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2012年2月10日 (金)

庭にリスの遊ぶペシャワールの宿《ツーリスト・イン・モーテル》

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 カイバル・ホテルの屋上からサダル通りを見下ろす。

 ずっと遙か向こうにアフガンの峯峰が望める。               

 遙かガンダーラ文化の中心地、パキスタン北西辺境州都ペシャワール、その鉄道駅から比較的近い新市街のメイン・ストリートたるサダル通りに面した一角、《ディーンズ・ホテル》の斜め前に、前庭が駐車場にも使われている《ツーリスト・イン・モーテル》(1ベッド=30ルピー)という安宿があった。
 小柄でずんぐりしたバキスタン人の親爺さんが経営していて、南イエメンのアデンにある《メイダーン・ホテル》にも引けをとらないくらいの昼尚薄暗い木造の粗末な建物で、それでも時折、ヨーロッパからインドやネパールに向かうツーリスト・バスが停まったりしていて、僕が泊まった時は白馬が一匹繋がれていた。ドイツ人が乗って旅していたのが、何等かの都合でペシャワールで売ることとなったらしのだけど、戯れのロバは珍しくもないが、馬とは如何にもヨーロッパ人らしいと感心したものだった。平屋のそんなに大きくはない建物にもかかわらず、大型のツーリスト・バスなんかが入ってきた日には、収容能力を超え前庭で寝る者すら居て、トイレすら順番待ちしなければならず、客も疎らでのんびりが取り柄だったはずが甚だ迷惑なばかり。

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 光射す旧市街の狭い路地。大抵の旅行者がこの光景を撮りたがる。

 この宿には狭いキッチンが備わっていて、泊まり客も勝手に使えたのが重宝した。チャイを自分で作ったりする者もいたが、僕は暫く"日本的"食事から遠ざかっていたので、自分流のロシア風シチュー"ボルシチ"にはじめて挑戦してみた。野菜は八百屋で買い、肉はカバーブをそのまま使ってみた。も一人のバンコクのTTゲストハウスで一緒だった麦藁帽がトレードマークの日本人学生も加わって、キッチンのプロパンガス・コンロを独り占めして作ってみたのだけど、如何にも一味足りなかった。それでも久し振りのインド・パキスタン以外の料理だったので、二人とも嬉しそうに平らげた。尤も、ご相伴に預かった例のドイツ人は顔をしかめこそしなかったものの、終始小首を傾げ困惑気味ではあった。

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 新市街の裏通り。染色屋が大鍋で染色したりしている。

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サダル通り裏の交差点広場。第一次湾岸戦争時の反米ポスターが並んでいた。

 庭先の木にリスが何匹か居て、それを眺めているのも面白く、ピスタッチオを一個置いてリス達が食べるかどうか確かめようとしていたら、轟音とともに、バイクに分乗した一隊が現れた。ドイツ人らしかった。"モーテル"というだけあって、それを頼りにモーターサイクル関係が時折やって来るのだろう。考えてみたら、あまりバックパッカーの定宿なんかに、駐車場の備わったところなんて聞かず、ここは希有な存在なのだろう。ここに泊まったのは、1992年の秋で、《カイバル・ホテル》が風評通りなくなってしまったから滞在することになっただけだけど、時折入ってくる団体には、やはりパッカー達は閉口してしまう。親爺さんともう一人の彼の親戚らしい青年は悪くはないのだが。で、結局、以降は《カイバル・ホテル》の隣の《カニス・ホテル》が定宿となってしまった。

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 サダル通りの一つ奥の横町に屯するアフガン人売り子。バキ・ポリスに見つかると

 蹴散らされていた。

 ここの事務所には、親爺さんと青年二人用にしては多過ぎるぐらいの武器がしまってあって、ずらり並んだ黒光りした拳銃や自動小銃には圧倒されてしまった。ペシャワールって場所が如何に危うい位置にあるかって証拠なのだろうが、我々脳天気な貧乏個人旅行者には、一見、他の何処の町とも変わらぬ辺境の町でしかないように思えてしまう。ペシャワールに長居していたある日本人青年が、ちょっと前、アフガン人とパキ人達の小競り合いがあった折、武装したアフガン人達がロケット・ランチャー(RPG)を手に徘徊していたとその時の光景を想い出してか些かの昂奮混じりに語っていたのもその頃であった。

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 知る人ぞ知るアフガン・ハンデイークラフト屋の親父さん。

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