ルアン・タロック69 (シックスティナイン)
タイトル通り「喜劇69」ってところなのだろうが、ペンエーク監督の他の
他の作品、『地球で最後の二人』以外、『ファンバー・カラオケ』、『インビ
ジブル・ウェーブ』、『プローイ』は観てない。
ファイナンス会社のリストラにあったオフィス・ガール、トゥムは、絶望し
てアパートの自室のキッチンに置いてあった何種類もの洗剤液を飲んだ
り、拳銃で自殺を図る衝動に捉われるものの実行できなかった。直ぐ求
職活動もせず自殺衝動に駆られるってのは、'99年頃だから、タイ・バー
ツがどんどん下がっていた時季であったろうか。と、自室のドアの前に、
小さな段ボール箱が置いてあった。ためらいもせず彼女は部屋に持って
入り、普通にためらったりの細々したショットを面倒ではしょったのかテン
ポがかったるくなるからか、あるいはリストラのショックで平衡感覚が麻痺
してしまったって事なのか、包丁で箱を破ってしまう。中には、100万バー
ツの札束がぎっしりと詰まっていた。そこから、物語が始まる。
早速、悪徳ムエタイ・ジムの使い走りの二人組が、ドアをノックし、段ボー
ル箱がインスタント麺メーカーの「ワイワイ」のか「マーマー」のかで揉めた
り、バンコクではよく目にする(シーロムのマックの前なんか群れなしている)
手話で障害者の相棒と遣り取りしたり、冒頭のおみくじ棒で三人のリストラ
社員を決めたり、この映画全体がそんなショット、エピソードで構成されて
いる。俗に言う外国映画賞狙いの感無きしもあらず。その頃のフレーズで
いえば、「アメイジング・タイランド」ってところだろう。が、これは日本でも見
られる現象で、必ずしもそうではなく、むしろ自らの国・風俗にエキゾティシ
ズムを観る範疇のものなのであろう。それが、タイ国内で大ヒットしたのだ
から、もはやタイ人自身の少なからずがそんなメンタリティーを持ち始めて
るのだろう。尤も、イサーンの農村部の住民達までがそうとも思えないが。
結局、紆余曲折を過て、彼女は、自分の部屋の中に警官も含む多数の
男達の死骸を抱え込んでしまったものの、100万バーツを箱の中に詰め、
水の中に隠せた。親友のジムを失うという代償を払いはしたが。
最後の、トゥムの部屋での、警察×ギャング×ギャングの三つ巴の殲
滅戦は、クリスチャン・スレーター主演のトニー・スコット監督作『トゥルー・
ロマンス』('93)で有名になり、その後あっちこっちで見かけるようになった。
コミカルな手法なので、この映画には不自然さもないけど、簡単に銃声
だけで済ましている。予算の問題でそうなったのか、クールな殺人劇を
貫徹するためなのか。血塗られたおどろおどろしい物好きのタイ人達に
したら、なんとも物足らぬ、ナンプラー抜きのカオ・パットみたいな物にし
か思えないのではと、つい余計な心配までしてしまう。
インド映画ですら、例えばシャー・ルーク・カーン主演の『サワデス』で、
彼の扮するNASAのエンジニアが、母国インドに戻った時、決して水道
の水を口にせず、大都市でめいっぱい購入したミネラル・ウォーターし
か飲まないといったエピソードが出て来るぐらいだから、タイにこんな映
画が出来ても別に如何ってこともないのだけど、何しろ"喜劇"なので、
そんなノリで観てれば物足りなさ(笑いや諧謔って面でも薄味だが)はそ
れほど気にすることもなく楽しめる作品ではある。タイ人は、おどろ物だ
けでなく、又タロックはじめ、お笑い物好みでもあったのだ。
トゥム : Lalita Panyopas
ジム : Tasanawalai Ongartittichai
ペン : Sirisin Siripornsmathikul
ミスタ-・トン : Arun Wannarbodeewong
監督 ペンエーク・ラタナルアン
脚本 ペンエーク・ラタナルアン
音楽 アモーンポン・メータークンナウット
美術 サックスィリ・チャンタランスィー
制作 FIVE STAR 1999年
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