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2007年12月15日 (土)

TTゲスト・ハウス雑話(3)

Tt5   

シ-プラヤ通りに出る露地の寺側に、警官達の官舎の鉄筋の建物があり、
いつも露地いっぱいに白バイやバイクが並べてあった。その向かい側に、古い大きな洋館があって、廃屋に地方から来た人々が勝手に住着いたみたいであったが、ある時、出火し半分近くが焼き出されてしまった。
 不法住居民達を追い出そうとした連中が付け火したという噂も流れたようだ。よくある話だ。
 で、TTに来たら、その半焼した洋館の前にずらりとトタン屋根の文字通りのお粗末極まりない板張り小屋、つまり仮設住宅の類が並んでいて唖然としてしまった。その端の一角に、焼け跡というより洋館全部を解体し更地にした後立てる予定らしい小綺麗な鉄筋の建物のミニチュア模型が飾ってあった。役人が住民達に約束し作ったのであろうが、どう見ても、露地を隔てた向かい側のポリス官舎よりも立派なものであった。それから一年過ち、二年過ち更に何年も過っても依然として板張り小屋は惨めさの展示場であり続けた。
 少々じゃない熱さのバンコクで、めいっぱい焼けた低いトタン屋根の下、一家族三畳一部屋の狭い空間に犇めき暮らしていて、ある時、TTを出た途端背中に汗が流れ落ち始めるのを感じながらその前を通っていたら、茹だっているであろう小屋の中で、扇風機の生温い風に当たりながらちょこなんと坐っていた小さな少女と眼が会ったことがあった。子供心にも何とも恥ずかしそうに少女は顔を背けた。
 
 その露地の脇に置き捨てられた廃車の上に昇っていつも他の子供達と一緒に遊んでいた目鼻立ちのはっきりした発育の好いローティーンの少女が居た。言葉を交わすこともなかったけど頻繁に通るのでこっちの顔を覚えていたのであろう、ある時、シーロムのあるオープンのレストランの前で屯し笑い興じていた制服の女子学生の一団の中にその娘の顔を見い出した。
 「おっ、何だもうこんな歳になっていたのか」
 と驚きと感慨の混じり合った感情にとらわれた次の刹那、白い制服のブラウスを着た娘は僕に気付いてプイッと顔を横に向けてしまった。自分のうら寂しい生活の舞台裏を知られていることの複雑な思春の鬱屈し屈折した娘心のなせる技であったかどうかは定かでないが、そそくさと僕はその場を離れる他無かった。
 それから、一、二年過ってからか、ある日シープラヤ通りへ抜け寺の前のバス停に行こうとその露地に差し掛かった時、板張り小屋の前に人が群れていて、ふと見てみると、洋館や仮設小屋の人々、大半はおばさんと子供であったと記憶しているが、その件の娘が、すっかり派手な身形のギャルと化して、以前のあんな屈折なんか吹き飛んだみたいに自身に溢れ、懐かしそうな笑顔を湛えた住民達との談笑にすっかり没頭していた。知らない間に件の娘はそこから出たのであろう。正にその場の主役であった。

 シープラヤ通りに面して鉄格子の柵の奥に佇むその朽ちた洋館は、大きな木が一本生え、根っこの部分に少し傾いた神棚が設えてあって、供え物なのか打棄てられたガラクタなのか判別できないような物が周囲に並べてあった。住民はちょっと行くとファランポーン駅や逆方向にタニヤや享楽街パッポンがあり、スルメや果物屋台等を生業にしている人達が多いようだ。
 焼けたのは反対側で、焼け残った方の露地の両側に店があり、寺側の店はレストランになっていて、昼真っからすっかりご機嫌になったおばさん達が大きなジュークボックスのモーラムに合わせて踊り出したりする。それが露地を挟んだどっち側、つまりポリス側なのか朽ちた洋館側の住民なのか、露地でサッカー・ボールで遊び興じている子供達もあわせて、僕には定かでない。普通混在するとは思うのだが・・・。

Tt6

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