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2009年3月27日 (金)

ポスト・ナンナーク タイ恐怖映画

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   サイトを見ると、ターターやトン、そして今や泰国恐怖電影皇后マミーこと、ナパッパパー・ナクプラシットまでが出演する米国映画"ビッター/スィート"が公開されるとか。マミーはともかく、ターターとトンが映画で共演するのは初めてではないだろうか。これはタイ国内の映画ではまず実現しない顔合わせだろう。米国資本関与の副産物ってところだろう。米側はその辺りを事前に知悉していてのキャスティングだったのかも。
 この映画別にホラーではなくラブ・コメディーのようで、マミーも強面ではなく普通の役らしいが、是非観てみたい。そう云えば、マミーの文字通りの鳥肌立つような妖艶さ全開のタイ・ホラー"アート・オブ・デヴィル"、ハリウッドでリメイクする話だったけど如何なったのだろう。

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 タイ人のホラー好きとお笑い物好きは有名だが、これはしかし、何処の国でもそう大差はないのではないだろうか。「クワン&リアム」、「クンぺン&クンチャン」なんかの古典的悲恋物もタイ人の嗜好物。
 尤も「クンペン&クンチャン」は、時代活劇+ホラー的要素も強く、タイ人の好みが全て凝集されたものと云えなくもない。クンぺンはタイの歴史上の伝説的黒魔術騎士だけど、映画だと国王の前では意外と情けない。頼朝の前の義経みたいなものだろうか。

 Horrer9

   タイ・ホラーの新基軸といえば、やはりノンシー・ニミブットの"ナンナーク"だろう。
 それよりちょっと後に出た"ロンレーム・ピー"怨霊飯店、ナンナークで主演したウィナイ・グライブットが怨霊たる老主人役で出ているが、典型的なニミブットの"ナンナーク"以前の作風。先の同じ「クンぺン&クンチャン」と同じ年、同じ"MONGKOL"制作。
 確かに、予算の問題も多少関係はあるのだろうが、総体的に造りがちゃち。
 老主人に扮したグライブットの老爺のメーキャップも安っぽく、タイ風に云えばテレビの"ソープオペラ"並。しかし、これは日本も同じで、最近でこそ少しは増しになったが嘗て伊丹十三が嘆いていたゆえん。

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 ストーリーはありふれている。
 海に面した旧い洋館のホテルにまつわる秘された愛憎悲話。
 ある時、改装中のホテルから仏像が見つかり、工事の邪魔にもなるので他に移される。しかし、実はそれは愛憎劇の果てに亡くなったそのホテルの老主人の怨霊を封ずるための仏像であった。封印が解け、早速怨霊の復讐の惨劇が始まる。
 最愛の先妻の死にすっかり絶望し長年抜け殻のようになっていた老主人の前に、ある娘が現れ、すっかり惚れ込み、生気を取り戻す。求婚までし娘は承諾する。そして結婚式の当日、花嫁の待つ寝室に衆人達の見守る中で扉を開くと、果たして、娘の姿は無かった。ホテルのある使用人と一緒に駆け落ちしてしまったのだった。娘と使用人の裏切りに激しい憎悪と絶望に身を焼きながら失意の内に亡くなってしまった老爺の怨霊の復活。
 それでも、惨劇の間、逃げた花嫁に瓜二つの彼女の実の娘を、しかし、怨霊は幾たびも助けていた。結局、逃げた花嫁への愛情(執着)がそれほど強かったという訳なのだが、"怨"の塊と化したダイナミズムが希薄で、何しろあらゆる面で造りがちゃちなこともあって、エピソードはあれこれ盛ってあるが凡庸なテレビ劇でも観ているように退屈さ。

