《アパハラン》 ビハールの算式: "総利潤"ー"鼠"≒富裕層の利益
とうとうインド・ビハール州政府は、今夏、州民やインド一般国民に"鼠"を基本食(スナックとしてではないらしい)とする旨呼びかけた。レストランのメニゥーにも載せるべきだ、とも。常識的には、富裕層や中産中層階層までは自ずと埒外。要するに、"貧乏人のインド人は、鼠でも喰らってろ!"と云う訳だ。嘗て我が国でも、与党の首相だったかが似たような発言をしたことがあった。元々インドでも少数なのかも知れないけど、タイ同様鼠を食べる習性はあったらしい。確かに、貧しい農民が貴重な蛋白源として無尽蔵な食資源としても不思議ではないだろう。しかし、役人=政治家が言い出すようなことだろうか?
インドの中でも最も貧しい州の一つとして有名なビハール、ここでは"誘拐"(アパハラン)がビジネスと化して既に久しいという。
身代金目的やら政治的に"営利"を装った様々な誘拐事件が後を絶たず、恐らく今現在も続いているのだろう。只、貧乏人が他に当てもなく切羽詰まって遣るというのは知れていて、大半は組織だった、地元の政・官・財・マフィア等の緊密な連携の下に行われるようだ。
アジェイの父親は高名な社会運動家でもある教授で、地元権力の腐敗を追及し過ぎたため生命を狙われていた。アジェイは恋人の父親からも疎まれるしがない薬品のセールスに見切りをつけ、自身の進路を警察に見出す。
彼は成績は優秀であったもののそれだけでは通用せずやむなく高額のワイロも支払った。が、その事を知った汚職大臣が、アジェイの自宅に車で乗り着け、直に彼の父親に、アジェイを合格させる替わりに自分への追求の手を弛める事を条件として持ち出した。が、教授はにべもなくはねつけてしまう。愕然としてアジェイは怒って帰ってしまう大臣の後ろ姿を眺めるしかなかった。
不合格はそのまま彼の絶望を意味した。
早速金を借りた裏稼業の連中から催促されるも余りに高額で如何ともし難く、金貸しが"誘拐"の話を持ち出してきた。アジェイに選択の余地は無かった。彼の友人達と一緒に誘拐を実行したものの、何とその誘拐した男は、地元の黒幕=タブレズの配下の者だった。金貸しが慌ててこの取引をなかったものとしようとするのをアジェイ達は怒り、強引に約束の金を取って引き上げる。
しかし、直ぐに警察にアジェイ達全員が逮捕され、刑務所に放り込まれてしまう。処が、その刑務所には、タブレズの片腕ガヤ・シンと配下の者達があたかも刑務所の主の如く豪華な別房でとぐろをまいていた。警察とタブレズは完全に癒着し切っていたのだ。そこで彼等に散々な目に遭わせられてしまう。
やがて、アジェイは居直ったように生き方を変え、タブレズに取り入り、アジェイの仲間達とともに、誘拐を上首尾にやってのけるようになる。更にガヤ・シンを射殺し、アジェイは彼の後釜に坐ってしまう。今度は、アジェイが刑務所の豪華な別房の主となる。別房から携帯電話で仲間やタブレズの身辺警護を兼ねた実弟のウスマンと連絡を取りながら必要とあれば刑務所の車で外にも出れた。
次第に誘拐業に油が乗ってきてタブレズの信任を得、新聞にすら載るようになるが、段々と齟齬を生じ始め、ある日、タブレズをも追求してきたアジェイの父親の殺害の命令がタブレズから下される。切羽詰まって、汚職をしてない警察の高官に連絡を取り事の次第をぶちまける。以前タブレズに屈辱を味わされていた高官は、早速話に乗り、結局アジェイは警察に逮捕され厳重な監視下に置かれる。そこにタブレズが面会に現れ、予め隠し持っていた銃で帰ろうとするタブレズを射殺する。直ぐにウスマン達警護の者達がアジェイに銃弾を撃ち込むが、もはや、後の祭り。
収監される直前、長年の行き違いを理解しアジェイと最後の抱擁を交わしていた父親が見守る中、アジェイの屍が荼毘に伏される。
プラカシュ・ジャーの《ガンガー・ジャル》に続く硬派の作品で、《カンパニー》ほどのスリリングさはないが、観てて飽きない。刑務所の中のガヤ・シンの別房には驚いてしまったが、如何にもインドなら有りそう。
アジェイ(アジェイ・デブガーン)と黒幕タブレズ(ナナ・パーテカル)の眼に見えぬ戦いが主軸で、やっぱりナナ・パーテカルか好い。アムリシュ・プリーだと全く別物になってしまう。パーテカルはクールなのだろう。それでいて、
《シャクティ》みたいに野性的な頭目もよく似合う。ここでも、彼の面目躍如ってころだ。
デブガーンはいつもの演技。主役なので紋切り型が定番。主役俳優が余りコロコロ演技を変えるのは観客にとって必ずしも好ましいものではない。勿論俳優の方はそんな事知ったことではないだろうが。
アジェイ アジェイ・デブガーン
タブレズ ナナ・パーテカル
ガヤ・シン ヤシュパル・シャルマ
SPアンワル・カーン ムケシュ・ティワリ
シャストリ教授 モハン・アガシェ
メガ ビパシャ・バスー
監督 プラカシュ・ジャー
脚本 プラカシュ・ジャー
撮影 ラビンド・K
音楽 ウェイン・シャープ
アデシュ・シュリバスタヴ
制作 ホーリー・カウ・ピクチャーズ 2005年

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