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2008年7月12日 (土)

ドイ・モイの新風 《BONG BONG Oi!》ホン・ニュン&チン・コン・ソン

 Bbo

  カンボジアにはラッパーが結構居るようだが、ベトナムは如何だろう。
 大して詳しくはないけどタイに比して、ベトナムの音楽関係には全くと言って好いほど疎い。理由は、恐らく地元の音(サウンド)にサム・チャーあるいは又インドネシアやマレーシアなんかだとインド&アラビックのリズムと旋律がその底にあるからだろうか。
 ベトナムは、やはり、中国の影響が大きく、古典楽器を使った音楽は面白いが、歌謡曲・ポップスの類はしっくりこなかった。

 1995年だったか、初めてベトナムのサイゴン(ホーチミン市)を訪れた時、街角のテープ屋で何か面白いアルバムはないかとあれこれ物色してみた。全く無知だったので、カセット・テープのジャケットを見て決めるしかなかった。完全に無知な場合、この遣り方が結構功を奏すもので、皆ダサイ物が多かったものの、一つだけ黒っぽい画像に紅いタイトルのジャケットが目を惹いた。鳥打ち帽を被った長い黒髪の娘が、仲々チャーミングであった。

   《BONG BONG Oi!》  Trinh Cong Son / Hong Nhung

ベトナム戦争前から作曲活動をしていた作曲家チン・コン・ソンのプロデュースした新人歌手ホン・ニュン(ヌン)のアルバムであった。
 チン・コン・ソンは歌謡曲のベトナムの代表的な作曲家らしく、"ドイ・モイ"(刷新)によってベトナムが漸く幾らかであっても開けてきたのを感じ取り、新鮮で自由な息吹を、ハノイから遣って来たホン・ニュンの唄声に見い出したのであろう。ポップス系の、少し低めの伸びやかな声質が好い。

 このアルバムは、しかし、好い曲ばかりがずらり並んだ、チン・コン・ソン畢生の一枚(それ以前の彼の曲は殆ど知らないが)ともいうべき、それを若い新人歌手ホン・ニュンに唄わせたのは大正解であったろう。なまじの演歌歌手じゃあこんな新鮮な雰囲気は出なかったろう。
嘗てはコンビを組んでいた歌手カイン・リーが居たが、ベトナム戦争終結時のサイゴン陥落の時に彼女はボート・ピープルとして米国に逃げてしまっていて、おまけに歳を喰い過ぎていた。僕は知らなかったが、二人のコンビの"Diem Xua"(美しい昔)邦題「雨に消えたあなた」は'72年に日本のゴールデン・ディスク賞を受けていてた。ホン・ニュンの声質は、このカイン・リーに似て無くもない。ホン・ニュンは、このアルバムで、日本人にもファンが多く、又、今じゃベトナムの国民的な人気歌手にまでに成長したらしい。
 個人的には、このアルバムの一番最後に入っている《BONG BONG Oi!》が一番気に入っている。最初のBONGはホン・ニュンの愛称らしい。チン・コン・ソンが彼女のために書いた曲のタイトルによく使われているようだ。嘗て、サイゴン(ホーチミン市)のカフェの親爺さんに尋ねたら、ジェスチャーを交えて、向こうからやって来る友達に、片手を挙げて、「ハイ!」とか「ヤー!」とか言って挨拶する時に使う言葉とか言っていた。
 僕は、勝手に、ベトナムの、サイゴンの、些かの哀切を含んだ爽やかな朝の光景を想起した。長い苦難の時代から、漸く吹いてきた微かなドイモイの新風。このタイトル曲が全てを現わしている。この曲を最後にもってきたのは正解であったろう。

 このアルバム、カセット・テープは二本持ってるが、もう十年以上聴いていても飽きない。サイトの試聴で同じ《BONG BONG Oi!》を聴いてみたら、比較的最近の再録音らしく編曲されていた。悪くはないけど、やっぱし《BONG BONG Oi!》は、オリジナル・アルバムのに限る。チン・コン。ソンの、あるいは当時のベトナム人達の想いが端的に表われているような気がするからだ。正に歴史的名盤と謂える一枚であろう。

 若い、若いと思っている内に、'70年生まれのホン・ニュンは、'71年生まれのタイのモーラム歌手チンタラー・プーンラープと一つしか違わない今年38歳。え~っ、もう40歳前? YOUTUBEなんかの映像みてもとてもそんな歳喰ってるようには見えななかったので、今まで全然気にもしてなかった。
 YOUTUBEを見てると、サイゴンであろうか、小さな会場でチン・コン・ソンの追悼コンサートのビデオがあって、何とあの浪速の演歌歌手・天童よしみが、ホン・ニュンと一緒にステージに立っているではないか。天道よしみが、チン・コン・ソンの曲を唄っていたとは、正に青天の霹靂。二人で"Diem Xua"「美しい昔」をデュエットし、天童も熱唱していたけど、曲自体が好いので、輝いてみえてしまう。やはり、歌手は好い曲に巡り会わないと駄目なようだ。

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