異星の接近とゆらぎ《アナザー・プラネット》
今年の後半に太陽系最果ての惑星ニビルが地球に異常接近するなんてセンセーショナルでおどろおどろしい終末論的な破滅的陰鬱漂う怪しげな憶測が一部で騒がれてはいるが、ある日、突如夜空に姿を現し、日に日に地球に接近してくる惑星、そしてそれが地球に、その住民達すらそっくり相似なものだとしたら・・・
基本的にはSF(サイエンス・フィクション)なのだろう。しかし、地球と同等な大きさの惑星が接近してくれば、実際には引力ということを考えただけでも、月は言うまでもなく、地球上は天変地異的な大災害・大災厄が多発するのは言をまたない。で、SFというより幻想的というのが至当とも思えるけれど、さにあらず、この地球と相似の惑星は、そんな引力的変動を生じさせない組成だったり、あるいはそんな装置が人為的に設置されているというすこぶるSF的な仕掛けも成り立ち得なくはない。(只、その場合、この映画の基本ともいうべき、パラレル・ワールドあるいは"反-物質"・"反-世界"的な構造に些かそぐわない。)
むしろ、何らかの理由で、本来の軌道を外れ異常接近してきたいわゆる"反=地球"なのかも知れない。常に太陽の真反対の軌道に位置していて、我々の地球からは決して見ることの出来ないもう一つの地球って奴だ。太陽系の軌道って、かなり微妙な力関係で成り立っている早い話随分と危うい代物らしい。ちょっとした偶発的作用によって、軌道が変わり、それがゆくゆくは他の惑星との異常接近や衝突に至ったりする可能性は常にあるという。

この映画、静的で、メランコリックな雰囲気に包まれていて、これは未見だけど、同時期に公開(国外での話)されたデンマーク映画《メランコリア》に基本的モチーフと雰囲気が似ている。こっちは他の惑星が現れ、次第に地球に接近し、ついには衝突の危機に・・・という筋立てらしいが、ひょっとしてどっちかがいわゆる"対抗"映画なのかも知れない。当然、予算をかけてない方のが対抗の側だろう。
ある日、俊才女子大生ローダは、車の走行中、ふと頭上に浮かんだ惑星の幻想的な姿に見とれ、親子三人乗った車に激しく衝突してしまった。ローダも被害者親子の父親も九死に一生を得、数年後漸くローダは刑務所から出所する。母子を殺してしまったことに自責の念に囚われ、前途洋々としていた学生生活に再び戻ることを拒絶し、しがない高校の掃除婦の仕事に就く。誰とも話をしなくてもすむからだ。同僚は目の不自由な老人一人。何も視たくないと、世を厭って自らの視力を奪ったのだった。それでもローダには親近感を抱いていたのが、更に今度は両の耳の聴力すら破棄してしまう。オディプス王の神話の如く。
やがて、一人生き残った父親ジョンの家を訪れ謝罪しようとするが、果たせず、掃除会社の派遣員と偽って、突如奪われた妻と息子への想いが断ち切れず鬱々とした日々を送っていたジョンの部屋の掃除を続けることとなる。次第に、ジョンの暗澹とした心に淡い恋情が芽生え、とうとう結ばれてしまう。が、ローダは、ついに真実を告げ、ジョンは呆然とし、罵声を浴びせる。
「とっとと失せろ!」
予期した反応にローダは肯く。そして、こう言って一枚のチケットをジョンの部屋に残して去ってゆく。ローダはもう一つの地球へ向かうロケットに乗れるキャンペーンに応募し、彼女の置かれた立場を素直に認めた応募動機が、主催者側に評価されて搭乗チケットが送られてきたのであった。
「もう一つの地球が地球側に発見され意識された瞬間から、もう一つの地球では変容が始まったみたい。ひょっとして、二人(亡くなった妻子)に会えるかも・・・」
後日、ローダはテレビで、ジョンがもう一つの地球へ向かうロケットに乗り込む実況を観、とりあえずの安堵の念をなで下ろす。ふと外出時に向こうを見やると、何処かで見覚えのある姿が見えた。もう一人のローダであった。

その上っ面は相似であっても、その内側は真逆という反-物質、反-世界的原理だと、ローダに"親近感を覚える"同僚の老人もそうだけど、ローダによって自身の家族を殺されたジョンもローダとはマイナスとプラスの真逆な性向。真逆な電荷故に"引き合う"のだろう。そしてジョンと結ばれ、炸裂し、ゼロになる。その観念性を、さほど剥き出しにせずに、静的でメランコリックな雰囲気の内に溶解してしまっている。
それにしても、最後に忽然と姿を現したもう一人のローダ、定式的にはローダとは逆の性向(電荷)を帯びているのだろうが、一端変容し始じめた"ゆらぎ"の最中、果たしてプラス・マイナスどちらの性向を伏しているのだろうか。その姿は、些かの危うさを漂わせ、ローダの意表を衝く目論見すら秘めているようにも見えるのだが。
監督 マイケル・ケイヒル
脚本 マイケル・ケイヒル&ブリット・マーリング
撮影
音楽
ローダ ブリット・マーリング
ジョン ウイリアム・メイボーザー
ジェフリー ロビン・ロード・テイラー
制作 2011年(米国)
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