TTゲスト・ハウス雑話(4)
ゲストハウスの女性従業員って、大体がイサーンというのが相場らしいけど、TTの場合もイサーン周辺からやって来た娘達が多いようだ。
今はもう二十歳くらいになったのであろうが、最初は浅黒い肌のきっぱりカットしたオカッパとはちょっと違うけどタイの女子小中学生に多い短髪の小柄な娘が、ある日現れた。トォーというまだ13か14歳くらいの初々しい娘で、初めての、それも外人ばかりの環境での仕事だからか、緊張を押し隠そうとして虚勢を張り勢いニヤニヤしてしまう彼女に、同情しつつも思わず苦笑してしまった。余りにも若いので、客に好奇と親近の眼差しで接せられ、巷のレストラン等で働くよりは大部増しな境遇ではなかったろうか。収入はともかく。
馴れてくると、次第に一番歳が若いからか、玄関や洗い場等の水仕事なんかを任せられるようになった。ブスッとして、バケツを重そうに運んでいるのを見たことがあった。何年かすると、常連の日本人女性から英語を教わったり、客に注文取りをするようになった。注文数が少ない内は、視線を中空に向け、もう一度注文を反芻すれば好かったものの、多いと慌ててレセプションにメモ用紙を取りに戻ったりして笑わせた。
小顔でスラリとしていたが、徐々に薄っすらと脂肪が乗り始め、三十代には小肥り体型になるのだろう事を連想させた。ある日、リビング・ルームでファラン(白人)の男が、彼女の歓心を買い口説こうとしているらしい光景にお目にかかった事があったけど、いつの間にかトォーも、そんな年頃に至っていたのだ。
ここのオーナー家族の祖母がずっと長患いし、リビング・ルームに面したすぐ隣の小部屋に寝ていて、その世話をする女性も専属で居た。何人も入れ替わったが、最初はスラリとした整った顔立ちのチャーミングな娘だった。TTの本家の頃から居た娘だったけどいつの間にか辞めてしまったようだ。結局、イサーンの愛想の良いおばさんに定着した。その老婆の部屋の入口の脇の小さなテーブルでよく籠に入ったカオニュウ(餅米)を手で食べていて、トォーなんかも寄っていって甘えたりしていた。
エーという娘が居た。
以前オフィスで働いていたのを辞めてTTで働くことになったらしい。細っそり系の色黒のイサーン風で、眼の細く切れ長の典型的な意地悪娘風の容貌で、娘達の中心的存在となっていた。英語が喋れて日本人にタイ語を教えてやってたりして結構旅行者達には近しかった。時々やって来て長逗留する英国の女性と仲が好かった。
けど、些か性格が捻れていて、英語の出来ないのが大半の日本人をいたぶってジタンダ踏ませたりしてほくそ笑むことしきり。
で、彼女の作る料理が、その彼女の性格に似て、ある常連客に云わせると、"ゲロ不味"。尤も、その常連氏曰く、
「エーはあんなだけど、性格は竹を割ったようで、それは嫌いじゃない」と。男っぽい性格という謂う意味でなら肯えるけど・・・勿論憎まれっ娘といっても愛嬌の域は出ないのは当たり前で、だから彼女にタイ語でも教授してもらおうとするのだが・・・。それでも、暫く姿見なくなった。さすがに常連の日本人達をからかうのに飽きたのだろうと思っていたら、ある日久し振りに姿を現わした。以前と違ってちょっと落ち着いた感じになっていて、他に誰も客も居なかったせいもあるのか、旧交でも温めんと柄にもなくしおらしい態度を示し思わず引いてしまった。もう三十歳は越えたのだろうか。月日はエーすら変えてしまうのだ。パーン・ナカリンの唄のフレーズに"プリエーン・プレーン・パイ"というのがあって、どんどん変貌してゆくという意味らしい。バンコクの街並みも、人々をも・・・
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