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2012年5月 5日 (土)

デンマークのSFホラーパロディー 《 パラサイトX 》

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 このデンマークの デンマークのSF=ホラー映画《 パラサイトX 》Vikaren(2007年)、一言で言えば、どのシーンもデティールも皆どこかで観た覚えのあるものばかりの寄せ木細工的なパロディーってところ。只、安っぽいコミカル物に堕すことなく、スピルバーグの《 宇宙戦争 》と相似したイントロ(とエピローグ)のナレーション後のプロローグが中々映像的にもSF=ホラーの蠱惑的な、未知との遭遇的な期待感を十分に抱かせるほどに面白く、続く学校シーンも、何しろ使われる言葉が、英語ともドイツ語とも違う語感のデンマーク語だと分かった後も、杳(よう)として馴染まぬ妙な違和感が相乗効果をあげ、北欧の小六の少年少女たちの姿態ともどもに異空間に遭遇でもしたかのような想持ちに囚われてしまう。異境をさまようブルー・バス的緊張と愉悦。
 子供たちが主人公のSF=ホラーって、近年ではスピルバークの十八番で、かつては今じゃすっかりクラッシック的金字塔としていぶし銀に輝く《 光る眼 》(1960年英)なんてものもあり、続編や90年代にはJ・カーペンターによってリメイクもされている。オリジナルはモノクロ(白黒)故に一層オドロオドロしさが際だった結構面白い小品であった。

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 空一面渦巻く暗雲の間から突如降り立ち巨大なサイロのある養鶏場にエイリアンが忍び寄るシーンに始まり、同じ養鶏場で寄生(パラサイト)された養鶏場の女房=女教師が文字通り粉砕され消滅し、光る羽虫=エイリアンに戻って逃げ去ってゆくシーンで終わる。その光る羽虫の空から降りてきた乗り物がバレー・ボール大の球体で、一見ステンレス・スチール風。これは、同じ少年が主人公だった米国映画《ファンタズム》の殺人ボールを彷彿とさせる。
 しかし、寄生された女教師、実は代用教師だが、彼女の正体を知った生徒たちが女教師を悪魔だエイリアンだと指弾したのを小児的妄想と断じた学校側と親たちが、生徒たちと女教師の関係を修復するために取り持った生徒たちも参加した父兄会の会場の無人の一角で、女教師の持参した球体から、何と文部大臣のダミーが作り出されたりもする機能も備えている。
 これだと、やはり、J・カーペンター監督の《 スターマン 》で、人工衛星ボイジャーが発した"ユア・ウェルカム"という言葉を真に受け地球を訪れたエイリアンたるジェフ・ブリッジスが手にしていた、掌から浮き上がり発光して飛び回ったりする小さな球体と相似で、人類に何らかの興味と期待を抱いて遙々やって来たエイリアンとい点でも同様。そもそも巨大に屹立したサイロってのも、《 エイリアン 》だったかどこかで似た映像を観た覚えがあるけど、逐一挙げていたら切りがない。

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 巨大なサイロのある養鶏場に侵入してきたエイリアンは人類の"愛"を求めて遙々地球を訪れたらしい。人類に独特の属性として備わった"愛"に好奇心を持ち、人間をサンプルとして拉致(アブダクション)するためにわざわざ訪れたのだ。それで選ばれたのが、件のデンマークのとある小学校の少年少女たちであった。"無垢"な存在としての子供たちなのか、成人や老人と等と同様にそれぞれの一つのカテゴリーとしての子供だったのかは定かでない。
 話はちょっとそれるが、所謂"愛"ってのはむしろ動物一般の属性というべき共属的親密性であって決して人類・人間に特有なものではなく、観念としての"愛"はキリスト教あたりから派生した独善的偽善的なイデオロギーに過ぎないというべきではなかろうか。人間って、喰い、排泄しそしてまぐわう本能的な姿をリアルに直視すれば、それこそ動物的な、余りにも動物的過ぎる存在であって、人間だけが本質的に他の動物・生物一般と乖離した遙かに高尚な存在だなんてどこから出てくるのだろう。何故、他の動物と同じ一動物種じゃ悪いのだろうか。

 女教師ウーラ役のパプリカ・スティーン、八面六臂の熱演だけど、要は、寄生され変容したウーラと、最近母親が事故で亡くなってその死を受け入れられず鬱々とした日々を送っていた少年カールとの一騎打ち。これも頻(よ)く使われ手法だが、その傷心したカールの心の葛藤・克服(プロセス)劇を基本軸に据えドラマ全体が展開されてゆく。つまり、ようやく辿り着いた結末の直後、   "本当は、すべては傷心の少年カールの作り出した妄想でした!"   って、"どんでん返し"あるいは"煙に巻く"式の青天の霹靂的反転が仕掛けられているって寸法だけど、実際にはそれはなく、もっぱら伏線として秘されたまま。つまり、制作者の都合でどうにも変えられる程度の緊密度。この映画、全体的にゆるく、《 光る眼 》のような緊張度は薄い。またコミカル風なのであろうが、今ひとつ面白味ってものが感じられない。映像的には、とくにプロローグは、悪くはないのだけど。

         
監督  オーレ・ボールネダル 
脚本  オーレ・ボールネダル 
   ヘンリク・プリップ 
撮影  ダン・ローストセン
                    2007年作品(デンマーク)

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