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2008年9月27日 (土)

覚魂記 /呂勝中  旅先で買った本(中国) 2

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   中国・雲南省昆明は省都という事もあって比較的大きな街だが、新華書店以外にも小さな書店が結構あった。年々デパートも増え、そこにも書店が入っている可能性はあって、今では可成りの数に昇っているのかも知れない。
 昆明は、しかし、例の世界博の折、旧市街の大半を丸ごと、何か不都合でもあるかの如く消滅させてしまい、その跡に白っぽい高層マンションばかりが林立してしまっていた。あの旧い佇まいは、"つまらぬ昆明"の唯一の救いだったにも拘わらず。
 昆明の街を縦に走っている北京路を、昆湖飯店とは反対の方向に少し行った白っ茶気た煉瓦造りの建物の並んだ殺風景な一角に、小さな書店があって、そこには新華書店では先ず見られないチベット系の本やら雑誌も置いてあった。昆明に行く毎に寄り、チベット語じゃまるっきり歯が立たないので、薄い中国語で書かれた雑誌を何冊か買った。今じゃこの一角もすっかり変貌している可能性が高い。

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 昆明の旧市街に隣接した南屏の新華書店で、中国伝統芸能の剪紙(切り紙細工)をアートにした呂勝中が書いた、と謂うより作った本を見つけた。 《覚魂記》というタイトルで、体裁はペーパー・バックだけど、中は剪紙と絵の図版と活字で構成されていて、当時('96)の中国の本としては珍しくビジュアルな造作であった。
 画集とは異なるこれほどに凝った本は、最近でも余りないだろう。伝統芸能家であり美術家であって漸く可能となったのだろう。

 ビジュアルで面白そうなんで買ったんだけど、けっこうページ数もあり、その圧倒されるようなパワーに気後れを感じたからか、未だに本棚に収まったまま。
 ところが、この作者呂勝中、大部過って日本のテレビ番組に出た。中国からの、確か雲南の麗江だったと記憶しているが、生中継だったか、田舎の小さな民家の室内一杯に赤い剪紙を立体的に張り巡らしていた。それで、彼が有名な作家なのを知った。件の本は白黒印刷だったので、テレビで初めてその呪術的なまでの赤の氾濫に瞠目してしまった。
 
 呂勝中は陰陽学的に"魂"に拘っていて、現代人の魂と肉体の乖離をテーマにしているらしい。就中、中国の"改革開放"後の資本主義化で、今までの反動の如く、売れる物は何でも、魂まで売り尽してしまう物質主義的狂奔の現在にあってみれば、一層彼のテーマはアクチャルなのっぴきならぬものとして彼の脳裏に激しく揺らめいているのであろう。
 紙ー人形(ひとがた)とは、やはり呪術的原形として、呪術師呂勝中の手によって生命を注ぎ込まれるものなんだろう。

 Photo_2

  招魂詞

 我不是神仙我也不是巫
 我不是上帝布発令旨
 我只是人世間凡胎俗骨一小民
 一把剪刀却断得陰陽両極
 只因為
 神仙遠離塵世巫也不再頂天立地
 報喪奴已宣告了上帝
 且把这十尺斗室作世界中心
 心便化作宇宙的漫無辺際
 此時刻
 我就是神仙我也是巫
 我就是上帝布発令旨
 一道道真符咒勅令速至
 一句句招魂辞試起听仔細・・・
 
 "覚魂記" 著・呂勝中  (湖南美術出版社) 26.80元

Ver1  

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