《北京ロック》北京楽与路 メーベル・チャン
冒頭から如何にも中国・北京揺滾(ロック)然とした音楽と映像で始まるこの映画、2001年のバンコク・フィルムフェスティバルで初めて観た。イランの"Frendly Persuasion"のはずが、少し遅れてカンボジアのドキュメンタリー風の"ランド・オブ・ワンダリング・ソウル"に変更になった時は、客は十人も居なかった。ビデオカメラで撮影したような映像で決して悪くはなかったけど、やはりタイ人達ってカンボジアに対してわだかまりでもあるのかと首を傾げてしまった。
香港から北京に遣って来たマイケル(呉彦祖)、あるライブ・ハウスで、バンドのリードボーカルの平路ピンルー(耿楽)やダンサーの揚頴ヤンイン(舒淇)と知り合うことになる。バンド仲間は、初対面のマイケルを歓迎し、一緒に強い酒を呷って意気投合。香港からやって来たマイケルを平路の恋人でもある揚頴は、「香港農民」とか「港農」とか呼び続け、マイケルとは仲々呼んでくれなかった。
やがて、彼等が地方巡業(下郷演唱)に出ると、香港で自分のバンドを持っていた彼も一緒にバスに乗って参加する。香港のバンドになかった何かを彼等の中に見出したのだろうか。
中国の地方で時々見かけるテント張りの、若い娘の踊りあり曲芸有り音楽ありの一大集団、その中で最後のトリを演ずるのが彼等のロック・バンドであった。雲南の観光都市・大理あたりの地元住民相手のカフェでも、例えば崔健あたりの曲を大きな音量でスピーカーから流すと、忽ち罵り言葉を吐き捨てながら若い客でも帰ってしまいそうな中国であってみれば、やっぱり彼等にとって決して安くはない入場料を払って楽しみにやってきた農民工民やその子女達の反応も同様で、子供は両耳を押さえ、親父は石を投げる。
プロデューサーが平路に止めを出す。怒った平路はマイクを放り捨てステージから降りてしまう。マイケルが早速客の意を得たりとテレサ・テンの代表曲"月亮代表我的心"のイントロをギターで奏で始め、揚頴がポップに可愛く唄い始める。と、帰り掛けた客達も次第に客席に戻りだす。
ある日、平路は、意を決し、北京のオフィス街にる高層ビルの上階にある音楽出版社を訪れる。自分達のバンドの曲を録音したカセットを持って。しかし、てんで相手にもされず追い返されてしまう。長年没交渉だった機関車の運転手の父親と再会した折、互いの情が通じたかに思えたものの、それが一層何とかしなければという焦燥となり平路の心に重くのしかかってしまう。それを打開すべく最初の一歩であったのが忽ち躓いてしまって、直情型の平路は、出口を完全に見失ってしまう。揚頴が彼を懸命に慰めようとするのだが・・・
揚頴に惹かれていたマイケルも失意の平路に健気に尽くす彼女を目の前にしては、さすがに諦めざるをえなかった。そして彼にも、様々な問題が重くのしかかっていた。マスコミに父親の北京での愛人の事や、行き詰まり四面楚歌に陥っていた頃酒場でさんざん客に愚弄されて起こしてしまった自身の暴力事件の裁判。判決の日、マイケルが、父親の根回しのお陰か、執行猶予付き判決を受けている時、彼の携帯にメールが入った。
平路の死の報告だった。
前をゆっくり走っていたトラックの後部に、猛スピードでもろに正面からぶつかったのだった。トウモロコシの実の散乱したアスファルトからゆっくりと起き上がり、唖然としたトラックの運転手の処まで歩いてゆくと、徐ろにジーンズの後ろポケットからカセット・テープを取り出して運転手に渡す。そして、呟く。
「その次の曲、悪くないぜ。聴いてみな・・・」
運転手が言われるまま、運転席のカセットプレーヤーに差し込むと、早速曲が流れ始める。仏教風の、自分用の送別の歌ってところであろう、トラックの荷台に凭れ大空に流れて行く白雲を見上げながら、やがて平路はその場に崩れ落ちて行く。
ちょっと絵に描いたような場面だけど、北京や北京揺滾を、あたかも外国人が観るように、香港人メイベル・チャンが撮っている中では、取って付けたような感じはなく、むしろ自然なくらいだ。否、幾片か挿入された自己紹介的なショットなんかの、六、七十年代映画に散見される手法を見るにつけ、お決まりの定番を踏襲している感すらある。
結局、マイケルの一方的な"艶舞女郎"揚頴に対する片思いに終始し、香港に戻ることに。揚頴は尚も楽隊とともにあっちこっちを旅しながら生きて行くことになる。平路の死と入れ替わるように戻ってきた愛犬"李逵"(水滸伝の登場人物"黒旋風")とともに。
傑作という訳ではないけど、観始めれば、やっぱり最後まで観てしまう青春群像物の佳作、"北京揺滾故事2000"ってところであろうか。鮑家街43号楽隊の"晩安、北京"なんか雰囲気を盛り上げている。
マイケル 呉彦祖
揚頴 舒淇(スーチー)
平路 耿楽
監督 メーベル・チャン
脚本 アレックス・ロー
撮影 ピーター・バオ
美術 トーマス・チョン
音楽 ヘンリー・ライ
制作 寰亜電影 2000年(香港)
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