藤原新也指定中華麺館 《萬龍》と《朋友》
6月下旬から門司港→釜山のフェリー航路が運行開始され、一日一便、片道二等室8000円らしい。対岸の下関からも釜山フェリーは既に就航していて、中国の青島にも週二便出ていて片道二等大部屋15000円。
嘗て上海から長崎にフェリー便があって、鑑真や蘇州号ばかりじゃ詰まらないとばかり、外灘の事務所に行ったら運行停止中だったことがあった。
その後中国にはバンコク経由で入ることになりすっかり船便にはご無沙汰になってしまった。因みに、現在、蘇州号は二等大部屋で20000円プラス燃料費らしい。
門司港といえば、藤原新也の郷里で有名で、否、藤原新也がやたら文章や写真で持ち出すので、訪れたことのない旅行者でも名前だけは覚えさせられてしまったりしてるだろう。
その新也がある時、門司港における彼の指定中華麺館《萬龍》のチャンポンの味が落ちたと零していたことがあった。また、彼の最近のエッセイ集《名前のない花》で、帰郷の際必ず立ち寄る《朋友》の昔ながらを褒め、どうか立ち寄って欲しいとまで云い、藤原新也指定の店であることを明らかにした。ということは《萬龍》の方には最近は立ち寄ってないのだろうか?
で、今回、両方の店に入ってみた。
本当云うと、《萬龍》には以前入ってみたことがあった。
例のチャンポンを試食してみるためであった。バス通りから少し入った小路の奥に昔風の佇まいの落ち着いた二階建ての店で、小路の向い側にはとっくに店を畳んだ小じんまりした料亭風の建物が、《萬龍》二階の窓から覗けていた。
階段上がって直ぐがテーブル席で丸い宴席テーブルもあり、又靴を脱いで上がると、廊下を渡って行く座敷となっている。古めかしい和室部屋が何室もあり、中華料理屋にしては珍しい造り。この手の旧態(レトロ)趣味のある人には穴場であろう。テーブルの下に可成り旧い中国関係の写真集なんかが週刊誌と一緒に置いてあって、おそらくその当時から置いてあるものだろう。
チャンポンは具も総量も多目。以前の味を知らないので比較しようがなかったが、まあ、所謂長崎風のチャンポンとは別種の、中国の海鮮麺といった趣き。味はマアマア。これのスペシャルがあったけど、到底一人では喰い切れまい。
僕自身は、むしろラーメンの方が気に入っている。
醤油味の適度にまったりした味は、米飯一碗さえ有ればもう十分ってところ。麺は他にも山東麺や数種あり普通の中華もある。中国ビールは青島ビールのみ。狭いトイレもレトロもの。
バス通りをちょっと先にいった反対側の角に、黒っぽい戦前風の可成りくたびれた二階建ての建物があり、その一階が《朋友》。
中は《萬龍》のテーブル席と同じくらいのスペースで、些か薄暗い。壁面に点々と中国少数民族の木彫りの面が並べてあり、「楊貴妃」の空瓶なんかも飾ってあったが、如何にも煤けた感じは否めない。正に「大衆中華」の店なのだ。それはそれで好いのだが、トイレが《萬龍》同様レトロなのだけどここはそれが更に危ないというレベルに達している。建物の外見以上に老朽化が進んでいるって感じだ。大きな料亭の保存も好いけど、こんな小さな旧い建物の保存も必要ではないだろうか。
片側の壁に赤茶けた品書きがずらり貼られていて、「珍味 かものたたき 500円」てのもあった。
勿論ラーメン350円を注文。米飯(中)150円も追加。
白濁した豚骨ラーメンであった。
細麺で、叉焼も小さい。僕にとっては叉焼や支那竹すら余計だけど、それなりに濃くがあって悪くはない。これ見よがしに作ったラーメンの多い昨今、飾り気のない正に大衆的ラーメンなのだろう。
ラーメン 350円
炒麺 450
湯米粉 450
八宝菜 500
カレー炒飯 500
老酒 450
食べ終わって外に出、ちらっとこの《朋友》の屋根を見上げると屋根瓦に雑草が伸びているのが見えた。大理の旧い民家じゃあるまいし。
因みに、このバス通りが少し手前で十字路になった角に以前は地元の百貨店のくすんだ廃墟があった。屋上の方を見上げると、真っ赤に錆びた遊具の類が風に軋んでいた。ところが、今現在は、跡形もなく、その跡には地方ではお決まりのマンションが聳えていた。
時代の波に頑なに抗するような佇まいの「朋友」
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