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2008年12月16日 (火)

玉観音  カルマの連鎖と救い

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   上海を舞台にした、"改革開放"の論理的帰結故事、《姨媽的后現代生活》で、終章の周潤発に騙されコツコツ貯めてきた虎の子を失い脚を骨折までしてしまい如何にも身動きが出来なくなってしまった主人公の斯琴高娃おばさんを、何処で伝え聞いたのか、東北の燻んだ工業都市から、今一つ冴えない旦那と一緒に車で迎えに来た、おばさんに少女の頃見捨てられ長年没交渉だった実の娘を演じた趙薇(ビッキー・チャオ)。お人好しで図体ばっかりがデカい旦那を何かといえばひっぱたいていたが、その何年も前の同じ許鞍華監督のこの《玉観音》では、同様に男勝りではあってもまだ女らしさを湛えている。

 雲南を舞台に、麻薬捜査官・安心(趙薇)を巡る三人の男達との数奇な運命に導かれて行く恋愛関係を主軸にした女性アクション映画風味って処で、その底にあるのは、人間のカルマ(業)にまみれた救われぬ闡是達、それでも尚救い出そうとする大慈大悲の観世音菩薩の慈愛に満ちた眼差し。
 《姨媽的后現代生活》でも上海の下町の風俗がサラリと背景として描かれていたが、ここでもタイ族の独特の瓦葺きの町並みや水掛祭り・精籠流し等のお祭りの光景も挿し挟んだりして雲南的情緒を濃密にではなく淡彩に滲ませている。以前は、雲南がタイ族の故郷、そこから現在のタイに南下して来たというのが定説だったのが、最近では、ベトナム北部という説が有力になっているという。ともあれ、雲南にタイ族が広く分布し昔から住んでいた事実には変わらない。
 
 この《玉観音》、元々の海岩の原作が人気があったらしく、テレビ・ドラマも人気をはくし、この映画が出来たようだ。興業的には失敗だったという。テレビドラマのイメージと乖離してしまったのだろうか。この映画自体、決して悪くはないと思うが、先行する同じ映像メディアでの印象が強いと往々にして起こること。ニコラス・ツェーも清々しいしヴィッキーも奮闘している。潘隊長の孫海英も渋くて悪くない。

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 麻薬組織の跋扈する雲南のある町で、何燕紅(安心)は麻薬捜査官として毎日組織との暗闘にあけくれていた。ある水掛祭りの日、ふとしたきっかけで出遭った毛傑(ニコラス・ツェー)と忽ち恋に陥ってしまう。
 そんなある日、安心も参加した囮捜査で取引が行われた船上に姿を現したのが誰あろう毛傑自身であった。彼は麻薬組織一味家族の一員だったのだ。彼は逮捕され、アジトの毛傑の邸で捜査官達と一家との間で銃撃戦が始まり、父親が射殺され、捕らえられた母親も後獄死してしまう。毛傑は騙されたと思って安心を憎み兄と共に復讐に走る。
 ところが、安心には、もう一人、別々に暮らしてはいるが長い付き合いの新聞記者・鉄軍が居て、とうとう子供を身籠もり出産する。そこに毛傑が上告し公判が開かれるので出廷して欲しいと連絡が入る。母親が毛傑は船に運んだ荷物の中身を知らされてなかったと陳情し、弁護士も安心に毛傑との恋愛関係を執拗に追求する。結局、毛傑は釈放される。
 すっかり憔悴した安心の処に鉄軍が現れ、荒れ狂いなじり出した。DNA鑑定をした結果、安心の産んだ子供・小熊は彼の子供ではないと判明したと。毛傑との子供だったのだ。安心もまさかと驚きその旨訴えるが詮無いこと。それでも、怒りが収まると鉄軍は、やはり安心を失いたくはない己に気付く。と、突如毛傑達の襲撃が始まり、鉄軍は射殺され、安心は赤ん坊を抱いたまま一命を取り留める。
 失意の底で、安心は北京に移り住み、細々と幼い小熊との生活をはじめた。そこにも、嫁さんの会社のそれなりのポジションに収まって優雅な生活を送っていた楊瑞という男が彼女に一目惚れし強引に近づいてきた。とはいえ絶望と小熊の入院費すら払えぬ窮乏生活の底で喘いでいた安心は、軽薄だが明るい楊瑞を自然に受け入れることが出来た。ところが、彼の女房が、二人の関係に気付き、別れ、その報復だったか、突如警察が楊瑞を贈賄容疑で逮捕し刑務所に放り込んでしまう。出所し、安心の元を訪れると姿はなく、今までの経緯を長々と認めた置き手紙がテーブルの上に置いてあるだけだった。
 楊瑞は安心の上司の潘隊長の入院先に赴き安心の居場所を聞き出し安心のチベット風の居所に赴く。庭先で遊んでいた小熊が目聡く彼の姿を認め走り寄ってきた。久し振りの邂逅に安心も心和んだ。が、早速毛傑兄弟の襲撃に遭い、毛傑の兄は安心に逆に射殺されるが楊瑞が瀕死の重傷を負い小熊も毛傑に連れ去られてしまう。潘隊長が車のトランクに隠された小熊の死体を見つける。やがて、電話で呼び出され、一人現れた安心は、毛傑に銃を突きつけられて、小熊は俺の子供じゃないと言え!と迫られ、安心は小熊は私の子供よ、そしてあなたが父親よ!と幾度も訴える。俺を騙すな!と叫んだ次の刹那、物陰から機を窺っていた潘隊長の拳銃が火を噴き、銃弾が毛傑の眉間を貫いた。崩れ落ちながら、毛傑の拳銃も火を噴き、安心の胸を貫いた。潘隊長が駆け寄り、倒れた安心を抱きかかえるが既に事切れていた。
 
 最後に、鉄軍も毛傑も安心も小熊も死んだ後、一人生き残った楊瑞があるチベット寺院を訪れ、観音像に向かって話しかける。
 「安心・・・・・・」
 慈愛の微笑みを湛えて観音像は仄暗い堂奥に静かに佇み続ける。

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 安心(何燕紅) 趙薇
 毛傑     謝霆鋒
 鉄軍     陳健斌
 楊瑞     柳雲龍
 潘隊長    孫海英

 監督 許安華(アン・ホイ)
 脚本 岸 西
 原作 海 岩
 撮影 関本良
 制作 中国電影集団公司  2003年作品

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