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2009年2月 5日 (木)

《酔いどれ詩人になる前に》チャールズ・ブコウスキー

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  英題:"FACTOTUM" A Man Who Performs Many Jobs。
 FACTOTUMとは、雑役係の事。モデルの詩人・小説家ブコウスキー(映画ではチナスキー)、様々な仕事に就いてきたらしい。この映画でも正に色んな職業を転々としている。現在の日本の状況そのまま。むしろ、仕事に就くために米国各地を移動しまくっているてっ感じだ。期間従業員や派遣社員が全国あっちこっち職場を転々としているのと同じ。でも、実際のブコウスキーは確か長年郵便局員だったはず。勿論それ以前が、正に雑役人生だったのだろう。でも、彼には詩と小説があった。
 
 ブログ見ると、ミッキー・ロークも以前同じブコウスキーの役を演ったことがあるらしい。コッポラの《アウトサイダー》でミッキー・ロークと兄弟を演じたマット・ディロン、偶然とも思えない。この映画のチナスキー(=ブコウスキー)、ブコウスキーの小説から受けたイメージとは若干異なっていて、もっと崩れているはずが些か行儀が良過ぎる。で、邦題にもなっている「前に」、つまり"若きブコウスキー"って処で納得する他ない。

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 小説だと、やたら缶ビールとポートワインが常套句のように出てきたが、この映画でも大瓶のポートワインらしきものが一度だけ挿入されていた。もっとふんだんに出して貰いたかった。愛人のジェーン役のリリ・テイラー、如何にもって感じが出ていて仲々好い。演出も巧いのだろう。でも、イメージ的にはもっと肥満型。そうすると、もっとブコウスキーの世界に近くなる。

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 チナスキー、ようやくありつけた仕事にも拘わらず、早速煙草は吸うは酒は飲むはで直ぐにクビになってしまう。米国は定かでないが、今の日本じゃ(昔は必ずしもそうではなかった)、ちょっと考えられない。とは言え、国内の毎日のニュースを、その手のトラブルが賑わせてはいるけど。
 ブコウスキーの小説じゃあ、就いた仕事の苛烈さ、それも仕事仲間の悪辣さなんかをリアル且つ面白く描いていたんだけど、この映画では全く見られない。
 もっとビールとポートワイン、そしてセックスに溺れるべきであった。そんな鬱屈と退嬰の底に脈々と流れているブコウスキーの"生"が顕わになるのではなかったろうか。
 ちょっと旧いが、かのルトガー・ハウアーに1988年制作《聖なる酔っぱらいの伝説》という"酔生夢死"故事片があった。一杯の酒のために、結局全てを失う羽目に陥った、しかし誇り高きアル中男の顛末であったが、ハウアー仲々好かった。こっちは、束の間の純愛もありはしたが純粋に"酒"いのちの一本道。それにひきかえチニスキーは煙草、女、ギャンブルと欲張りだ。その上、詩に小説。十分に人生をエンジョイしている。
 それでも、毎回、採用されると思っていたのか、なかったのか、郵便ポストに、ブラック・スパロー社の編集者ジョン・マーティン宛に毎日コツコツと書き溜めた原稿を投函し続けた結果、幾年か後、漸く一編だけ採用されるこことなった。

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 チニスキー     マット・デイロン
 ジャン       リリ・テイラー
 ロウラ       マリサ・トメイ
 
 監督    ベント・ハーメル
 脚本    ベント・ハーメル、ジム・スターク
 音楽    クリスティン・アスビョルンセン
 制作 ブルブル・フィルムス、スターク・セールスメインク
                 2005年(米・ノルウェー)

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