湾岸伝説 悪魔の起源 : ジン

最近、ますます世界的にホットな火薬庫然としてきているのもあってイスラム諸国=中東を舞台にした映画がレンタル屋の棚に並ぶようになった。
サウジアラビアの《 少女は自転車に乗って 》でも、たとえ少女といえども、外で男子と親しくしていたりすると世間から厳しく指弾されてしまう。男女は画然と区別される世界。 インドなんかでもそうらしいが、国外で育ち生活している女たちって、本国に戻るってのは余り気の進まないようだ。住んでいるのが欧米(日)先進国だったら、宗教的戒律も自ずからゆるく薄まってしまっても特に誰が咎め立てする訳でもなく、せいぜい頑固な年寄りが意固地な指弾を繰り返すくらいのものだろう。つまり、本国と違ってかなりの“ 自由 ”を享受しているからだろう。
かつては、イスラム世界は、文化の華咲く一大文明国として薄暗いヨーロッパに文明の光を注ぎ、さまざまな影響を及ぼしつづけてきたのが、いつ頃からか次第に衰退してゆき凋落してしまった。現在じゃすっかり後進性=封建的圧政の権化と化して久しい。
UAE( アラブ首長国連邦 )って、広大な砂漠世界=アラビア半島の、対岸にイランが控える湾岸の国。古(いにしえ)は、ラクダに乗った王子様、アラビアン・ナイト、空飛ぶ絨毯や魔法のランプ等のロマンチックな幻想譚の宝庫のような秘境であったのが、二つの大戦や石油の発見ですっかり幻想のベールは色褪せ、即物的に石油とイスラムだけが世界注視のホット・エリアとして揺らぐばかり。
ニューヨーク在住のあるUAE夫婦カップル、なかなかうだつの上がらなかった夫が、故国での仕事で心機一転しようと、自分の仕事が順調にいっていたにもかかわらずがんじがらめの旧弊世界に舞い戻らなければならない事を露骨にいやがる嫁を無理矢理説き伏せ、故国UAEに戻るところから物語が始まる。
舞台は時間の経過とともに靄が立ちこめ始め濛々と視界も定かでなくなってしまうアスファルト路を迎えに来てくれた家族の車で、新しく就職した企業が用意してくれた部屋のある建物に向かう・・・アラビック風のクラシックな内装の豪華な高層マンション“ ラクシャリー・マリーナ・タワー ”、しかし、これはかつて砂漠の悪霊・ジンがらみで呪われた建物が魔術によって現代的な意匠の高層マンションに見せかけられているのか、件の建物の跡に建てられた実在の建物なのか些か曖昧な代物。すべては濛々と立ちこめた靄によって仮構された幻影かも知れず、それが晴れると同時に一切が元の砂漠に戻ってしまう不確かさ。
西側から観た現代の一片の砂漠の幻影譚。
《 オーメン 》と《 シャイニング 》を足して二で割った感じの作りだけど、イスラム社会という未知性と制約に躓いてしまい、思わせぶりとジンの黒い影だけで恐怖空間を演出しようとしてすべってしまったってところだろうか。雰囲気は決して悪くはないだけに残念。
たちこめる靄ってなかなかに幻想的な設定で、神秘めかしたホラー映画にはもってこいのシチュエーション設定。いわんや、砂漠の国=アラビアン・ナイトの世界であってみれば。只、主人公カップルが外人じゃなく同国人ってとこでもう一つ盛り上がりに欠けているのかも知れない。未知の領域・世界に分け入ったカップルってことでスリリングさが増し、観客の感情移入もし易くなってくるからだ。
監督 トビー・フーパー
キャスト : カリッド・ライト、ラザーヌ・ジヤマル、アイーシャ・ハート
制作・UAE( アラブ首長国連邦 )2013年
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