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2009年11月28日 (土)

十万年目の邂逅

  Afghan_1

   以前足繁く通ったパキスタンは北西辺境州・ペシャワールのちょっと郊外にあるアフガン難民のバザールで偶然出遭った若者二人連れに、僕は些か驚いてしまった。
 (写真参照)
 小坊主風の日本人中学生がアフガン人の格好でもして見せているのか、と思わずあらぬ疑念が脳裏を掠めた。しかしながら、その二人は国境を越えてやってきたれっきとした真性アフガン人達だった。ハザラ族かと尋ねると違うと云う。言葉の関係で結局何族かは分からずじまい。如何見ても、中国系でも韓国系でも、チベット系でもなく、やはり日本人系としか思えない。やたら驚きと親近感がこみ上げてきて、向こうも自分達に似た相貌にまんざらでもないような様子、確かにペシャワールであってみれば、古には玄奘三蔵もここを通った華麗な仏教の都ガンダーラ、東西種々様々な民族・人種が交差し出遭ってきた場所ではあった。
 何しろアフガニスタンは中央アジアとも云える位置関係にあって、それこそ様々な民族・部族が入り乱れ、東西混交のそれらの風貌は何とも筆舌に尽くしがたいくらいに味わい深く、見てるだけで惚れ惚れしてしまう。これが旅行者にとっても魅力の一つであり、アフガン人気の由縁なのだろう。チベットとイエメンには訪れる事が出来たものの、アフガンの地だけは踏めず仕舞いで残念至極。
 人懐っこいアフガン人も十五歳くらいになれば一人前なのだろう、同じ年頃の日本人達と較べて落ち着いていて大人っぽかった。嘗て中学・高校生の頃に同じ校舎で見掛けたことがありそうな、日本の何処にでも居そうな顔立ちは、予期もしなかった新鮮な驚きであった。

 アジア圏だけではあったが、あっちこっち旅してみて、一番感心したのが、風貌=顔の造作が皮膚の色・人種を越えたパターンとしてあるって事だった。
 人種・民族の特徴的な骨格とは別に、個々の個別的な顔の特徴的な造り、つまり個性的な風貌って奴が、異人種間に共通して存在しているって事だ。例えばある日本人の特徴的な顔の造りが、白人の間にも認められ、黒人の間にすら存在していて、これは別にわざわざ海外まで出て行かなくとも映画でもテレビでも確かめることは出来る類型(パターン)だ。
 つまり、特殊な事柄ではなく、普遍的に、誰であっても、同じ風貌=顔の造作の人間が異人種にも同じくらいに沢山存在しているって人類学的事実。十万年前くらいに、アフリカから世界中に今の我々現代人=新人の祖先が拡がっていった時、元のアフリカの元人達にその祖型が既に存在していたのだろう。
 勿論、一卵性双生児あるいは多生児は別にして、同じ日本人どうしの間でも似た風貌・似た顔の造作の人々って少なくはないけれど、微細な点ではやはり何処か相違していて、クローンの如く一目見ただけでは判別出来ないって事はまずあり得ない。あくまで、類型的な共通性に過ぎない。ここが自然の造化の妙って奴だろう。

 それでも、ある旅人が、自分とは異なる人種の国を旅していて、ある日ひょっこり自分とよく似た相貌=顔の造りの現地人と通りで出会ったりした場合、一体如何な気持ちだろう。上記の日本人的アフガン人と遭遇した折以上の文字通りの"衝撃"すら受けてしまうのだろうか。それとも、宇宙の神秘とか宿命めいた因縁的邂逅の赤い糸を感じてしまうのだろうか。遙か十万年前の、脳髄の奥深くに刻印されていたアフリカを起点とする人類史的伝播・移動の黎明期の遠い記憶に想いを馳せながら、旧交を温めたりするのだろうか。残念ながら、今だ以て、僕はそんな運命的邂逅は経験したことがなく、もし僕とそっくりとまではいかなくても、似た顔のインド人やケニア人あるいはギリシャ人やアイスランド人とばったり出くわせたら、確かに親近感以上のものと、同じ磁極が反発し合う如く些かの嫌悪めいた感情を覚えたりするのかも知れない。
 つまり、同じ類型的相貌ではあっても≒酷似ってのは殆ど見られないようだが、それでも運命の悪戯、偶然の一致、あるいは確率的可能性として否定し切れない。同じ原型・祖型から出たものであるなら、確かに、理論的には酷似以上の同一と云っていいくらいの相似的個体(バリエーション)の発現もあり得、旅とはそんな異人種と巡り会う可能性をも孕んだ何とも因縁めいた人類史的な業とも云えなくもない。

Afghan_2

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