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2009年11月16日 (月)

《暗殺》 転回の策謀

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   以前何処かの安売りコーナーで千円くらいで買った篠田正浩監督のDVD、久し振りに観てみた。出演俳優の殆どが既に鬼籍に入ったか、単に僕が知らないだけって感じで、監督の篠田自身何時死んだのだろうと日付を知ろうとネット・チェックしてみたら、何とまだ生きていた。嘗てインドの映画俳優ナナ・パーテカルで失敗し、出来る限り確認取ることにしているんだけど、そうか篠田ってまだ現役なのか・・・それにしては、さっぱり見ないな。嫁さんの岩下志麻もそう言えば余り姿を見なくなった。歳喰っても変わらずの可愛い感じの色っぽさが魅力のお志麻さんだけど、この1964年作品《暗殺》でも、主人公・清川八郎の女郎上がりの嫁さん「お蓮(れん)」を演じていて、当時の幕末の志士達の嫁さん・愛人って皆気丈な女性ばかり。捕らえられ番所で散々拷問にあっても夫・清川のことを一言も吐くことなく死んでゆく。

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 清川八郎って知る人ぞ知るって存在で、知らない人の方が多いのだろう。
 北辰一刀流の免許皆伝の文武に優れた野心家で、映画では丹波哲郎が演っていて正にはまり役だけど、あの〈新撰組〉の前身である〈浪士組〉の発案者。
 水戸の浪士達が井伊直弼を暗殺した【桜田門外の変】以来江戸市中に溢れた浪人達を持て余した江戸幕府が、、その浪人達を厄介払いする方便として作ったやがて上洛する将軍の安全のため物情騒然とした京都の治安警護の名目の組織〈浪士組〉を、清川八郎が、京都に入るや否や、新徳(禅)寺において「尊皇攘夷」の旗を掲げ、幕府にその矛先を向けるという大胆極まりない策謀を画し成功する。天皇から「尊皇攘夷」の勅諚(ちょくじょう)を得ることができたからだ。それに背けば、例え幕府といえども朝敵となってしまい、幕府側も如何とも出来なくなってしまった。

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 元々彼は、「尊皇攘夷」派であって、幕臣でありながら志を有する山岡鉄舟や諸藩士・浪士達で結成された〈虎尾の会〉の主催者でもあった。この〈虎尾の会〉には、薩摩藩士・益満休之助もいて、後に山岡鉄舟とともに【江戸無血開城】の立役者として奔走することになる。

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 この京都での変の際、佐幕派の芹沢鴨や近藤勇、土方俊三なんかが〈浪士組〉から別れ、後に〈新撰組〉となる。芹沢鴨以外のメンバーが画面に顔を出すこともなく、専ら映画は、清川八郎のこの策謀的義挙と松平主税介の放った刺客・佐々木只三郎の清川八郎攻略の変遷が主軸。
 この佐々木(木村功)、元会津藩士の旗本で、幕府講武所の剣術師範をやっていた。映画では、清川に講武所の道場で弟子達が見ている前で手合わせをし、二度も叩かれてしまい、すつかり面目を失い、清川に遺恨を抱き、松平主税介に清川暗殺を願い出る。これは、フィクションなんだろう。
 清川も可成りの腕前だったらしいけど、佐々木も幕府講武所の剣術師範だったくらいの相当の腕の持ち主で、尊皇攘夷派となってしまった数百人もの〈浪士組〉をそれ以上京都に置いていることを危惧した幕府は、再び江戸に帰させる。そこで、清川、一人になったところを麻布の路上で、佐々木ら5、6人のメンバーで襲い殺害。首級(生首)をすら取ったらしい。実際には、いきなり背後から他の者が斬りかかったようだが、画面では、京都・新徳(禅)寺での〈浪士組〉の尊襄派的転回の義挙と並んでこの映画のハイライトの暗殺シーン。

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 尋常の立ち合いでは既に破れているので、清川の一瞬の隙を狙っての抜刀術。日本的剣劇の真骨頂だ。篠田監督、仲々巧く撮っている。この頃が、日本の時代劇の剣劇の一番高揚していた時期ではなかろうか。
 佐々木は再び京都に戻り、〈京都見廻組〉の隊長(与頭)となって〈新撰組〉ともども、倒幕派の志士達を脅かし続けた。〈新撰組〉は一般の町民達のエリアで、〈見廻組〉は官庁エリアと分担されていたらしいが、数年後、京都・近江屋の二階で坂本龍馬・中岡慎太郎等を暗殺したとも言われている。

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 坂本龍馬にあの佐多啓二が扮している。
 些か洗練されているけど、颯爽としたところが好い。
 野心満々の丹波清川に対して颯爽淡泊な佐多龍馬って対称だろうか。
 あの蜷川幸雄 も若々しい志士姿で出ていて笑わせる。

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 清川八郎   丹波哲郎
 お蓮     岩下志麻
 佐々木只三郎 木村功
 山岡鉄舟   保積隆信
 坂本龍馬   佐田啓二(特別出演)
 松平主税介  岡田英次(ナレーション)
 板倉周防守  小沢栄太郎
 芹沢鴨    織本順吉

 監督     篠田正浩
 脚本     山田信夫   
 原作     司馬遼太郎『奇妙なり八郎』
 撮影     小杉正雄
 音楽     武満徹  
 美術     大角純一
 制作     松竹 1964年作品 

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