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2007年12月23日 (日)

地球で最後の二人

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  気怠いまでに静かに進行して行く物語。 
 銃撃戦すら生な演出を避けたために淡泊な記号と化してしまい、そのシュールな雰囲気が《ルアン・タロック69》と共にペンエークの静んだ世界の基本的色調となっている。
 今回はAMAZING THAILAND的断片は国歌放送の定番一つで、何かちょっとそこだけ浮いているようにも想えるが、日本語とタイ語と英語が均等に配されていて、基本的に現地DVDで観ているにも拘わらずセリフ理解は意外と楽だった。何しろタイ人の共演者までが日本語を話してくれるので。
 
 けんじは日本文化センターで働く独身だが、背中に刺青があり、その上自殺マニアらしい。マンションの部屋はぴしっと整頓され並べられた本だらけ。靴すら棚に曜日ごとに整理されている潔癖性。今日も部屋の天井からロープを下げ、首吊りに酔いしれ、空想世界に浸っていた。と、ドアがノックされ、出てみると大阪の実兄であった。親分の娘をレイプして逃げて来たのであった。後を追って来た旧知の同業者に、本ばっかり読んどるとアホになる・・・気狂いと同業者に弟を紹介する。が、同業者は、実は組から派遣されたヒットマンで、実兄は射殺される。けんじをも殺そうとして逆に射殺されてしまう。けんじは二人の屍体を掘り炬燵風の床下に放り込む。
 橋の欄干の上にしゃがみ込み、飛び降り入水自殺に酔いしれようとしていると、セーラー服姿の娘(ニッド)が車の行き交う車道に現れ、けんじは嬉しそうに後ろを振り向いたまま見とれてしまう。と、疾走してきた車に娘は跳ね飛ばされる。娘は日本人クラブで働いていてセーラー服はそこの衣装。
 娘の姉(ノイ)と口論し車から降り歩いていたのだった。娘は病院に運ばれるが、やがて息をひきとってしまう。妹ニッドを罵ったのを後悔し、他に家族のない姉妹二人ぼっちだったのが、とうとうノイ一人になってしまい、天涯孤独の身に陥って悲嘆するノイ。
 ノイの古惚けた車に乗ってけんじはノイの家を訪れる。古く大きな邸だが、長年手入れをしてないせいですっかり荒れ放題。家事の類には姉妹二人とも全く無頓着だったようで、家の中も同様、汚れた皿がソファーにもびっしりと放られていた。日本人=潔癖性って図式なのかどうか、早速潔癖症候群のけんじが俄然本領を発揮しだし、次から次へと小綺麗になってゆく。そうすると、だらしな娘ノイ=タイ人という図式が対応するのだろうが、わざわざ特撮の綺麗になってゆく爽快シーンまで挿入されている。タイ人って悪臭や汚れを嫌う、きれい好きであったのを思いだした。

 塞ぎ悲しんでいたノイであったが、やがてけんじに惹かれ、孤独の恐怖から解き放たれてゆく。同様にけんじも自分の殻を脱ぎ始める。ノン・セックスの淡い蜜月状態が続く中、ノイのヒモらしき男が現れノイに暴力を揮いけんじに叩き出される。ノイは予てから大阪に出稼ぎにゆく予定で渡航の手続きも終え、結局大阪に出立する。けんじはドンムアン空港までノイに貰った古い車で彼女を送ってゆく。帰途、自分のマンションに戻ると、車旅の途中、ノイに勧められたソム・タムのせいで激しい下痢に見舞われ、トイレに駆け込んだきり容易に出れなかった。と、その間に、けんじを逆恨みしたノイのヒモが拳銃片手に忍び寄り、少し遅れて、大阪からやって来たヤクザたじま達三人組が押し寄せてた。当然二勢力は鉢合わせし銃撃戦。ヒモは殺されてしまう。けんじはトイレの窓から逃げる。

 大阪の町でウェートレスをして働いている長髪を切って坊主に近くなった短髪のノイ。街角に佇み、紫煙を燻らせる。タイの警察の取調室で施錠されたままけんじは吸わないはずの煙草をゆっくりと吸い煙を吐き出しながら物思いに耽け嬉しそうに微笑む。・・・単純に考えれば、怪しげな水商売関係だったノイが大阪で働くとすれば売春関係であろう。それが相場だけど、だとすれば、レストランで働くノイは、けんじの空想の世界の産物と謂うことになる。だが、実際にタイ・レストランで働くタイ女性もいるのだろうから何ともいえない。
 けど、映画の導入からすると、やはり、ラストもけんじの想い描いた想像でしかないのだろう。それにしても、大阪でのノイのシーンは妙に淡く清々しい。
クリストファー・ドイルの腕の冴えって処なのであろう。
 
 
けんじ  淺野忠信
ノイ   シニター・ブンサヤック
ニッド  ライフ・ブンサヤック
ゆきお  松重豊
たじま  三池崇史
ジョン  ティッティ・プームオーン

監督  ペンエーク・ラッタナルアーン
脚本  ペンエーク・ラッタナルアーン
撮影  クリストファー・ドイル
音楽  スモールルーム ファランポーン・リッディム
美術  サクシー・ジャンランシー
制作  FIVE STAR   2003年作品

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