あの鉄拳は何処? 精武英雄
霍元甲といえば、ちょっと前、ジェット・リー(李連杰)主演の中村獅童
が敵役?で競演した《霍元甲:スピリッツ》が記憶に新しいが、霍元甲の死因の真偽はともかく、彼の死後を扱った映画を想い出した。
霍元甲の精武体育會から来たのであろう《精武英雄》というタイトルで、主演は同じくジェット・リー。これはしかし、1972年制作、かのブルース・リー主演の《ドラゴン怒りの鉄拳:精武門》のリメイクで、このオリジナルの方は時代を反映してか凡らゆる意味において面白い。
二十世紀初頭の日欧米列強の帝国主義支配に一人敢然と立ち向かうというヒロイズムが、特にラスト・シーン、陳真(ブルース・リー)が、列強軍待ち構える外に、例の怪叫とともに一人決死の怒りの跳び蹴り喰らわさんと突撃する場面が圧巻で、やっぱり、任侠映画の高倉健が一人長ドス片手に多数待ち構える敵地に乗り込んで行くシーン以上のエモーションを覚えてしまう。如何いう訳か、あのブルース・リー主演でありながら、容易に、DVD屋の棚に見つけ出すことが出来ない、もはや幻の映画となってしまった、《ドラゴン怒りの鉄拳:精武門》、僕はブルース・リーの映画の中で一番好きなんだけど、ジェット・リーが再び陽の目を見せてくれた。それも、日本の詰襟の学生服まで着て。
京都大学に留学していた陳真(J・リー)に、ひょんな事から、黒龍会の船越(倉田保昭)から師である霍元甲の死を知らされ、急遽帰国することになった。日本人の恋人であった光子(坂上忍)も強引に彼と一緒に上海に渡った。
戻ってみると、何と師は日本の黒龍会分会虹口道場の柔術師範芥川と試合をして敗け死亡したと云う。愕然としながらも、沸々と怒りが沸き起こり、単身一人で虹口道場へ乗り込む。道場の門弟達を片っ端から叩き潰し、最後に師の仇である師範の芥川と対戦。しかし、これが大して強くもなく、陳真にあっさりと敗れてしまう。これはおかしい・・・こんな相手にあの師が敗れる訳がないと疑念を抱き、早速師の墓を暴き、医師に死因を調べさせる。果たして、毒殺であった。
芥川が日本軍の長官・藤田(周比利)が対戦相手の霍元甲に毒を盛った事で自分のプライドが傷つけられたことをなじり、藤田に殺されてしまう。翌朝虹口道場前で芥川の死体が陳真の名が認められた張り紙とともに発見され、陳真は上海の警察に逮捕されてしまう。が、裁判で光子が犯行時陳真とずっと一緒に居たと嘘のアリバイ証言をし無罪釈放となる。やがて、藤田からの果たし状が、霍元甲の跡取り息子の廷恩(銭小豪)に送りつけられ、陳真と二人で藤田の元へ乗り込む事となる。図体ばかりデカくて弱い病んだ中国を嘲けた「東亜病夫」の扁額を持って、一人藤田は道場で待っていた・・・
「東亜病夫」と上海租界の公園の入口に設けられた看板「犬と中国人は入るべからず」は、このシリーズの基本的キー・ワードである。
サイトを見てみると、霍元甲毒殺説は怪しそうだが、J・リーの《精武英雄》の映画の方は定かでないが、DVDでは、冒頭に「本故事乃借一部分歴史事実而杜撰、如有雷同、実属功合」とある。
しかし、これはあくまで映画なのだ。
何としても、陳真の師・霍元甲は病死でも事故死でもなく、侵略者=帝国主義日本によって卑怯にも毒殺されたのでなくてはなるまい。エンターテイメントの常道なのだ。それであるからこそ、陳真に人は声援を送る。 Wiki Pediaによると、《ドラゴン怒りの鉄拳:精武門》の監督・羅維は陳真を生き続けさせたかったようだが、B・リーが陳真は何人も殺しているので死ななければならないと、あの時代のアメリカ映画の一つの傾向と同致した発想で押し切ったらしい。
でも、悪辣で巨大な敵に、怒り憤激し爆発し一人敢然と立ち向かった陳真は、やはり壮烈な死しかない。それでこそ、一層ヒロイズムが掻き立てられ完結する。
日欧米帝国主義列強に一人抗すなんてあの七十年代のパッションから抜け出た中日友好的ムードの漂う九十年代の《精武英雄》では、嘗ての"往年の"敵役・倉田保昭が老獪な好人物として登場したり、陳真の恋人の日本人娘 まで出て来る。この映画、悪くないんだけど、今一つ盛り上がりに欠けるのは、そんな処にあるのだろう。
陳真 ジェット・リー(李連杰)
船越 倉田保昭
光子 坂上忍
藤田 周比利
廷恩 銭小豪
監督 陳嘉上
アクション監督 袁和平
制作 20世紀FOX 1994年
« バード&チンタラー《マー・タムマイ》雑話 | トップページ | 榕美茶室(クアラルンプール) »
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 高杉晋作=東行庵(下関・吉田) 再訪(2026.03.31)
- 黒石ブログ的近況 《 笑うべからず 》同類異種的島田清次郎への接近(2026.03.18)
- わたしと共に磔刑を覚悟する者はいないか ! 古海卓二《 九州の百姓一揆 》(2026.02.23)
- 甲斐大策的軌跡 古い港町のオアシス・グリシェン・カフェ(2026.02.07)
- 浮遊と舞い上がり(2026.01.24)


コメント