《クローバー・フィールド》HAKAISHA
久し振りにロード・ショーを観た。《クローバー・フィールド》
チケット売場で「・・・酔ったりしたら・・・」と訳の分らない事を言われ、ホラー映画で怖いシーンが云々みたいなものだろうと中へ入った。
ニューヨークのマンハッタンが舞台。
アマチュア・ビデオ・カメラで日本へ向かうロブの為のパーティーの様子や参加者のメツセージを撮るという設定で、延々と続く。手持ちカメラなので角度もずれたり手ぶれもしたりで、チケット売嬢が言っていたのはこの事だと分った。確かに不安定に揺れ続ける画面は疲れる。人によっては船酔い状態や眩暈を覚えるだろう。
このパーティーの場面がやたら長い。これくらいの長さの"貯め"というのか、どっぷり浸かった日常性が必要だったのだろう。マーティン・スコセッジの《ディア・ハンター》ほどではないが。
と、いきなり、強烈な衝撃(音)と停電・・・日常性はすっ飛び、恐怖と緊張の非-日常性的実存へ。
夜のマンハッタンの高層ビルの谷間の一角が突如崩壊し、アメリカのシンボルらしい自由の女神像の巨大な首が通りに転げ落ちてくる。
これはもう、〈9・11〉そのものだ。
ポスト〈9・11〉のアメリカの共同幻想的悪夢。
高層ビルを破壊しながらどんどん突き進んでくる巨大な怪物。
プロデューサーのJ.J.エイブラムスが「原宿で見つけたゴジラのミニチュア」から発想した怪物という事になっているらしけど、僕はむしろ、'50年代のハリー・ハウゼンの《シンドバッドの七回目の航海》に出て来る一眼巨人サイクロプスを想起した。ゴジラもサイクロプスも共にゴツゴツした肌だが、この映画に出て来る巨人(獣)は、デティールの欠如した捉え所のない、何時黒い煙と化して掻き消えてしまうか知れない、正に悪夢そのもの。曖昧な形象の、正に悪夢の中に出て来る夢魔の類であろう。
これは欧米的というより、やはりアジア的な、否、穿って言えば、シンドバッドの"近東"的色彩が濃い。
スピルバーグの《宇宙戦争》のエイリアン=ロボット兵器のリアリティに比して《クローバー・フィールド》のサイクロプス風は只管"合理性"とは無縁の曖昧な如何ともし難さ、つまり悪夢そのもの、夢魔そのもの。 因みに、インターネットで〈9・11〉関連のサイトを見ていたら、プライベートなビデオ撮影の映像が結構有って、この映画の着想が了解できたような気がした。
劇中、奴等は、宇宙から来たんじゃないのか・・・なんてセリフがあった。結局、正体は不明のままだが、件のサイクロプス風の巨獣はぽんぽんと小さな人間大の蜘蛛風の生物を地上に落下させ、人間を襲わせる。
もし、サイクロポス風が宇宙からやって来たものなら、それは如何なる目的のためであろうか?
しかし、僕は最後まで分らなかったけど、《宇宙戦争》のロボット兵器は正に兵器でいっぱい出現したのに較べてサイクロポス風は一体どのくらい居たのだろう。どうもハッキリしないのだ。一匹って感じもしなくはない。悪夢に合理性を求めるのはナンセンスなんだろうが、大きさは全くハッキリしない。それでも知れている。普通に考えれば、米軍の地上部隊程度でカタがついてしまいそうなんだが、あんなもので地球侵略はちょっと考えられない。(続編を前提としているみたいなので、伏線を張って隠している可能性もあろう)
それともあれはあくまで囮部隊でしかなく、環境を破壊し多くの生命を損ない続けてきた有害極まりない生物としての人類に対するおちょくりで、本隊はじっと太陽系の外れ辺りから襲撃=駆除の機会を窺っているのかも知れぬ。自らの貪欲と理不尽で自らの惑星を汚染・破壊し尽し、浄化も再生も施す気もなく、そのまま放棄し、図々しくも他の惑星に、"夢"とか称して侵略しようと宇宙船だ宇宙基地だと画策している人類。確かに、アメリカ=マンハッタンは、その有害生物の本拠地の感がある。そこにポーンとびっくりフィギアー風のサイクロポスを放ってみたのだろう。
プロデューサー J.J.エイブラムス
監督 マット・リーブス
脚本 ドリュー・ゴダード
撮影 マイケル・ボンヴイレイン
ジェイソン マイク・ヴォーゲル
ロブ マイケル・スタール=デーヴィド
ベス オデット・ユーストマン
リリー ジェシカ・ルーカス
マレーナ リンジー・キャプラン
制作 バッド・ロボット 2008年
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