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2008年10月30日 (木)

シャクティ the Power of Love

Shakti1

 

《エクラヴィヤ》が如何にも由緒有りげなラジャスターンの豪壮な領主の宮殿って趣きだったのに比べて、この《シャクティ》では登場人物に合わせたように今風の小さな町の奥に蹲まった荒々しい城砦のようだ。

 2002年のこのヒンディー(ボリウッド)映画は、ビデオのカバーがカリシュマ・カプールと同じ主演のはずのサンジェイ・カプールの姿がなく、終わり頃ちょっと出てくるスペシャル・ゲストのはずのシャールーク・カーンが主演のように大きく載っているのでも有名だった。

 サンジェイ・カプール、確かに今ひとつ影が薄く、初めの頃、サニー・デオールやアクシェイ・カナそしてサイーフ・アリ・カーンと区別がつかなかった。もう一方の女優カリシュマ・カプールもウルミラ・マトンドカールと似ていてるが、マトンドカールの方がちょっと感じが柔らかいのが特徴だろうか。《ピンジャル》のプロー()にはそれが必要だったに違いない。

これは僕の好きなヒンディー映画のひとつで、映画自体はタイトルの如く女性・母性的な力の凄さの形象化ってところなんだろうが、それとは逆に、主人公二人が、西側先進国カナダからインドのラジャスターンの何処かの町に降り立った処から、俄然、ラジャスターンの砂漠や荒野の凶々しい異形の邪神輩が跳梁跋扈し始めるあの凶相・悪相の饗宴、それこそがこの映画の最大の魅力だろう。

 

カナダで先進国的小市民的生活を満喫していたカナダ育ちのナンディニが、突如まずカナダではお目にかかれない種類の有象無象の薄黒い肌のインド人ばかりでひしめき合った空港ロビーに脚を踏み入れた途端、激しいカルチャー・ショックを受け、原色の悪霊世界にでも迷い込んだかの如く眩暈するというのは、SRKの《サワデス》と相似している。

 《サワデス》はNASA的近代主義が、近世的封建世界そのままの母国インドにハレーションを起こし、安易に論理のすり替えをし、インド政府の広報かと思えるぐらいに時代錯誤な啓蒙主義をやらかし続ける。その空々しさには鳥肌立ってしまう。それでも、やはり、インドはインド、インドの大地(と人々)がそんな小賢しさを底なしに浸食し無化してしまう。そこが《サワデス》の面白さであろう。

 

Shakti4  

カナダの大都市で育ったナンディニは恋人シェカルと結婚し一児を設け一家団欒何不自由ない生活を送っていた。そんなある日、夫シェカルがテレビのニュースで自分の母親が事故に遭ったのを知り、一家三人でインドに帰国することになる。

 ところが、シェカルの故郷に戻った途端、次から次へと凶相の男輩がシェカルの生命を狙って襲い掛かってくる。間一髪シェカルの家族とその一党の銃で武装した男達に助けられ、シェカルの実家まで送られる。そこは町外れに聳えた城砦だった。シェカルの父親ナルシマは、その辺一帯の首領だったのだ。

 早速御曹司が帰ってこられた、それも新婦を伴っててんで、周辺住民が祝いに押し掛けてくる。新婦たるナンディニのお披露目披露と相成り、住民の女達の祝福を受ける。

 しかし、余りに今までの彼女の世界とかけ離れた土俗的・前近代的過な野蛮そのもの世界に、ナンディニは怖気を揮い一刻も早くカナダに戻りたいばかり。

 そこでは、アフガニスタンは言うに及ばず隣国パキスタンですら未だそうであろう血で血を洗う幾代にもわたる敵討ち等の血縁家族・部族紛争=部族世界が目の前で繰り広げられていた。首領の一人息子たるシェカルはそんな前時代的な野蛮と封建世界に嫌気が差しカナダに脱出していたのであった。

