プシュカル ブラフマーの聖地
前日夜の十時に、(オールド)デリー駅の端の17、18番ホ
ームから、アジメール行きの列車Ahamedabad Ma
ilに乗った。2nd Sleeperで103ルピー。
列車は通路側の座席のない普通よりもちょっと狭い狭軌スモー
ル・レンジで、翌朝の八時十五分に到着。バスでブシュカルま
で三十分で3.5ルピー。
僕が始めてブシュカルを訪れたのは1992年の暮れ、新年
をこのラジャスターン砂漠のオアシスの町で迎えようとしたか
らだった。アジメールとブシュカルを隔てる低い山脈は、表面
にちょこちょこ草の生えた岩山で、ラクダを思わせた。町外れ
のホワイトハウス・ホテルに泊まる。シングル(30Rs)は駄目で
ベッドがあるだけのダブル(60Rs)。家族的ではあるのだろうが、
客に応対するのがやたら若い連中ばかりで、ちょっと執こく又
セコかったので二度と泊まることはなかった。
ここはやはりブシュカル湖(ブラフマ・プシュカル湖Brahma
Pushkari)に尽きる。
周辺の砂漠やオールド・ブシュカルなんかも想像力を掻き立て
るけど、やはりこの白い寺院・祠堂に囲まれた小さな湖に尽きる。
だから宿もガート沿がベストだろう。嘗て藤原新也が泊まって
いたようなまだ古えの香りが残っている事はもはやあり得ないが、
それでも建物自体も歴史があり、世俗的な”Paheli”なんぞを越
えて、すっかりバラフマーやヴイシュヌ、ハヌマーンなんかが通
り過がる遙か古代の黎明世界にイマジネーションを馳せることが
できる。
ブシュカルはインドでも少ないらしい宇宙神ブラフマーを祀っ
た聖地で、巡礼宿ダラムシヤーラーも多くサドゥーも結構多い。
だからか挨拶は”ナマステ”よりも”ラム、ラム”が頻(よ)く
聞かれる。
ミニ・バスなんかで遣ってきた団体の巡礼達は、バスの周辺で
煮炊きして食べる自炊が基本のようで、夕方等道路いっぱい足の
踏み場もないくらいに一斉に自炊を始める。さすがはインドと思
わせる。そんな巡礼達と門前町を一緒に散策し行き止まりのブラ
フマー寺院まで漫ろ歩いてゆくのも一つの風情。

ここは聖地故にヴェジタリアンの町で卵すら口に出来ない。
コンチネンタル・レストランでもスパゲティーやベイクド・ポ
テトなんかが好いところ。それでも、ファラン(白人)客が多いか
らか、暗くなってくるとケーキやパイを積んだ屋台車があっちこ
っちに現れる。バナナ・ケーキ(10Rs)を買ってみたが味も悪くはな
かった。
ガートの橋側にあるアシュラムの隣の比較的静かな茂みのある
辺りに、二度目に訪れた時にはもうなくなっていたけど、椅子だ
け並べた小さなチャイ屋があって、肩から紐を掛けた一人のブラ
フマンがやっていた。
「家もなく貧しいのはカルマのせいだ」
と嘆いてみせた。カースト的には最高位の階級にも拘わらず。そ
ういえば、プーリーのサンタナ・ロッジもブラフマン家系だった
か。
ここの砂漠の砂は肌理が細かく殆ど粉末状なので、持って帰っ
て中々落ちないホーロー・カップの汚れ落としに使ってみたら、
効果抜群で簡単に落ちてしまった。粉末状なのでホーローを傷つ
けることもなかった。ブシュカルを出るとき、袋に詰め込んで持
ち出し汚れ落としに重宝した。



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