シンドバッド七回目の航海
ちょっと旧いフレーズだけど、戦前の《キング・コング》と並んで"夢と冒険"映画の不滅の金字塔が、このハリーハウゼン特撮の《シンドバッドの七回目の航海》であろう。
シンドバッド物自体はもっと古く、'47年にダグラス・フェアバンクスJrの《シンドバッドの冒険》がある。チャップリンと同期の彼の親父のダグラス・フェアバンクスにもシンドバッドではないが《バクダッドの盗賊》というサイレント映画がある。
シンドバッドという言葉は"インドの風"という意味らしいが、この映画でも、シンドバッドの恋人のパリサ姫が"チャンドラ王国"というもろインド名の国のプリンセス。アラビアにインド、例えアラブに石油が出、インドを大英帝国が植民地としていたとしても、正に遙か遠い遠い異郷の幻想・アラビアン・ナイトの世界なのであった。湾岸戦争・イラク侵略戦争の昨今、さすがにもうそんな甘味な子供っぽい空想は白けてしまうが・・・否、逆に"だから"という論理と発想で、もはや地上に"秘境"の霧散した今日、一層"アラビア"ロマンに空想を逞しくするってのも有り得るのかも知れない。
そういえば、2006年の中国映画《十三の桐》で、女子高生の主人公・風子が鬱屈した日常のふとした間隙に、窓の外に、ラクダに乗ったアラビアの王子様を幻視する場面があった。現代中国ですら、アラビアンナイトの世界が、遙か彼方に蜃気楼の如く揺らめいているのだ。
ハリーハウゼン、クレイ・フィギアーのストップモーション・アニメの特撮では有名で、東宝の《ゴジラ》にも影響を与えたらしい。最近DVD化された《クロバーフィールド》も、方式は違ってさすがにハイテクなのだろうが、影響は感じられ、イメージはより悪夢的になっていて、ポスト"9.11"的心象のシンボルとして歴史的地位をすら獲得した感がある。こうなってくると、もはや"夢とロマン"とは乖離した、ひたすらなる底なしの不安と悪夢そのものだ。
夜闇の中を、シンドバッドの帆船が、慎重にゆっくりと進んでいた。やがて、前方に、幽かに未知の島影が見えてきた。錨を下ろし翌朝上陸することとなった。チャンドラ王国からパリサ姫を乗せてバクダッドへ戻る途中であった。
朝、シンドバッドの一行は水と食料の確保のため島を探索した。
しばらく進むと、断崖の下に大きな洞窟が見えてきた。と、突然、一人の黒い衣装を纏った男が現れ、血相を変え助けを求めながら走り寄ってきた。何事が起こったのか、と誰もが男の方を見遣ると、背後の大きな洞窟から、巨大な怪物が現れた。一つ眼の、馬のような二本足の巨獣サイクロポスであった。シンドバッド達は槍を投げつけ応戦したが、到底適う相手ではなかった。黒衣の男は、脇に抱えていたランプをこすって、ランプの精ジニーを呼び出し、サイクロポスを何とかしろと命ずる。暴力は使えないジニーであったが、サイクロポスの前に透明なバリアーを張って一行の退路を作った。全員、船に戻りさっさと錨をあげてその島を離れた。 船に戻る途中、サイクロポスが投げた巨岩の起こした波でボートが転覆し大事な魔法のランプを海中に落としてしまったその男・魔術師ソクラは、島に引き返すことを求めた。懐から、一掴みの光り輝く宝石をテーブルの上に並べて見せて。しかし、パリサ姫をバクダッドへ連れ帰る方が先決と、シンドバッドはきっぱり断った。
後はお決まりで、魔術師ソクラが奸知を働かせ、嫌でも島に戻るべき奸策を弄し、まんまとシンドバッドは罠に嵌ってしまい、件の島に戻ることに。しかし、ランプはシンドバッドの手中に入り、ランプの精ジニーとパリサ姫がジニーのランプからの解放を条件にランプの呪文を聞き出し、結局事を成就し、約束通り魔窟の地面の裂け目の底に赤々と燃えている劫火にランプを放り込んでしまう。
サイクロポスを殺した魔術師ソクラの庭番怪獣・ドラゴンも、サイクロポス退治に造られた巨大な石弓で倒され、ソクラもその巨獣の下敷きになって死んでしまう。で、ジニーが最後の奉公とばかりに、島に隠されていた莫大な秘宝・財宝をシンドバッドの船室に移し、一行は晴れて一路バクダッドへと戻って行く。
ハリーハウゼンの"シンドバッド三部作"の一作目で、最後の三作目は、1977年の《シンドバッド虎の目大冒険》。
主演のカーウィン・マシューズ、この後も、ハリーハウゼンとともに《ガリバーの大冒険》THE 3 WORLDS OF GULLIVER にも主演し、'64年には、《バンコ・バンコ作戦》というスパイ物にも主演したらしい。
キャスリン・グラントの方は、'50年代を通じて有名男優と共演している。翌年には、ビクター・マチュア主演の《ビッグ・サーカス》に。ジニー役のリチヤード・エアーは'50年代の有名子役。
シンドバッド カーウィン・マシューズ
パリサ姫 キャスリン・グラント
ランプの精ジニー リチャード・エアー
魔術師ソクラ トリン・サッチャー
監督 ネイザン・ジュラン
脚本 ケネス・コルブ
撮影 ウィルキー・クーパー
音楽 バーナード・ハーマン
特撮 レイ・ハリーハウゼン
制作 コロンビア映画 1958年作品
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