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2014年12月13日 (土)

ダライ・ラマ的ゆらぎ

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  ( ダライ・ラマ 13世 )

 ひょんなことから春秋社の出している無料の小冊子《 春秋 》11月号を手にすることになった。
 大手の出版社が毎月書店の無料出版物コーナーに配布している種類のもので、以前は稀に面白い物があって、有料の雑誌なんかよりよっぽど気が利いてると小さな活字に見入ったものだったけど、最近はさっぱり目にすることもなくなっていた。
 春秋社は、文藝春秋社とは全然別個の出版社で、戦前から思想・宗教関係の出版を主に扱ってきてて、かつては古本屋の棚によく見かけた茶色に朽ちた《 世界大思想全集 》なんかで僕も見知っていた。ちょっと前に紹介した死刑囚・古田大次郎の《 死の懺悔 》もここが手がけていた。

 “ 特集・ダライ・ラマ法王と日本 ”ってことで些か興味をもってページを繰ってみた。 確かにダライ・ラマ頻繁に来日してる。けどダライ・ラマと日本って、せいぜいオーム真理教=尊師・麻原彰晃との関係ぐらいしか頭に浮かばない。
 が、現在の第十四世ダライ・ラマの一つ前の第十三世とは、つまり戦前、浄土真宗大谷派宗主・大谷光瑞や多田等観、青木文教等が、大国の利害と思惑に翻弄され変転著しいチベット事情の最中、それなりにパイプを保ち、相互に行き来があったという。彼の死とともに途絶えてしまったらしい。


 現在の第十四世は、日本国内( 世界中の )の様々ないわゆる要職にある人々と対話・会談をしつづけているようだ。それはそれで、チベット亡命政府という特殊な位置故に分からないでもないが、たとえば、米大統領( パパ )ブッシュと一緒に映った写真なんかを流布させるってのはちょっと勘弁して欲しい。インド在住のチベット系の店の壁なんかに恭しく飾られたりしていて思わず自分の目を疑ってしまった。あれじゃ、CIA=WACL(世界反共連盟)のおぞましい脈絡をこれ見よがしに明示するようなものだ。
 ベトナム戦争の頃、米国=ゴ・ジンジェム南ベトナム政府の圧政・弾圧に抗議した同じ仏教僧のベトナム人僧侶たちの焼身自殺をどんな眼差しで見遣っていたのか猜疑の念が鬱勃とあたまをもたげてしまう。
 これだけでも第十四世の周りにはロクなのが居ないってことだけは分かってしまう。下手するとダライ・ラマの取り巻きって、英米権力の傀儡ばかりで構成されているのじゃないかとさえ思えてしまう。最初はそうでなくても、長い年月がそれを可能にしてしまう。


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( ダライ・ラマ 14世 )


 先だっての北京オリンピックの際のダライ・ラマの北京オリンピック支持発言と一部の亡命チベット人たちの北京オリンピック・ボイコット活動の乖離、ひょっとしてあるいは表裏二段構えの作戦だった可能性は今は置くとして、ダライ・ラマの相対的影響力の低下が指摘されて久しい。
 頑として譲ろうとしない中国政府の態度と老いた亡命チベット人たちの帰国願望故なのかチベツト独立からチベットの“ 自治権 ”要求への方針転換に、若者や強硬論派が怒っての強行だったのだろう。只、問題は、その強行派・過激派に欧米あるいは別の国の力がおよびあるいは操っているっているのではという猜疑と懸念だ。眼前の中国だけが敵って訳じゃない。それはチベットがこの百年近く蒙ってきたものだし、彼等自身が一番よく知っているはずのもの。否、それは当の中国自身もそうだったはず。


 それにしても、第十四世ダライ・ラマ、自分の老い先を危惧しての断行なのか、数年前にダライ・ラマの絶対性の基盤だった祭政一致を崩し、政治的権能を放棄し、宗教的権威としてのみのダライ・ラマ制を継続してゆくことを選択したのにつづき、今度はダライ・ラマ制の根幹たる伝統的な後継者選び《 輪廻転生制度 》を廃止する方向に向かった。ブログ・ニュースの僅かな記事から推測すると、中国政府の政策に対する思惑も感じられなくもないけれど、そんな状況対応的な泡沫策とするには余りに根本的に過ぎる。かつて《 シャンバラ 》すら方便的なモノといわんばかりだったダライ・ラマからすれば、二十一世紀にもなって、火星探査すら現実のものとなってる御時世に、“ 生まれ変わり ”捜しはいよいよ白々しいものになってしまって、ここいらで五世紀にもわたる旧き良き時代にピリオドをうつ英断を下したのだろう。けど、これは最終的な決定なのだろうか。もう一人の、中国側ともいわれるパンチェン・ラマは如何するのだろう。唯物論者たる中国共産党の側が依然として“ 輪廻転生・生まれ変わり ”制を堅持するのだろうか。チベット人民の宗教的伝統の維持の口実の下に。


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