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2010年1月16日 (土)

銃弾の微笑む国、タイランド

  Siripon

  

 昨年末、タイの巷を騒がせたテレビ局を通じ自首したタクシー運転手シリポン容疑者のバンコク日系少年バラバラ死体事件、後続情報が途絶えその後一体如何なったのかさっぱり不明だけど、少年の母親に2番目の夫の殺害を持ちかけられ断ったのが、今度はその殺人依頼をもみ消すために母親が雇った殺し屋に自分が殺されるのではないかと強迫観念に囚われ恐怖し、彼の車に乗っていたその母親スナンさんと少年を殺害(娘は重傷)したという事件であった。
 
 何とも胡散臭い供述ではあるが、"口封じに殺し屋に殺される"ってフレーズ、何年も前のニュースにもあった。タイ東部の区長が対立する顔役の殺害を部下に命じ活動資金二十万バーツを渡したものの、顔役がその都度予定地に現れなかったり他の人間達と車に相乗りしたりして果たせずにいたのが、区長が平行して殺し屋にも依頼していて、結局殺し屋がライバルの顔役を殺害してしまい、今度はその手下が見知らぬ車に尾行されるようになって、自分が口封じに殺されるのではないかと恐怖してしまった。知り合いの警察幹部からその殺人事件に関して尋問を受け、渡りに船と裁判での証言を約束して身の安全を図ったという。

 その部下も殆ど"殺し屋"に近い感じだけど、やっぱりそんな強迫観念に囚われ身の危険を感じてしまったとすると、やはりシリポン容疑者の供述もあながち為にする虚言とばかりは言い切れなくなってしまう。それでも、シリポン容疑者、射撃の腕も悪くなくて只のタクシー運転手とは思えない。如何にも殺し屋(ムー・プン)の匂いが漂っている。一家全員殺害を、例え殺人罪で収監されることになっても引き受けなければならないのっぴきならぬ事情でも有ったのだろうか。

 我が国でも、一昔前、《永田商事会長刺殺事件》って潰れかかった町工場の経営者と従業員二人が悪徳企業の会長をマスコミの囲繞する前で堂々と刃物で刺殺したものだが、残された家族に金が渡るような約束の下に請け負った可能性が高かった。警察が余り本気でその二人の殺人犯を取り調べたようには窺えない、権力関係の影が背後に透けて見えるような事件であった。それは又、昨年だったか、昔子供の頃飼っていた犬が保健所に捕獲・殺害されたことを理由に、元厚生省幹部達を殺害した小泉容疑者の事件を彷彿とさせる。

Thailand_case_1
 
 それにしても、タイって国は、何と殺し屋が跳梁跋扈する国であろうか。
 銃器の類が市販されているって事情もあるのだろうが、警察・軍隊経験者が殺し屋になるってのも一つの傾向らしいし、特別に高等教育を受けてない人々にとって仲々率の好い仕事にはありつけない格差社会でもあるから、そんな"殺人"技術を有している者にとっては、容易に大金が入る実に率の好い仕事であるだろう。只、実際には、そうしばしばやれる仕事ではなく、やはり別に日々の糊口を凌ぐ仕事が必要にはなってしまうらしい。頻度を高めると如何しても官憲に足がつき易くなつてしまう。

 二年前、バンコク郊外の大型ディスカウント・ストアの駐車場で、何年もの間地方の政治家等やら11人を殺害してきた逮捕状の出ていた大物殺し屋スミット元警察軍曹と警察が銃撃戦を展開、計銃弾10発も浴びてスミットは死亡。新たな仕事を引き受けたとの情報が入ったからのことらしいが、警察に張られていたのでなければ、情報を警察に漏らす者が介在していたことになる。斡旋人周辺なのだろうか。オキサイド・パン監督の映画《レイン》では、正にそれだったけど、ただ警察にではなく、マフィアのそれだった。

 バンコク近郊サコンナコンの教会の駐車場で、ミサを終え出てきた「メコンの殺し屋」の異名を取る66歳の男が、隣に停めてあったピックアップ・トラックから出てきた男に至近距離から6発頭に銃弾をぶち込まれ死亡。
 男は既に2006年に殺人容疑で逮捕されていたものの証拠不十分で釈放されていて、犬肉の仲買業を営んでいたらしい。警察によるとその同じ犬肉ビジネスでのライバルとの確執と、以前行った殺人での恨みや報復の二つの線で捜査を進めたらしいが、その後の展開は不明。バンコク近郊で犬肉って、バンコク市内でも犬肉料理食べている処があるってことだろうか。

 つい最近だと、タクシンがらみと謂われている《チャーンチャイ枢密顧問官殺害計画事件》がある。タクシンを追放した2006年の軍事クーデターの後暫定政権の法務大臣に就任したプミンポン国王の顧問のチャーンチャイはタクシンからクーデターの黒幕の一人として指弾されていたらしい。これは首謀者がもろタイ国軍で、チャカリット海軍大佐は証拠不十分で釈放されたらしいけど、逮捕されているティエンチャイ陸軍少佐等四人の方は、大筋で犯行を認めているという。少佐は上官に150万バーツ貰ってチャーンチャイ殺害とバンコク市内の銀行の放火等を請負い、他の三人に60万バーツを渡し実行させようとしたらしい。自分の手は汚さず半分以上の90万バーツも自分の懐に入れる随分とセコイ軍人だけど、如何な連中の世界か想像に余りある。で、この三人何者なのか、軍人かどうかも(筆者には)定かでないが、ターゲットのチャーンチャイが枢密顧問だったことすら知らなかったらしく、普通の民間人なのだろう。と言うことは、やはり殺し屋の類? どちらにしても、正に殺し屋の生まれるべき土壌って訳だ。

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