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 確かに「ナンナーク」もお世辞にも怖いとは云えない代物。監督のニミブット自身も別段ホラー的部分に殊更力を入れているようには思えない。それにも拘わらず、「ナンナーク」が面白かったのはそれなりの予算をかけて造ったので、セットやロケ特殊効果等のちゃちさから免れていたというのもあるだろうが、映像も今風に凝って、"反戦"的テーマも織り込み、何よりもニミブット自身の監督的手腕によるところ大ってところであろう。
 又、運河への拘りという要素も面白い。
 トンの主演した「クワン&リアム」なんか観ても、「ナンナーク」の舞台になったプラカノンより「クワン&リアム」のバーン・カピの方が更に奥深かったはずが、映画ではむしろ長閑な田園地帯。「ナンナーク」のジャングル然とした伝でいけば、バーン・カピはさしずめ熱帯雨林の極みみたいな場所でなくてはなるまい。ニミブットが"造った"のであろう。あれはしかし、「ナンナーク」伝説の雰囲気作りには不可欠な舞台装置であった。それに運河、水は、正にタイそのもの。

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 ニミブットの「ナンナーク」以降、様々なホラー映画が多産され、正に百花斉放時代。そんな中で、アクション映画の雄・オキサイド・パンあるいはパン兄弟の造るホラー映画、タイのホラーとは微妙に感覚が異なり、「ザ・パーク」「ザ・アイ見鬼」等は正に香港ホラーでお粗末。「リサイクル」ではそれなりに予算かけているみたいで、ちゃちさから多少免れ、そこそこ見れなくはないけれど、やはり本質的にちゃちさ加減から抜け出れてない。これがあのモンコビシット主演の「バンコク・デンジャラス」と同じ監督かと眼を疑ってしまう。やはり、本質的に香港ホラーで"怖さ"なんて皆無。

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 香港映画の場合、所謂ホラーではなく、台湾女優を使った"ゴースト・ストーリー"物、つまり妖艶な精霊達のラブ・ストーリーの方のジャンルの方が遙かに優れている。
 最近中国で「画皮」なんて金かけたホラー大作造ったらしいが、普通の中国ホラー、例えば比較的最近の「寒村客桟」なんて、若手の香港俳優を起用し映像も小綺麗だけど、凡々作で、ホラー的技法がお粗末過ぎる。客桟なんて云うから、てっきり武侠ホラーかと勘違いしあらぬ期待までしてしまった。

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 ハリウッド製のリアルなホラー映画を観慣れた眼からすると、何としても「ナンナーク」以前のアジアン・ホラーはちゃちで学芸会芝居のようにしか観えない。  それでも、漸く鑑賞に堪えれるホラー映画がタイでもどんどん現れていて、「ナンナーク」の主演女優サーイが主演した「ヒエーン」、タイ黒魔術の「ネクロマンサー」、男女学生が殺されまくる「スケアード」等皆ハリウッド的技法と模倣からそれなりのものを作り上げていて先が楽しみ。個人的には、「ネクロマンサー」が一番気に入っていて、確かにあれも一昔前のデヴィッド・クローネンバーグの「スキャナーズ」等を彷彿とさせるが何しろもろタイ式呪術が扱われていてそんなもの吹っ飛ばしている。勿論難点も多々あるけど、シリーズであるなしに拘わらず、あの続編を撮って欲しいものだ。

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 因みに「シーウィー」、あれもやはりホラーの範疇に入ってしまうのだろうか。
 確かに、子供の心臓を煮て喰ったりするのはホラーなんだろうが、あれこそタイの社会的歪みを映像化した所謂犯罪者映画だと個人的には思っている。そもそもタイ、特にバンコクなんて、戦後暫くまで、本来農民達の大半が農地に縛り付けられていて、都市の労働力の殆どを中国南部からの低賃金の移民に頼っていた特殊なタイ的状況ってものが前提とされているのだから。そこに中国人秘密組織が暗躍し、移民労働者達は悲惨な状況下に呻吟する他はなかった。正にブルース・リーの「ドラゴン危機一髪Big Boss」の世界だったのだ。

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