プノンペンのパッカー御用達 "キャピトル"レストラン

( キャピトル・ゲストハウスのバルコニーから見た定番光景。板塀で囲まれたまだ原っぱのオロシー・マーケット建設予定地 )
《 キャピトル・ゲストハウス 》と同じくらいに有名なのが、表通りに面して併設された《 キャピトル・レストラン 》で、キャピトルの泊まり客以外のパッカーたちや時折一般のカンボジア人も利用していた定番の店。
大抵店の周囲にモトサイ(バイク・タクシー)の運転手たちが屯し、外人パッカーたちからぼろうと虎視眈々と狙いをつけ待ちかまえている。だから、ぼくは、《 キャピ2 》側の角当たりに停まっているモトサイを使うようにしていた。彼らは別に外人狙いではないので、先ず現地民が腰抜かすような法外な料金を吹っかけたりしてこないからで、そこから空港まで大きなリュック付きで1ドルにも満たないリエル払いで済んだこともある。
この店に英字日刊紙《カンボジアン・デイリー》を売りに来ていた丸顔の少年が、やがて新聞売りを卒業して、跡を彼にそっくりの妹に任せ、モトサイの運転手になってたけど、さすが《 キャピトル・レストラン 》の傍に屯した運転手たちの群れに混じったりはしてなかったようだ。けど、モトサイやシクロ( 座席が前にあるサイクル・リキシャ )なんてもうそれしかないみたいに街角に溢れていて儲けも知れてて、食べるのがやっとってところだろう。当時は、シクロの運転手たち、夜になると家族と一緒に路上にハンモックなんかを吊って寝てたりする者も少なくなかったんだけど、最近はどうなんだろう。
そういえば、同じ新聞売りに随分と小さな男の子がいて、それがけっこう可愛い顔立ちしてて、ファラン(白人)はじめ外人女たちに可愛がられチヤホヤされてたのが、何時の間にやら、新聞すら手にしなくなって、ニヤニヤしながら、女たちの関心を買うようになっていた。それが何を意味するのか、ぼくは決定的なことは言えないけど、どうもそっちで稼ごうとするようになっていた可能性が窺えた。
外人女たちにとっては小遣いぐらいのつもりで遣ったものであっても、彼らにしてみればそこら辺の大人が一日中汗して働いて得るもの以上の額なんだから、新聞売りなんて割に合わない商売よりもそっちの方を自然選んでしまうのが人の性ってものだろうし、合理的でもあるだろう。ところが、十歳くらいになると、店の中の少し前側に佇み、店の中をゆっくり見廻して今度は男たちを物色するようになってしまった。これには些かウンザリさせられてしまった。なまじ視線なんか会ったりするとほくそ笑まれ、傍に寄って来られかねないし、他客(はた)からその手の趣味でもあるように決めつけられかねないからだ。端っこの決まった席に陣取ったこの店の経営者も苦虫をかみつぶした表情でかの少年を睨めつけていて、偶に追い出したりすることもあった。
今は少しは変わったのか知れないけど、カンボジア当局は、女(娘)と違って、少年の買春行為には可成り厳しい。男尊女卑的な流れなのだろうが、新聞に載ったりするのは、大抵少年をホテルに連れ込んだファラン( これは定番 )が通報され逮捕されたって記事ばかり。それもかなり重罪が科せられる犯罪として。
隣国タイには山ほど居るらしいニューハーフ的な中・高生の男子、ぼくもマーブンクロンなんかでよくお目にかかったけど、プノンペンでも一度映画館でクラスメートの女子高生の中に混じったその手の男子高生を目撃したことがあって、あながち、庶民の間では必ずしもそんな同性愛的なものに対して一様に厳しいという訳でもないようだ。現在のカンボジアもラオスなんかと同様、文化的にタイの影響を、とりわけ若い世代はテレビ・映画から受けやすいこともあって、早晩、否、もう当時から十年以上過ぎていることもあって、とっくに似たり寄ったりの状況になってるのかも知れない。日本ではどうなのだろう。テレビやなんかでの露出度に反して、意外と陰に隠れたままの陰々鬱々って感じもしなくはないのだが。

( 出来て間もないオロシー・マーケット。中はまだコンクリ=セメントの匂いが強く、その粉塵が舞っていて息苦しくて長居はできなかった。)
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