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2009年9月 5日 (土)

印度恐怖映画(2) ボンベイの高層マンションに巣喰った呪縛霊《ブーツ:死霊》

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  インド・中国そして日本の自殺者を合わせると世界の自殺者の4割になるらしい。
 欧米に追いつけ追い越せの改革開放の中国なら了解できるが、あの"スロー"を絵に描いたようなインドが中国と並んで自殺大国とは俄かには信じられないが、インドでもそれなりに"改革開放"に準じた経済的社会的変容は周知の事柄。特に高層ビル・高層マンションの聳える大都市、ボンベイ(ムンバイ)は金持ち・中産・貧困階級で溢れ、様々な理由で自殺者も多いだろう。そんなボンベイのある高層マンションのベランダから飛び降り自殺した母子の部屋を舞台にした死霊譚。

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 前回の《カール》より数年前にインドで可成り評判だったらしいこのラム・ゴパール・バルマ監督の《ブーツ》、確かに《カール》よりは洗練されていて出来は悪くない。同じアジェイ・デヴガーン主演の《カンパニー》の監督なので要領は心得ているようだ。主女演のウルミラ・マトンドカールが凄い形相で奮闘していて、《カンパニー》で貧民窟から成り上がったチャンドゥの母親役を演っていたシーマー・ビスワースも今度はちょっと危ない家政婦役で決まっている。

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 些か凝ったオープニングの映像は悪くない。
 映画はやはり導入からスーッとその雰囲気の中に入り込めないと仲々馴染めない。ボンベイの高層マンションの十二階に株式アナリストのヴィシャール(アジェイ・デヴガーン)と妻のスワッティ(ウルミラ・マトンドカール)が引っ越してきた。実は二人の入った部屋は、数ヶ月前、以前住んでいた主婦マンジートとその小さな息子がベランダから飛び降り自殺していて、ヴィシャールはそのことを妻のスワッティには黙っていた。が、同じ階に住んでいる管理人タッカーがうっかり洩らし彼女も知ってしまう。前のマンジートの時から同じ部屋で家政婦をしていたバイ(シーマー・ビスワース)が現れ、スワッティが雇ってしまう。

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 幾らもしない内に、妻スワッティの様子がおかしくなる。
 誰か人の気配を感じ怯えだし、夢遊病者の如く、昼夜の別なく、無意識のうちにマンションの中を徘徊するようになり、医者に連れて行くが効果はなく、やがて、一階でガードマンの男が不可解な死を遂げる。ヴィシャールは妻を疑い、やってきた警部リヤカット・クェレシュ(ナナ・パーテカル)もスワッティに疑いを持ちはじめる。やたら意味ありげなショットが多い割には、ナナ・パーテカル警部、快刀乱麻に凄腕を発揮するって訳でもなく、単に雰囲気を盛り上げるためだけの手段であったようだ。むしろ凡庸な警部でしかなく、そっちの方が尋常ではない事件の推移に効果的と思ったのだろう。

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 精神科医に診せても効果はなく、見かねて家政婦のバイが、霊能者に見て貰うことを勧める。如何にも行き詰まったヴィジェイ、縋るようにサリタ(レーカー)という有能な霊能者の処に赴く。若い頃は若きバッチャンの相手役をよく演っていたレーカー、今ではもうそのままで魔女でもやれそう。そう言えば、比較的最近の、作家ナナ・パーテカルの嘗ての愛人だった娼婦役悪くはなかった。

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 ところが、このサリタによつて事態は急展開してゆく。
 先ず飛び降り自殺したマンジート母子の母親が呼ばれ、彼女がベッドに括り付けられたスワッテイに自分の死んだ娘が乗り移っているのが分かり、優しく頭に手を遣る。そこで全てが明らかになってしまう。
 丁度管理人タッカーの息子サンジェイが家に戻ってくる。そして、ヴィジェイがタッカー父子を自室のスワッテイがベッドに括り付けられた寝室に連れて行く。スワッテイが真相を語り始め、マンジートを殺害したサンジェイを罵る。サンジェイはマンションの一階に逃げ出し、警部と出会う。そこへ皆が追いかけてきて、スワッテイが霊力を発揮し、サンジェイは白状してしまう。すると、スワッティからマンジートの霊が抜けだし、スワッティも元の自身を取り戻せてしまう。
 留置所に収容されたサンジェイの処に、しかし、マンジートの霊は尚も執拗に現れるのであった・・・

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 酒に酔った勢いでマンジートの部屋に入り込み襲おうとしてベランダから落下したマンジートと彼と仲の好い警備員が下に放り投げて殺してしまった小さな息子の二人の霊が、引っ越してきたスワッテイに取り憑き、彼女を使って犯人達に報復してゆく復讐劇。
 ストーリーは月並みな代物で、要はそれを如何に面白く造型してゆくかなのだろうが、
何か展開がスマートではなく、手抜きや辻褄合わせばかりが眼についてしまう。映画館で観るとまた違うのか知れないけど、ビデオだと冗長で長ったらしく感じる。《カンパニー》とは偉い違いだ。

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 やはり色々と規制があるのか、ハリウッドB級ホラー風な造りにしてある割にはどぎつい描写が殆ど見られず、"恐怖"度も面白さも半減してしまっている。インド風ホラーって如何なのか定かでないが、中途半端さは否めない。結局、見れる処といえば、オープニングに尽きてしまう。

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 《カール》には、オープニングとクレジットにダンス・シーンがあったけど、これには無い。悪霊・死霊も一緒に皆と踊るんじゃ幾ら何でもインド人も白けてしまうのか。コミカル・ホラーなら問題あるまいが、シリアス・ホラーだとやはり不味ようだ。それでなくても、恐怖度薄いのに。やっぱし、インド、否、ボリウッド以外の映画は殆ど観てないので、ボリウッドと限定しておこう、ボリウッドの"ホラー"映画だけは外した方が賢明だという些か情けない教訓を得てしまった。タイ・ホラーなんかそれ自体でも十分観れる作品どんどん出てきていてハリウッドからも版権買いに来るぐらいの情況にあって。

 因みに、この作品でアシスタント・ディレクターのモーハム・シャー、《カール》では監督に出世している。

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  アジェイ・デヴガーン    ヴィシャール
 ウルミラ・マトンドカール  スワッティ
 ナナ・パーテカル      警部リヤカット・クェレシュ
 レーカー          霊能者サリカ
 タヌジャ          マンジートの母親
 シーマー・ビスワース    家政婦バイ
 
 監督   ラム・ゴパール・バルマ
  脚本   シミット・アミン
 撮影   ヴィシヤール・シンハ
 美術   プリヤ・ラグナート
 音楽   サリム&スレマン・マーチャント
 制作   ドリーム・マーチャント 2003年(インド)

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