ピンジャル 国境を超えて
1947年、インド・パキスタン両国が独立、双方の国(地域)に住んでいたそれぞれ異なる少数派のヒンドゥーあるいはモスレム住民達は、住み慣れた土地を捨てそれぞれの自分と同じ宗派の多数派の国に移住することを余儀なくされた。
この映画の監督チャンドラプラカシュ・ドゥイベディって余り聞かない名なのでインターネットで調べてみても他に映画作品見当たらなく、テレビ番組の制作関係のようだ。それにしても、この《PINJAR》仲々面白く、僕の観たインド映画の中でも金字塔物。インド=パキスタン、ヒンドゥー=イスラムの対立を題材にした映画って、やはりエモーショナルで緊迫感に満ちてしまうからつい映画の進行に呑み込まれてしまう。
インド-パキスタン双方に跨るパンジャブ州、そのインド側のある町の有力者モハンラルにプローという娘が居た。盟友の息子のラームチャンドとの婚儀が間近に迫っていた。
そんなある日、郊外の人気のない野原で、一人の馬に乗った見知らぬ男に、プローは誘拐されてしまった。気が付いてみると、見知らぬ農家の一軒屋で、その誘拐犯の男ラシッドは、その割には今一つ粗暴さに欠け、腫れ物に触るように彼女に接した。その農家に閉じこめられたある晩、隙をみて逃げ出し、素足のまま自宅まで逃げ戻った。ドアを幾度も叩き、やっと母親が開けてくれた。ところが、連れ去られた娘が無事戻ってきたというのに、父母は何故か冷淡であった。一度何者かに生娘が誘拐されてしまったら疵物として誰もまともな娘として見てくれず、況んや結婚なんて・・・否、実際は、もっと複雑な因縁めいた事情であったのだ。モハンラルの数代前の家族が、ラシッドの同じく数代前の家族の娘を誘拐していたという。その、一族の不名誉を濯ぐためのラシッド側の報復なのであった。
ラシッドはプローを誘拐するなんて暴挙脳裏を横切ることすらなかったけど、厳格なイスラム教徒の叔父がそれを許さず、一族の名誉の名においてラシッドに強要したのだ。お前が戻らないと、他の家族に迷惑が及ぶと父親モハンラルは冷酷に彼女を拒絶し、泣く泣くプローは一人夜道を戻っていった。
封建的遺制と宗教対立。確かにインドでは有りそうな話だ。否、インドだからそれが絵になってしまい、妙に説得力を持ってしまう。
原作とは随分と異同があるけど、こっちの方が却って分かり易い。
やがてブローは死産や浮浪女の産んだ子すら取り上げられる等の曲折を経ながら次第に献身的なラシッドに心を開いてゆく。そんなある時、収穫間近のラシッドの麦畑が何者かによって放火され焼き払われてしまう。呆然とするラシッド。しかし、周辺住民達の話を聞くと、どうもその犯人は、プローの弟トリロクらしい。実際、ラシッドが姉のプローをさらった事を知り報復として放火したのだ。ラシッドの叔父や一族の男達がそれを怒った。が、ラシッドは、もう止めてくれと遮る。俺の遣ったことに彼奴が報復をしたんだ、彼奴に報復して亦同じ事を繰り返すつもりか・・・
何も親や家族の敵討ちは日本(殆ど明治維新頃には消くなってしまったろうけど)だけの十八番って訳ではなく、インドでもちょっと前までは連綿と続けられてきたらしい。隣国のパキスタンなんて今現在でも、バシュトン等の所謂部族世界では行われていて、僕が大部以前パキを旅してた頃には英字新聞の隅っこにそんな記事が載っていたのを覚えている。
更に、これはインドに限らないけど、「略奪婚」という風習の残渣なのかそれともつい最近まで現実のものだったのか、この映画の中では触れられてない。だとすると、数代前の家族云々は些か筋が通らないことになるが、形だけの略奪形式ならともかく、本当の略奪婚ならば、略奪は略奪でしかないので、やはり奪われた側は復讐するだろうし、それはそれで筋が通っているのであろう。僕はてっきり「略奪婚」とはもっとおおらかな風習とばかり考えていたけど、時代と国によって大部違いがあるらしい。
近作《バナラス》は詰まらなく途中までしか観てないけど、マトンドカールは綺麗に撮られている。けど、やっぱしラシッドのマノージュ・バジパイに尽きてしまうんだろう。ナイーブな悪役顔が余計彼の煩悶と苦渋を上増してドラマを盛り上げている。シャールーク・カーンの《ベーラ-ザーラ》でのコキュのパキスタニー役では出番が少なかったせいか今一つ印象が薄かったけど。
プロー ウルミラ・マトンドカール
ラシッド マノージュ・バジパイ
ラームチャンド サンジェイ・シュリ
トリロク プリヤンシュ・チャテルジー
モハンラル(父親) クルブシャン・カルバンダ
ラジョー イシャ・コピカル
監督・脚本 チャンドラプラカシュ・ドゥイベディ
原作 アムリタ・プリタム
撮影 サントーシュ・サンディール
音楽 ウッタム・シン
振付 レーカー、チミニ-・プラカシュ
制作 LUCKY STAR'S 2003年作品

« 97年秘境への旅 <虎跳峡> | トップページ | アジアン風味 中国の茶(チャイ) »
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- わたしと共に磔刑を覚悟する者はいないか ! 古海卓二《 九州の百姓一揆 》(2026.02.23)
- 甲斐大策的軌跡 古い港町のオアシス・グリシェン・カフェ(2026.02.07)
- 浮遊と舞い上がり(2026.01.24)
- 八年目的螺旋 2026(2026.01.10)
- 蒼茫的2026年・・・(2026.01.02)


コメント