« 《メモリー》 ポスト・タイバブル的メランコリア | トップページ | グル・ダットの《 バーズ 》BAAZ 1953年 »

2009年8月19日 (水)

廃れゆく町 門司港 part 2

 Moji_2009_b5 

 列島中トロピカル・アイランドと化して既に久しいけど、昨年以上に長雨月な今年の夏、同じトロピカルであっても紆余曲折・千差万別で一様ではないようだ。西は大雨、東は大雨と地震で少なからずの犠牲者まで出ているが、台湾では台風が猛威を揮ったらしい。国土がコンパクトだからといって必ずしも治水の類が容易という訳ではないようで、自然の形状故の災害なのか、それとも長年の外省人=蒋介石・国民党支配の賜物なのか。

 詩人・金子光晴の盟友であり、戦後は辻まこととも親交のあったらしい北海道生まれの詩人・吉田一穂(いっすい)の『故園の書』(昭和四年)所収の「冬」。確かに、辻まこととの共振性が了解できる。この断片は、まことのブルーが印象的な作品《むささび射ちの夜》の方が遙かに相応しいが、それはそれ。
 

Moji_2009_b3

夜、孤独な魂を点ずる灯がある。片照る面を現実にむけて、蜜蜂の去つた地平線を想ひ、自らの体温で不毛の地を暖めながら待つ春への思索の虹――雪に埋れたヒュッテで私は煖炉を焚き、木を斫り、家畜を養ひ、燈火の下で銃を磨き、嵐の音に沈思する。

Moji_2009_b2
 
今朝、谿の斜面に楢の木立が、鮮やかな藍と紫の影を印してゐた。丘に沿ふ美しい起伏を痕して吹雪は去つた。雪は蛋白石の内在界を光耀する。落葉松林の奥で肉食鳥の声が鋭い。斧が光り、丁々と木精は冴え、粉雪を散らして木は倒れる。尺寸の幹すら四五十年の年輪を刻んでゐた。

Moji_2009_b1

私は自然を会得する一本の草木の如く生きて疑を懐かない。冬の脅威から家畜を戍り苛酷な自然に面して一挺の斧と銃とで営みを続けてゆく。一塊の土のある限り、農民は氷の上にすら田を作り得るであらう。彼等は蜥蜴に変形しても生命を保つ。

Moji_xxx

が一度、社会組織の残忍な簒奪機構に入り込む時、彼等は人と人の間で餓死せねばならない。外には北極星が寒気に磨かれてゐるであらう。馭者座(カペラ)は金色の五辺形を描き、参星も高く昇つたであらうか。霜にとざされた硝子窓に愴絶な青光を放つ爛々たるは彼の天狼星であらう。

                                                    冬『故園の書』 吉田一穂(昭和5)所収

Moji_xx2

 本当は、中国山脈の裾の小さな町・庄原の予定であったが、撮っていた写真が何処かへ紛れあるいはひょっとして紛失したかも知れない為体(ていたらく)。本当に廃れゆく町の典型みたいな仲々に趣きのある町並で、最後にこれを持ってこようと企図していただけに残念無念。もう七、八年も前の風景、果たして現在撮った風景の幾らが残っているやら。

Moji_3xx

|

« 《メモリー》 ポスト・タイバブル的メランコリア | トップページ | グル・ダットの《 バーズ 》BAAZ 1953年 »

旅行・地域」カテゴリの記事

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 《メモリー》 ポスト・タイバブル的メランコリア | トップページ | グル・ダットの《 バーズ 》BAAZ 1953年 »