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2007年10月18日 (木)

西便制(ソピョンジェ)   《恨》

Sopyon02 

 韓国映画は余り観ない。
 半分はレンタル屋で借りた物で、最近借りた《漢江の怪物》以外、詰まらぬ物ばかり。後は国内販売の廉価版とYESASIAで買った物数枚。
 
 これは韓国で記録的大ヒットした有名な作品らしい。
 大型予算映画ではなく、寧ろ地味な作品だけど、何度観ても面白い。
 昔、ヨーロッパの映画で、《旅芸人の記録》って映画があった。あれとは些か趣が異なっているが、岩下志麻が主演した《はなれ瞽女(ごぜ)おりん》ともちょっと違う。

 パンソリ、韓国を代表する芸能の一つらしいけど、旅芸人達が表演してきたものとは知らなかった。一昔前、チョー・ヨンピルが日本で流行った頃、パンソリの名も日本人の人口に膾炙するようになった。
 パンソリは、地域的に三つに分けられ、簡単に云えば、女性的な西便制、中世的な中便制、男性的な東便制となるらしい。
 パンソリは、基本的に、唄手と鼓手の二人で構成され、唄手は唄いながらも手振りを入れたり、語ったりし、鼓手は太鼓を叩きながら相の手をいれたりする。

 中央のソウルの歌舞団の団長の女に手を出し、歌舞団を追出され、村から村へと流浪してゆくユボン(金明坤)。孤児男女二人を唄手と鼓手に育て上げようと引き連れ旅を続ける。
 やがて、二人は成長し、鼓手の青年ドンホ(金圭哲)が貧しさと先行き不明の流浪に堪えられなくなって逃げ出す。そのショックで唄手の娘ソンファ(呉貞孩)は唄えなくなり寝込んでしまい、師匠ユボンは仕方なく一人で唄を唄って病の床についた娘を看病し面倒を看る羽目に。
 娘にまで逃げられたくないのと、娘の唄に今一つ足りぬものを感じていたユボンは、それを《恨》だと云い、娘から視力を奪う。
 
 あれだけ厳しい流浪生活を続けてきたにも拘わらず、娘は心の内に、暗い怨念めいたものすら抱くことがなかった。生活が苦しくとも、その流浪家族の中の愛情に満ち足りていたのだろう。そんな「純」な心で・・・
  

  純・・・恨・・・超恨

 この映画で一番印象に残るのは、やはり、延々と長廻しで村外れの細くうねった路を、家族三人で荷物を背負ったまま、睦まじく唄い囃しそして舞いながら、ゆっくりと進んでゆくシーンだろう。

  アリ アリラン  スリ スリラン
  アラリーガー   ナンネー  

 所謂「アリラン」とはテンポが異なる。
 あんなしっとりとして静かな曲ではなく、もっとエモーショナルで次第にテンポが速くなってくる。アリランには無数のバリエーションが有るらしく、これは珍島アリランのバージョンらしい。
  
 このシーンは、しかし、映画の流れから見ると一見不可解だけど、往々にして家族とはふとそんな親和力に溢れた一瞬があるものだ。あるいは、逃げ出したドンホが、己の希求した「家族」を幻視した光景なのかも知れない。                            

 ユボン  : 金明坤
 ソンファ: 呉貞孩
 ドンホ : 金圭哲

 監督  : 林権沢
 脚本  : 金明坤
 音楽  : 金秀哲
 
 制作  1993年作品

Sopyon01

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