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2008年9月14日 (日)

プロイ  白熱なき白色光世界

  Ploy1

  カメラマンは違うが前作《インビジブル・ウェーブ》同様、艶やかで無機質的な映像で、性と死がいよいよ倦怠の中で深まり揺らめいているペン・エークの昨年の作品。

 十七歳の新人アピンヤ・サクルジャロエンサック("ナン・ナーク"の女優サーイも十七歳だった)演じるプロイを媒介として倦怠期のウィットとデーンの中年夫婦の、早朝にスワンナプーム空港に到着し、仮眠のために投宿したバンコク都内のホテルでの束の間の、心の揺らめき。それにオーバー・ラップするように、ホテル付属バーのバーテンダーのアーナンダとメードのトゥムとの清掃中の客室での情事(まだ若い二人だが、そのセックスに既に倦怠の白い影が兆し始めている)の様が描かれる。

 事の起こりは、旦那のウィットが、眠りたがる嫁デーンを残し、煙草を買いにホテルに付属のバーに一人赴いたことから始まる。
 バーで時間を潰していた屈託のない娘プロイと出会う。 

 「おじさん、バンコクの人?」
 「いや、プーケットだ。十年以上もアメリカに行ってた」
   ・・・・・・
 「君の母さんはバンコクに居るの?」
 「ううん、ストックホルム」 
 ストックホルムからやって来る母親との待ち合わせ時間には未だ時間が有り過ぎるので、ウィットが気軽に嫁デーンの事など意に介すこもとなく、部屋に連れてきた。当然、デーンは訝り、怒った。タイ人も中・高級ホテルに泊まるような都会の中産階級は欧米化し、"キン・カオ・ルー・ヤン"的な気軽さは喪せてしまってるのだろう。
 プロイは広い部屋の中で気儘に過す。旦那のポケットから出て来た紙切れに記されていた女の名前と電話番号がデーンの心に波紋を生じさせ、突然の闖入者・若い女=プロイが更に波紋を拡げ、仕舞いにはあどけなさの残ったプロイに殺意すら覚えてしまう。
 居たたまれなくなってデーンはホテルを飛び出し、何処かのカフェに入る。店に居合わせた中年男客モーの店に誘われ一緒に赴く。まだ営業前の薄暗い骨董品屋のソファーで飲む事になる。が、男はデーンに言寄り、撥ねつけられ、襲いかかる。デーンは抵抗するが、失神してしまう。
 気付くと何処か郊外の物置小屋の前に停められた車(バン)の後部に他の廃棄物と一緒に放り込まれていた。モーはデーンを殺害し焼却するつもりであったか。危険を悟り、車から逃げ、結局拳銃を手に追いかけてきたモーを返り討ちにしてしまう。

 いきなりデーンが行き先も告げずに出てしまい、ウィットは動揺し大きく揺らめく。ソファーに横になったままのウィットに別れも告げずに,プロイは、部屋を後にする。
 

 突然シーンは、二人の近親者の葬式。
 デーン 「パイ(ルー)ヤン」もう行く?
 ウィット 「パイ」     行こう。
  ・・・帰途に就いたタクシーの仄暗い後部座席。背後の雨滴に濡れた窓硝子に街のカラフルなネオンや灯が滲んでいる。
 ウィット「デーン」
 デーン 「・・・」
 ウィット 「デーンを愛してるよ」
 デーン 「・・・・・・・・・」
  ・・・暫く互いに見つめ合っていたが、やがてゆっくりデーンがウィットの身体に寄り掛かる。 
 デーン 「今朝の女の娘、あの子も同じに可愛いわよね」
 ウィット 「・・・・・・」    
 
 売れっ子アナンダ・エヴリンガムは殆ど台詞のない静かなバーテンダーって処で、メード役のエキゾチックな顔立ちの女優ポーンティップ・パパナイと客室で微かな喘ぎばかりの様々な痴態を繰り広げる。彼女のすらりとしたメードの制服を身に纏った痩身が、何ともエロティックで、静謐の中の微熱といった趣である。これはもう、ペン・エークのカラーであろう。
 
 
 デーン  ラリター・パンヨパス
 ウィット ポーンウット・サラシン
 プロイ  アピンヤ・サクルジャロエンサック
 アナンダ アナンダ・エヴリンガム
 トゥム  ポーンティップ・パパナイ
 モー   タクサコーン・プラダップポンサ

 監督・脚本 ペン・エーク・ラタナルアン
 撮影    チャンキット・チャムニヴィカイポーン
 音楽    ホアランポーン・リッディム
       コウイチ・シミズ
 制作 ファイブ・スター   2007年

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