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2007年12月 8日 (土)

任侠外伝 玄界灘

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 日本海沿岸地域と朝鮮半島との行き来は、沖縄と台湾との交通・交易、それも小舟などで行き交うほどに簡単且つ頻繁であったのだろうか?
  沖縄なんかは、ついこの間までフィリピンの舟まで遣って来ていたという。この映画を観ていると、そんな小さなモーター・ボートででもそこら辺の民間人が安直に朝鮮半島に行けそうに想えてしまう。そういう爽快感あるいは玄界灘ー日本海を小舟で渡ってゆくという雄々しさ、それに大和時代から倭寇、そして近代に至る連綿とした軋轢史(ひとえに侵略史と断じてしまうと歴史のダイナミズムを損なってしまう)が渾然一体となって造形された映画であろう。
 只、結果的にはその(七十年代)時代の映画としても、《状況劇場》唐十朗の映画としても、可成り肩透かしを喰わされた感は否めない。
 安藤昇や宍戸錠、天津敏等の東映(実録)任侠映画の面々のイメージを敢えて踏襲し、唐自身の映像性よりも、《東映任侠映画》自体のイメージに同化したかったのかも知れない。あるいは、又、もっと即物的に初めての映画監督という不慣れ・未熟という技術の問題であったかも知れない。
 例えば、大袈裟な漁民用の黒い雨具に身を包んで、棒切れの杖をつき傷ついた片脚を引き摺りながら、玄界灘を背に海辺から一歩一歩よろけ前進し続ける光景は、唐獅子牡丹の刺青した高倉健が単身長ドスを片手に敵陣に乗り込んでゆく画面を彷彿とさせるが、正に《状況劇場》的唐十朗のオドロオドロしさの片鱗の発露であろう。でも、やはり出来は今一。唐十朗では許されないレベルだ。街頭の赤テントで演れば見事すぎるくらいに演ってのけるのであろうが。

 劇中、国鉄のストライキを当てにして沢木組が目論んだ便乗臨時輸送トラック便が、ストの大幅切り上げの中止になったため頓挫してしまい、抗議に来た蛤業者に、組合の弱腰を散々罵った後でこうまくし立てた。
 「国鉄みたいなええ加減なトロツキストは相手にせんのよ・・・」      
 これは唐というより共同脚本の石堂淑郎の書いたセリフではなかろうか?
 大島渚と組んでいた頃の十八番的フレーズだったと思う。当時ならヤクザが組み合いの弱腰をなじるなんて結構受けただろうが、今時"トロツキスト"なんて死語でしかなく、如何にも古色蒼然として、それが又生きた言葉の意味と伴に、一つの味わいともなっている。

 朝鮮戦争の頃、日本国内に運び込まれた米兵の屍体洗いのバイトに精を出していた学生の近藤(安藤昇)と沢木(宍戸錠)は、通りすがりの黒マスクの男(唐十朗)に現地だともっと儲かると教えられ、玄界灘を越え釜山に渡る。(ベトナム戦争の時も、運び込まれた米兵の屍体洗いのバイトは高額で有名であった)
 戦死した韓国兵の遺族に認識票を届ける軍属の仕事に就くが、元々ヤクザな二人は、認識票を渡しに赴いた先(釜山市天新洞125番地)で、酒の勢いもあってか、そこの遺族の若い女達に欲情し、犯し殺してしまう。近藤が犯し殺害した女が李春仙(李礼仙)で、二人が逃げ去った後、棺を蹴破って生き返える。ところが、春仙は事もあろうに鬼畜-日本人の子を孕んでしまい、産み落とした後、海に飛び降り自殺してしまう。

 それから幾歳月を過て、沢木は下関でヤクザの親分に収まり、韓国から密入獄してきた女達を東京まで運ぶ家業を営んでいた。
  釜山から運ばれてきた女達の、9人のはずが11人の2人多い余計者の父娘の娘・李考順(李礼仙)に、近藤の居候・田口(根津甚八)が恋情を抱く。が、近藤は、嘗て自分が釜山で犯し殺した女にそっくりなその娘を犯してしまう。やがて、その娘の父親(小松方正)から、あの娘はお前が昔犯し殺害し損なった女の産んだお前の娘だと告げられる。実は、その父親は、嫁の仇を討つために娘を連れはるばる玄界灘を渡ってきたのであった。

 沢木組の面々、《実録・仁義なき戦い》のイメージそのままに、下関の地場のヤクザであっても、広島弁を使う。唐十朗にとっては、何としても広島弁でなければならなかったのだろう。

 監督 : 唐十朗
 脚本 : 唐十朗 石堂淑郎
 撮影 : 瀬川浩 
 音楽 : 安保由夫
 挿入歌 主題歌「黒犬」、「夢は俺の周り灯籠」唄・安藤昇
         冒頭から幾度も唄われる韓国歌謡曲は不詳

 近藤 : 安藤昇
 沢木 : 宍戸錠
 田口 : 根津甚八
 李春仙・李考順 : 李礼仙
 李春仙の夫 : 小松方正
 沢木組 : 天津敏 小林薫 
 長屋の住人 : 石橋連児 熊 嵐山光三郎
  ATG制作 1976年作品

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