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2007年10月15日 (月)

イランの難事(トラブル)

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 災難とは如何んな処で降ってくるか分からない。
 とりわけ旅行者には、絵に描いたような難事(トラブル)が憑きもののようである。

 モサーフェル(旅人)を歓待する国イランは、しかし、国情を反映してか、権力関係がらみのトラブル、以前はコミッティ(革命委員会)、その後は警察になったようだが、現在は如何なっているのだろう。

 インド→パキ→イランとあっちこっちで顔を合わせた日本人青年の一人が、テヘランで、街中で知り合ったイラン人に親切にされ、彼のバイクであっちこっち街中を案内して貰った。
 頻(よ)くある話だ。
 と、ある通りで、突如警官に呼び止められ、二人とも警察署に連れて行かれた。これも又イランでは頻くある話だ。けど、彼の場合、些か事情が違った。
 こともあろうに「スパイ罪」の嫌疑をかけられたのだ。
 パキ以東なら、バクシーシ狙いってことで、金で何とかなったであろう。だが、イスラム原理主義国イランでは、可成り様相が異なる。
 二人は必死で自らの無実を訴えたらしいけど、結局、留置所に放り込まれた。三日ほどして漸く解放された彼は、逃げるようにイランを出国し、日本に帰国した。
 二度と旅なんてしないぞ!!と、吐き捨てように。
 彼が留置所に入っている事を知る日本人は一人も居ず、それもスパイ罪。正に孤立無援を絵に描いたようだったろう。インドやタイとは又違う「イラン」独特の恐怖に苛まれながら。
 下手すると、容疑は異なるが、《ミッドナイト・エキスプレス》になるところだった。
 僕も、街中やテヘランのバス・ターミナルで、警官に因縁をつけられ、派出所等に連れて行かれたりした。けど、そこで直ぐ追い返された。
 テヘランの"テルミナーレ・オートブス"じゃ、長髪に髭の偉いさんから人相の悪いスキン・ヘッドの下っ端までもが、アメリカ映画の刑事物に出て来そうな面構えばっかりだったのには笑てしまったが。
 
 

 これは、旅先の現地のトラブルの話。
 タブリーズからウルミエ方面に向かう途中であったか、とある小さな集落の近くに乗っていたバスが止まった。
 僕は一番後部に坐っていた。後部窓から、その背後の通りを眺めた。
 と、何か雰囲気がおかしいのに気付いた。そこは頂度カーブになっていて、道路側に一人の鳥打ち帽を被った中年の男が立っていた。その数メートル先の歩道で地元民らしい親爺達が何人も気色ばんだ貌をして、その男に何か罵声を浴びせながら、小石を投げつけていた。強くぶつけるというより、威嚇するように。が、一人の肥えた親爺さんだけは、大きな岩を頭上高々と抱え上げ、その男めがけて投げつけた。岩は男の足下に転がった。
 狙われた男は血相を変え、慌てて、走って来て一時停車した乗用車に、ボンネットを叩いて、「乗せてくれ」というような仕草をしたものの、どの車もただならぬ気配を察してか、急いで走り去っていった。
 
 そこから数メートルしか離れてない歩道に、
自動小銃を構えた兵士が一人歩哨に立っていて、親爺達はその兵士に何か訴えていた。彼一人では事態の掌握が出来ないようで、銃口を上に向け、バスの進行方向の二十メートル先に立っていた別の兵士に知らせようと、引き金を引いた。
 ところが、バスや他の車の音に紛れるのか、その件の兵士は振り向きもしなかった。兵士はえらく焦ってしまって、一体如何するんだろうと眼を皿のようにしていると、バスが動き始めた。
 僕以外の乗客の誰一人として、窓硝子一枚後ろで起こっている尋常ならざる出来事に気付く者は居なかった。バスはそのまま次第に加速してゆき何事もなかったかのように一路目的地に向かって走り出した。
 
 あれは一体何だったんだろう?
 今だもって定かでない。場所的にはクルドの地域だったので、ひょっとしてあの男は、イラク人だったのかも知れない。けど、確かあの辺りは結構互いに行き来があるようにも聞いていたし、イラク人というだけで、襲われるとも思えないんだが・・・

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