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2015年6月20日 (土)

世の果ての不死の旅 《 アフリクテッド 》  

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 特に秀作って訳でも、面白いって訳でもないけど、バックパッカー的体裁をとっているつてところで一種のロード・ムービーとして興味を惹いた。

 ふとある日、惟(おも)うところあって、デレクは何年も務めていたIT企業を辞め、世界を旅することを決意する。   
 若年性クモ膜下出血をひき起こし易い先天性の脳動性脈奇形という難病を抱えていたデレク、絶望と不安故にか、そんなものに縛られた“平穏無事”な人生なんてまっぴらごめんとむしろ払拭し、世界の果てまでを自身の脳裏に焼き付けておこうと投企した。畢竟(ひっきょう)それは所謂自分探しの旅。
 自分探しの旅なんてフレーズ、久し振りに脳裏を過ぎった。
 確かに横尾忠則のインド紀行以来、バックパッカーたちって多かれ少なかれ、少なくとも初発はそんなものだったんだろう。やがてやれ旅行写真家だ旅行作家だと、藤原新也や沢木耕太郎の本片手にアジア行を決め込んだ若者たちがアジア中に溢れかえることになってからも。


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デレクとクリス。 

 幼なじみのクリスは映画関係の仕事に従事していて、一緒に旅する運びとなった。普通の旅と違うのは、クリスが撮影用のカメラを何台も駆使しながら、旅の先々で撮った動画を彼らのブログ《 ends of the earth 》にアップしてゆくという凝った行き方。昨今旅先でブログに記事や画像・映像をアップするなんて常道だが。まあ、実際は、それを口実にしての流行のPOV( Point of View shot: 主観ショット )、つまり手持ちビデオ撮影映像。
  
 ロード・ムービー=ホラーなんて図式が出来てもう久しい。
 確かに、普通の人々、青年たちが、旅先で、ひょんなことから、想像だにしない体験=辛酸を極めたあるいは身の毛もよだつ恐怖の坩堝に叩き込まれてしまうなんて、新聞やテレビのニュースで誰もがさんざん見聞きしてきた定番。
 映画じゃ、それをよりドラマチックに演出し恐怖を掻き立てて一本のホラー作品に作り上げるのだけど、見知らぬ町に辿りつき、そこで怪しげな人物や出来事に遭遇してゆくってのは、やはり、ホラーやミステリーの基本。“事件”はごめんだけど、“遭遇”の妙味のご相伴にはありつきたいってのが、大半の旅行者・バックパッカーたちの性向。 

  ところが、デレクのこのまことしやかな下手をすれば死に至ってしまう持病、やがて遭遇してしまう予期せぬ出来事から始まる不可解な疫病あるいは変異を韜晦し紛飾するためのあくまで“振り”に過ぎなかった。
 旅立って七日目のパリで行き会ったオードリーという女の部屋に淡い期待を抱いて縺れ込んだはいいが、いきなり打撃を喰らって昏倒。目覚めると身体のあっちこっちに傷跡が・・・。
つまり、そのオードリーなる女は実は吸血鬼=バンパイアーで、デレクはそれ以来様々な奇妙な身的現象と変容に悩まされることになる。あげく、幼なじみのクリスにまで手を下し殺してしまう。
 すがる思いでパリに戻り、オードリーを捜し出して何とか解決策を得ようとするのだが、既に国際手配されていたデレクにスワットが銃弾の雨を降らせてきた。すっかり変容していたデレク、彼らを一人一人屠ってゆく。丁度、同じPOVスタイルのスペイン・ホラー《 REC2 》で主役のスワットたちがバンパイアーに銃弾を浴びせるのと真逆。設定もヨーロッパで旅の最初の国がスペイン。
 観てると様々なホラー映画が浮かんできた。
  《 28日後 》や、世界を彷徨うバンパイヤーってところで《 モールス ( ぼくのエリ 200歳の少女 )》も。《 モールス 》では吸血鬼少女エリの世話役の疲れた初老の男が哀愁を漂わせ、それは又北村龍平監督作品《 ミッドナイト・ミート・トレイン》のエイリアンの餌として深夜地下鉄で乗客を日毎屠りエイリアンが食べやすいようにと車内で食肉業者宜しく解体までしてくれる心細やかなもてなしの心をもった男の悲哀に連なってゆくのだけど、この《 アフリクテッド 》の世話役たるクリスには自身の血まで差し出したその献身ぶりとは裏腹に杳として哀愁めいたものは感じられない。それは専ら映画自体の作りが今一だったせいだろう。
 それでも、後半のスワットとの応酬のシーンは、手持ちビデオカメラの特性を巧く使ってそれらしく見せ、それなりに面白く観れ、決して駄作って訳じゃない。


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 デレクとクリス、主役でもあると同時に監督でもあって、本名らしい。
 デレクは中国系で、面長な顔を縦横に歪め実に表情豊か。
  《 ミッドナイト・エキスプレス 》じゃないけど、本当、旅先じゃいつ何時どんな事件に巻き込まれるか分かったものではない。デレクにはトンだラッキーセブンで、クリスも非業の死をとげ、デレクは吸血鬼となり、不死という不幸に見舞われることに。
 ショットガンで自身の後頭部を吹き飛ばしてもすぐに蘇生し、さりとて血を吸わなければ禁断症状に苦しみ心身ともに爆発し巷の人間たちを見境無く殺戮しまくってしまう。
 正に受苦。
 それでも、やがて、人を殺めることの罪の意識も、量が質を作り出すように次第に薄れてゆき、むしろ技巧的効率性に病み、殺戮と吸血に愉悦をすら覚えかねなくなってゆくのだろう。そしてエリの如く、世界の果てまで当て処もなく彷徨いつづけ、辿り着いた何処かで200歳の誕生日を迎えるに違いない。

 監督・主演 デレク・リー、クリス・プラウズ
 撮影    ノーム・リ
 制作   2014年 ( カナダ・米国合作 )


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