街角ヒーロー 《 バードマン 》

他にこれといったものがなかったというのもあるが、評判の《 バードマン 》を観てみた。
そもそも、小便臭い横丁・路地裏のチンピラ相手に《 正義 》を振りかざす“ アメリカン・コミック・ヒーロー ”なんて、丁度日本で子供の頃さんざん観せられ続けてきた似たり寄ったりのテレビ・ヒーロー物と同様で、中学生になった途端、スッと迷妄から醒め、その子供だましのヒーロー=似非正義と矮小さをなじるようになって以来、未だに好きじゃないんだけど、そのなれの果てのってところのシニカルな一点で、観てみようという気になった。
二回目上映で広い客席に観客はチラホラ。まあ、こんなものか。派手なアクションなんかを期待する客が集まるような類の映画じゃない。
と、のっけから響き渡るきれの良いドラム=パーカッションの音が小気味好い。
炸裂でもなく、ありきたりのロック風でもない繊細な抑制されたジャズ・パーカッション。・・・ミルフォード・グレイブスだともっと豊饒に紡ぎ出すのだろうが。些末なことかも知れないけど、このドラム・プレイヤーが画面に出る数回の場面・・・どうもおざなり。このシーンもっとリアルに作って欲しかった。只、この映画、途切れのない一回の長廻し撮影風が売りでもあるようで、それだと次から次へと流れてゆく場面と同時進行してゆくパーカッションの音とドラム・プレイヤーの叩き出す動作を合わせるのが技術的にますます煩雑になってしまう・・・仕方のないことなんだろうが。
かつてハリウッド映画《 バードマン 》で主演して莫大な富を得たリーガン、その後はさっぱりで、とうとう起死回生の演劇=“ ブロードウェイ ”進出に賭けることに。舞台はブロードウェイのある劇場とその近辺。
何奴も此奴も好きなことばかり言いやがって !・・・リーガンは本公演前のプレビュー公演にようやく辿り着いた頃にはすっかり嫌気がさし公演中止をすら決意する。それでも、何とか事のなりゆきで本公演までこぎ着ける・・・
要所要所で突然派手な翼すらそなえたバード・マンのかっこうしたごっつい体躯の男が姿を現し励ましたりコケにしたりする。この不可解な存在、クエンティン・タランティーノが脚本を書いた《 トゥルー・ロマンス 》のE・プレスリーを模したような風体の男も似たような存在だった。そこでは主人公クラレンスがプレスリー・ファンだったんだろうが、この映画じゃ、作者的にはリーガンの分身、追い詰められたリーガンの強迫神経症的産物ってところのようだ。《 トゥルー・ロマンス 》のE・プレスリーもけっこう派手だったが、このバード・マンいよいよ派手過ぎて恥ずかしいくらい。最後には、妄想が妄想でなくなってしまう矛盾的自己同一的存在となってしまう。
予想してたものとちょっと異なった作品だったけど、その演劇的にひねった世界は決して悪くはないなと思った。
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