 シェカルの生命も危ないのを知って彼に執拗にカナダへの帰国を懇願するナンディニに負け、帰国便のチケットの手配を進める。そんな矢先、ナルシマに敵意を抱いていた政治屋が、ナルシマと何代も対立してきた勢力の首領と計らってナルシマ殺害を謀らんだ。しかし、ナルシマの乗るはずだった車にシェカルが乗ってしまい殺されてしまう。

 Shakti3

 動転してしまったナンディニはまだ小さな息子ラジャを抱いてナルシマの城砦から逃げようとしたが、首領ナルシマは息子シェカル亡き後自分の跡を継ぐべき孫のラジャを奪う。何としてもナンディニは、夫シェカルも嫌っていたこの延々と廻り続けるカルマの坩堝に、一粒種ラジャを残していくことだけはシェカルを裏切ることでもあり絶対に出来なかった。ナンディニと首領ナルシマのラジャを巡っての戦いが始まる

最後には、シェカルの母親や娘達が身を挺して彼女とラジャを逃がしてしまい、ナルシマ一派の男達が後を追った。砂漠の起伏や灌木に身を潜め何としても空港のある町まで行かねばならなかった。と、そこに、中東のドバイに出稼ぎに行くはずだった男(シャールーク)が現れ、ナンディニは有り金の米ドルを渡し、無事男達の追撃をかわし空港のある町を通る列車に乗り込めた。男は背中に被弾し遠ざかって行く列車を見送り最後の煙草を燻らせながら死んでゆく。

 空港に着けたと思ったら、ナルシマが配下の武装した男達を引き連れて現れた。ナンディニは半狂乱になってしまった。しかし、ナルシマには、ラジャを連れ戻す気は既になかった。只息子の嫁と孫ラジャを見送りに来たに過ぎなかった。特に自分にもよくなついていたラジャに最後の別れのキスをしてやりたかったのだ。長年諍い続けてきた妻や娘達の身を挺しての諫めに、さすがのナルシマもうなだれざるをえなかったのだ。ナンディニの頭に手を遣り撫で、両手を合わせ去ってゆくナルシマに、ナンディニとラジャも掌を合わせ見送った。

Shakti2

正に女達の力の勝利と謂うべき、シャクティなのであった。

解釈は色々可能であろう。話の筋運びとは裏腹に、結局、欧米近代主義が、インドの土俗神達に脚をすくわれ引っ張られしてほうほうの態で逃げ出したってところだろう。                        

この映画で僕が気に入っているのに祝いの祭りの折りのミュージカル・シーンがある。曲も中々乗れて好いんだけど、メインで踊っている男、これが踊り(ダンス)が巧い。如何にも踊り踊りしてないにも拘わらず実に妙なのだ。つい最近まで、その男を、歌手か踊りのマスターかと観る毎に疑問に思っていたんだけど、僕が殆ど南インド映画を観ないせいであったらしく、彼プラブ・デヴァは知る人ぞ知る有名な振り付け師であり俳優でもあったのだ。マニラトナムの《ボンベイ》の振り付けも彼だし、あのカジョールとも共演していたらしい。

首領ナルシマの中風を患った親父つまりシエカルの祖父の笑顔も笑わせる。

ナンディニ     カリシュマ・カプール

シェカル      サンジェイ・カプール

ナルシマ      ナナ・パテカル

敵方の首領(叔父)  アヌパム・シャム

ベージヤ      ヴィジェイ・ラーズ

シェカルの母親   ディープティ・ナヴァル 

 シェカルの祖父   チャンドラカント・ゴカール

  ジェイシン     シャールーク・カーン

  夢中の美人     アイシュワラ・ラーイ

   スペシャル・ゲスト プラブ・デヴァ

  監督    クリシュナ・ヴァムシ

  脚本    クリシュナ・ヴァムシ

  撮影    S.スリラム

  音楽    アヌ・マニク

        イスマイル・ダルバル

  プロデューサー  シュリ・デヴィ

ボニー・カプール

  制作    シュリ・デヴィ・プロダクション 2002年作品

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