«  異星の接近とゆらぎ《アナザー・プラネット》 | トップページ | 《プロメテウス 3D》神話的逆説 »

2012年8月24日 (金)

 《 呪怨 2 》 ニッポン・ホラーの不滅の金字塔?

Junon2

嘗て米国版《 リング 》を観てマアマアのレベルだったので、オリジナルの日本版を観てみたら、案の定の"ニッポンお化け映画"の類だったので、やっぱりなと亡くなった伊丹十三が、ともかく日本映画のメーキャップのお粗末さに言及していたのを思い出しながら暗澹としたものだった。
 ところが去年だったか、"YOU TUBE"で、タイのロック歌手マイの主演した、自分の意に染まぬ人間を片っ端から屠り自分の屋台の麺の具にして客に供していた正に"タイ女"の典型あるいは究極って意味でのハイパー・リアリズムな空恐ろしいホラー映画、外国仕様タイトル《ミート・グラインダー 》、タイでのオリジナル・タイトルはズバリ《 人肉クォッテイヨウ(米麺)》を探していて偶然見つけた《 ミッドナイト・ミート・トレイン 》、これが一風変わった些かの哀愁すら漂わせたスプラッター・ホラーだった。今じゃお気に入りのホラー作品の一つでもあって、これが実は日本人監督が撮ったものとは後日知ることとなって、最近の日本のホラー事情も大部様変わりしてきたのだろう、と今頃になって初めて、レンタル屋の日本映画のホラーの棚から一本有名な作品を借りてみた。本来なら、《 ミッドナイト・ミート・トレイン 》の監督・北村龍平のを借りるべきだったのが、名前を忘れてしまって、清水崇のこの有名な作品を手に取った次第。 

Junon2_1
 
 只、この《 呪怨2 》は2003年の作品ってことで、《 リング 》とそんなに時間的な隔たりがなく、冒頭の、のりピーと婚約者の乗った車が猫を轢き、のりピーが運転席から車体の底部越しに轢かれた猫の方を覗くシーンで、さっそく、猫の死骸のそばに駆けよってゆく死霊(少年)が登場するのだけれど、これが走り寄り方が、ヒョコヒョコとして、たとえ小児の歩きだからっておよそ"恐怖"の一片だに窺えない代物。幾らなんでも、それらしい演出ってものがあるだろう!と、そのシーンでまず絶句させられてしまった。一昔前の、低予算の中国のホラー映画じゃあるまいし。おまけに、国産ホラーといえばもうこれしか無いみたいに、べったりと実に平板な白塗り。気分はすっかり学芸会? 暗闇に白塗りしたのがうごめいたからって、終戦直後ぐらいならまだしも、誰が怖がるのだろう。尤も、これが汎アジア的な感性であるのは、ノンシィー・ニミブットの《 ナンナーク 》以前のタイ・ホラーがブルーやグリーン一色の塗りたくりなのを見ると了解できる。確かに、ビデオと違って、暗い映画館のスクリーンでは、それなりに迫力もあり音響効果も相乗して"怖く"は思えるのだろうが、しかし、それとて程度問題だ。ハリウッドの子供の幽霊・死霊・屍鬼の類のリアルなメーキャップと較ぶべくもない。 
 それに、あの小児霊って、どう見ても"座敷わらし"のイメージでしかない。"座敷わらし"って、東北じゃあ、むしろ"精霊"のイメージが強く、陰湿&悪辣の負的ニュアンスじゃなく、幸運を運んでくるキューピット的存在という。だから、どう転んでも"恐怖"を生じさせる質のものじやない。さりとて、そんなイメージを、何としても"怖い"存在に見せかけようとしているようには到底みえず、ひたすらおざなりな演出があるばかり。かえって、そこに何か別様の意味、隠されたニュアンスでも仕掛けられているのかと勘ぐりたくなってくる。

Juon2_ab
 
 後で出てくる女の白塗り死霊も然り。《 リング 》の小夜子の白塗り・垂れ下がった長い黒髪と同様、"怪談"物の"お岩"以来のトラデショナルな美意識と意匠ってとこなのかも知れないが、舞踏集団"山海塾"やなんかの嬰児的奇形児的しぐさを彷彿とさせるような"不気味さ"の演出もあるものの 、"恐怖"的演出とはほど遠い。むしろ、海外、とりわけ欧米あたりでは、嬰児的奇形的イメージと仕草は、"原爆"や"ミナマタ"を象徴するようなネガティヴなニュアンスとして感受される可能性も高く、本来の( ハリウッド・ホラー映画的な )恐怖とは別様の"恐怖"を抱くのかも知れない。
 同じ頃の、タイのホラー、その大半は日本のと同様(オキサイド&ダニー・パン兄弟のも含めて)"駄作"だけど、《 ナンナーク 》で主演したサーイ・チュリンプラの病院を舞台にした《 ヒエン 》なんか"ハリウッド" ライクな技術・効果を駆使しそれなりによく出来ていて感心したものだ。

 主演が"のりピー"こと酒井法子で、のりピーの初映画主演作品とも記してあってあえて《 呪怨1 》ではなく《 呪怨2 》を選んでみた。勿論期待はしてなかったが、多少の興味をもって観させて貰った。当たり障りのない月並みな演技ってとこだろうが、それにしても、たかだか合成麻薬やらコカインを使っていた一消費者に過ぎぬのりピーを、あたかも麻薬の大元たる"暴力団"以上に、あるいはそれを長年にわたって殆ど野放し状態に許してきた、どう贔屓目に見ても馴れあっているとしか思えない警察や麻薬課の連中以上に、下劣・悪辣な存在とばかり、正に"官民"挙げて後世に残るような一大バッシングしてきた当時の末期自民党権力の、ためにする"一大パフオーマンス"の、何とも哀れなスケープ・ゴードに陥れられたのりピーの不運。この底なしの官民挙げての魔女狩りシステムこそ、"ニッポン・ホラー"そのものだろう。考えてみただけで震撼としてくる。灼熱の三十度世界におけるこの"寒々とした現実"こそが、正真正銘の"ホラー"ってわけだ。

 さすがにこの《 呪怨2 》だけではと思って、参考のために《 輪廻 》も観てみた。《 呪怨2 》よりは凝っていて、幾らかは増しなのだろうが、優香が一人健闘していたものの、やっぱり詰まらない。個人的に"劇中劇"の類が白けさせられるので好きではないのだが、それを除外してもテレビのホラー劇って感じしかしない。ふと、相似な演出の中国ホラー《寒村客桟 》を思い出してしまった。レンタル料百円であっても、その手間と時間をドブ捨てした喪失感は誰も補償してくれない。

|

«  異星の接近とゆらぎ《アナザー・プラネット》 | トップページ | 《プロメテウス 3D》神話的逆説 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

映画・テレビ」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事