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2008年10月18日 (土)

エクラヴィヤ   追憶のラジャスターン

Eklavya05

 

 

 ビッグBこと、アミターブ・バッチャンの老年アミターブの面目躍如とした作品で、暮れなずむラジャスターンの黄昏の如く消え去ってゆく遺制(王制・封建制)への鎮魂と追憶ってところだろうか。その象徴としての最後の近衛兵エクラヴィヤ。本当は、挽歌って言葉を使いたかった。けど、映画の結末がそれを押し止めさせた。

 上映時間105分、てっきり流行りの英語映画かと思ったら、そうでもなく、観始めて、これ又最近ボリウッドで流行りのシェークスピアの翻案物かと疑ってかかるとどうもそうでもないようだった。

 時代は現代、しかし意匠は中世、尤もインドって巷でも中世は生き続けているので、その境は甚だ微妙。

 ラジャスターンの古城で、そこのもはや領土なき藩王ジャイバルダンの妃スハシニデヴィが、病の床で藩王の見守る中で、最後の呻きの如くある人物の名を呼びつづけた。

 「エクラヴィヤ、エクラヴィヤ・・・」

 滞在先のロンドンから一人息子ハルシュワルダン王子が急遽帰国した。藩王の弟ジョティワルダンとその息子ウダイワルダンも既に駆けつけていた。燃え盛るカファンに包まれた母親の屍の周囲を松明を手に左回りに廻りながらハルシュワルダン王子は、直前に母親が寄越した手紙に認められていた秘密(カルマ)に心揺れ無常の冷やかな風が吹き抜けていた。

 

 妹ナンディニ姫の部屋にハルシュワルダンが訪れると、テーブルの上に彼女が描き溜めた絵が何枚も積んであった。と、その中の一枚に眼が釘付けになってしまった。父王ジャイワルダンが母后スハシニデヴィの首を絞めている絵であった。心を病んでいたナンディニの残酷な現実の赤裸々な具象画であった。華奢なナンディニの心に赤々ととぐろを巻き紅蓮の炎を吐き続けた秘密(カルマ)に、ハルシュワルダンは

思わずナンディニを抱きしめてやり嗚咽するしかなかった。

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そんなある日、ジャイワルダン王は、お抱え運転手とエクラヴィヤを伴って外出した。郊外の踏切に差し掛かり車が止まると、突然何者かの撃った銃弾がガラスを砕き運転手の頭を撃ち抜いた。

王を狙撃したに違いない、とエクラヴィヤは、王を伏せさせ、愛用の拳銃ワルサーを片手に外に飛び出した。無数のラクダの群れが車の前を遮るように砂塵をあげてゆっくりと通り過ぎてゆく。エクラヴィヤは地面に腹這いになってラクダ達の脚の向こうの敵を必死に捜した。

 と、何者かが、エクラヴィヤの手を靴で蹴り上げワルサーを跳ね飛ばした。やがてラクダの隊列もとぎれエクラヴィヤが慌てて車の方に戻ろうとすると、ドアが開き、王がフラフラと歩み出、地面に倒れた。何者かに撃たれていたのだ。やがて王は息を引き取ってしまった。エクラヴィヤは呆然としてしまう。自分が傍についていながら・・・

 ハルシュワルダンが部屋に戻ると、背後からエクラヴィヤの声がした。驚いて振り返ると、愛用のワルサーを手にエクラヴィヤが佇んでいた。てっきり、彼の命に従って、エクラヴィヤの故郷の村に戻り安寧に余生を送ってくれているものとばかり思っていたのだ。

 エクラヴィヤはワルサーを手にしたまま不可解さを晴らそうと、告白し始めた。村には帰らず、そのまま亡くなった王の弟の息子ウダイワルダンの居所に向かい彼を殺した、と。踏切の処で彼の手を蹴った賊の履いていた靴が正に彼ウダイワルダンのものだったからだ。そして彼の父親ジョティワルダンが、エクラヴィヤに刺殺される前に、何と、王殺害を依頼してきたのは、王の長男であり新王のハルシュワルダンその人だと告げた、とも。

 一体何故そんなことをしたのだと、エクラヴィヤは詰問した。

 ハルシュワルダンは真実を告げた。

 王の妃シハシニデヴィが幾度も漏らしたエクラヴィヤの名で、王妃の産んだ双生児ハルシュワルダンとナンディニの実の父親がエクラヴィヤであることを王が気付き、堪えられず妃を自ら絞殺してしまったこと。母后が手紙でエクラヴィヤが本当の父親であることを既に告白していたことも。そしてその母親殺害の報復のため彼がジョティワルダンに義父王殺害を依頼したことも。さらに、王の方がエクラヴィヤ殺害をジョティワルダンに命じていたことも。

 只、ハルシュワルダンは、婚約者のラッジョーの父親である運転手オンカルを結果的には殺してしまったことを悔い、果てしない業(カルマ)の連鎖を断ち切るために、自らの生命を断とうと拳銃をこめかみに向け引き金を引こうとした次の刹那、エクラヴィヤの短剣が飛んだ。ハルシュワルダンの手を掠め拳銃は床に転がり落ち、ハルシュワルダンは一命を取り留めた。

 自ら銃口を向け、正に引き金を引こうとしたその瞬間、カルマの連鎖は断ち切られ、ダルマ()は成就された・・・?

  実在の城塞や宮殿を使っての撮影らしく、広大且つ美麗な建物自体が嘗ての栄華を偲ばせる哀愁を帯びた優雅さを湛えている。アミターブは正に古のラージプト戦士を彷彿とさせているが、個人的にファンのナンディニ役のライーマ・センも適役だったと思う。ただ、もう少しスラリとして欲しかった。

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エクラヴィヤ    アミターブ・バッチャン

王         ボマーン・イラニ

王妃        シャルミラ・タゴール

王子        サイーフ・アリ・カーン

ナンディニ姫    ライーマ・セン

ラッジョー     ヴィディヤ・バラン

警部        サンジェイ・ダット

王の弟       ジャキー・ショーロフ

監督    ヴィドゥ・ヴィノッド・チョプラ

脚本    アヴィジャット・ジョシ

      スワナンダ・キルキレ

      ヴィドゥ・ヴィノッド・チョプラ

音楽    シャンタヌ・モイトラ

撮影    ナタラージャ・スブラマニアン

制作    ヴィノッド・チョプラ・フィルム 2007

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