モメイのデビュー・アルバム "モメイ"

これは何もタイ・ポップスに限った現象ではないが、デビュー・アルバムがやたら大ヒットしたりすると、次の第二弾が大変な難事となってしまう。前作同様ないしはそれに準ずるヒットで当たり前ってことになるからだ。そこでコケ、あえなく泡沫的明星となって何時の間にか消えてしまうケースも多い。
ボーなんて二百万枚ぐらい売れたって話だったけど、案の定第二作は今一で、デビューアルバムには較べるべくもなかった。尤も、バンコクの定宿で、ある日本人にその話をすると、急に怒り出してしまった。彼はボーのファンだったらしく、ボーを貶されたと勘違いしてしまったのだが、彼にとっては二枚目のアルバムも今一ではなく、十分に彼を満足させえるものだったのだろう。それにしては、最初のアルバムほどには、例えばゴーゴー・バーなんかで頻繁にかかったりはしなかったし、踊娘達が急に乗り始めたって場面にも遭遇したことはなかった。
タイの隣国、カンボジアで若い娘に思わず"バンコクに行ってみたい"とため息を漏らさせたモメイ、ブラウン管(まだ液晶の時代ではなかった)でコミカルソング"ゴジラ"の乗りの好い曲にカラフルなコスチュームと覚えやすい振りのダンスを繰り広げ、もう一曲のコミカルソング"クラドゥック・クラダィック"と共に受けたようだ。
さすがにゴーゴー・バーでこの二曲が流されたのを聞いたことがない。そもそもそ雰囲気的に馴染まないし、バーの上であの振りを彼女達がするとは到底思えない。してくれれば、思わず客席で僕も小さく手真似ぐらいはしただろう。
この記事を書こうとCDを聴いてみたら、妙なことに何時まで待っても"ゴジラ"が流れてこない。カバーの曲目確かめると、わざわざタイ文字を縦書きにしてあって余計判りづらく、何度も読み直してみたが無かった。
えーっ!
で、奥に収めてあった段ボールの底を引っ掻き回して漸く捜し出し、当時出始めであった"RS"の刻印のあるスリム・タイプのカセット・テープを確かめてみると、こっちは普通に横書きで、A面冒頭にちゃんとあった。全十二曲、CDは十曲。しかし、何故ヒット曲の"ゴジラ"を外してしまったんだろう。"クラドゥック・クラディック"はB面のトップ。
全くタイの音楽関連企業って・・・人騒がせなもんだが、それはともかく、僕もこのアルバムはかなり気に入っている。非常に調子が好く乗りやすい。確かに若者、デビューの頃のターターの如く十代中頃からの層をターゲットにしたものだろうが、大人でもタイのディスコなんかで流れてもおかしくはない。アップテンポのコミカルあり、少女的感傷趣味風の曲あり。それなりの曲がいっぱい詰まっていて、ヒットしない方がおかしいくらいだった。
"ナー・ラック・チャン"(曲自体にははいってないセリフ)とジャニーズ系のカッコ好いクラスメートの男の子のところを呟くイントロから始まる"クラドゥック・クラディック"のクリップも、"ゴジラ"以上に出来が好く、モメイの意中のゴール・キーパーのオバカ・ストーリーも笑わせるし、例の腰の辺りで両手を交差する振りも覚えやすくこっちの方が人気があったんではなかろうか。この場合、"ナー・ラック・チャン"は"めちゃ可愛い"なのかそれとも"カッコ好いー"のどっちなんだろう。
で、モメイも、その次の二枚目ですべってしまった(タイでの実際は定かでないが)。
デビューがコミカルソングの類だったんで、年齢もターターみたいに十代中頃ってわけでもなく、同じ路線でゆくならともかく、そもそもの刷新イメージ造りからして困難を極めたのだろう。コケティッシュで童顔といえば童顔だし、年齢相応といえば相応の風貌でもある些か中途半端な顔の造りだから余計なのかも知れなかった。
トンなんか二枚目の"ソーン・ター"で随分とイメージ・チェンジしたけど、曲もそれなりに粒が揃っていたし、トン自身の魅力がそんなものを越えていて問題はなかった。
問題はモメイの方で、それも、実際にはRSのスタッフの方であったろう。ともかく、これといった曲が殆ど無く凡庸なものばかり。その後も同様今一、今二・・・。とっくに僕の関心の圏外出ていた。それでも、コンスタントにアルバム出しているようだし、RSではそれなりのポジションには居るのだろうけど、嘗ての泡沫的ではあったものの一世を風靡した頃とはかなり差があるようだ。尤も、それが"普通"なコースなんだろう。
一瞬大きく夜空に輝きわたり、やがて収縮し、いぶし銀のような瞬きの小さな恒星となってゆく。

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