏の薦めで、日本人宿として有名だったので避け
ようとした <カイバル・ホテル> に泊まる羽目とな
った。
住めば都とでも謂うべきか、彼がとっくに発った後
もずっと居続け、一月以上も滞在してしまった。
その頃はまだ外人登録はしなくてはならなかったも
ののノー・ビザで、延長も三ヶ月のダブル・ビザが
135Rs(ルピー)で貰え、のんびりとしたものだった。

   <カイバル・ホテル> は1940年代に建てられた三
階建ての建物で、屋上にも部屋か何かあったように
記憶している。
屋上では店のスタッフが絨毯を敷いてお祈りをした
り、泊まり客が日光浴や遠くに白い雪を頂き聳えた
アフガンの峰々や下のサダル通りを眺めながら雑談
したりしていた。
ドミトリーは30Rs、僕が最初に入ったドミは五人部
屋で、新市街の通りに面して窓があった。窓から向
かいにあるG.P.O (中央郵便局) が覗けていた。
泊まり客は日本人より白人達の方がちょっと多かっ
たようだが、頂度 <湾岸戦争> が勃発した時期で、
大使館の退去勧告などもあって次第に泊り客も減っ
ていった。旧市街に泊まっていた日本人は風当たり
が強く皆他所へ去っていった。

ある時、銃声か何かの音がしたとおもったら、サダ
ル通りいっぱいにサダム・フセイン擁護の反米・反
西側デモ隊がこちらへ向かってやって来ていて、ま
だ残っていた数人の白人達が窓から下のデモ隊の写
真を撮り始めた。すぐにデモ隊に見つけられ、形だ
けの投石を受けた。慌てて、上の階に逃げ、そこか
ら懲りずに写真を撮り続けた。 

ドミのテーブルの上に、日本の本や文庫本が何十冊
も積まれていて、<大菩薩峠> や <深夜特急>、甲斐
大策のアフガン小説まであった。僕も初めて <大菩
薩峠> をそこで読み、イメージとは余りにかけ離れ
ていて唖然とさせられたのを覚えている。

個室の方は定かでないが、ドミの方のベッドは、チ
ャール・パイと呼ばれる木柱に網を張った代物で、
大きな欧米人達は寸法が短く斜めに寝ている者も居
た。
寒くなると、窓側に設えられたストーブを点けてく
れた。暖まったところに、同室の僕以外全員がチャ
ラスをやっていて、その濛々たる紫煙の中で知らず
眼がトロンとしてしまっていた。
アフガン人のブローカーに云わせると、マザール(マ
ザール・シャーリフ)のが一番佳いらしいかった。

食物ではやはりカバーブで、例の馬鹿デカいハンバ
ーグ風のシャミ・カバーブではなく、普通の串刺し
肉だ。隣のカニス・ホテルの一階でカバーブを焼い
ていて、1Rsのカバーブを四本、ちょっと先の角に
あったチャイ屋でナーンと一緒に食べるのが一番の
楽しみであった。ナーンに肉汁が滲みていてこれほ
ど美味いなものはない。中国でも食べたが、やはり
ペシャワールのアフガン人達の焼いたカバーブが僕
には一番であった。
中東のドルマは、それに比べると数段味が落ちてし
まって、トルコでは他にも色々あって問題はないが、
シリアなんて生焼けチキンぐらいしかなく、苦労さ
せられた。

カイバル・ホテルにも一階にレストランが有り、僕
も何度か食べたが、料金が少し高く、大抵の者は他
に食べに行っていた。
カニスとは逆方向に在る有名な<グリーン・ホテル>
やG.P.Oの裏にあった中国料理屋にも、時折大抵連
れだって行くこともあった。
チャイニーズ・レストランの方は、僕らからみれば
只のレストランだが、地元のバキ人達にとっては高
級な店で、日本人が本国並に一、二品一人分として
注文しているのに較べ彼らは一、二品を家族皆でそ
れぞれの皿に分けて食べていた。食べると謂うより、
高級な雰囲気を楽しむといった感じであった。

そんなカイバル・ホテルも、次に訪れた時にはもう
なかった。建物は在ったが、真っ白くペンキで塗り
替えられ、メヘラン・バンクに変わっていた。
ホテル自体は必ずしも経営状態が悪かった訳でもな
く、オーナーが他のことで借金を作ってしまい、そ
の形に建物が取られてしまったらしい。

僕が滞在したのは後期否末期のカイバル・ホテルだ
ったが、何ともあっけない幕切れであった。
それ以降、こっちの新市街の方は、少し駅よりの <
ツーリスト・イン・モーテル> や隣の、屋上のベッ
ド置き場をそのままドミにしたような <カニス・ホ
テル> がその代用となったが、到底カイバル・ホテ
ルと較べうるようなものではなかった。
もはや幻のホテルの一つとして歴史に刻印されてい
ると云っても過言ではない。

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