お気に入りの一枚 《 ダッラのアフガン人 》
前世紀九十年代初頭、パキスタンは北西辺境州( 2010年に、カイバル・パクトゥンクワ州に変名 )の州都・ペシャワールの郊外にある小さな銃の町・ダッラを訪れた。
この写真の時は二回目で、泊まっていた《 カイバル・ホテル 》の連中とG・T・Sバスに乗って行った。この地域は所謂トライバル・テリトリー。パキスタンの公権力の力が容易に及ばないパシュトン族(パターン人)自治区ってことで、銃器だけじゃなく、これはダッラじゃないが麻薬なんかも店舗の棚に普通に並べているのを見かけたことがあり、一同唖然としてしまったこともある。その分、危険をともなう場合もあるようだ。
国境を越えれば向こうはアフガニスタン。
パシュトンは国境を挟んだ向こう側にも住んでいて、元々は一緒だったのを英国が勝手に線引きしてしまったために分かれたに過ぎず、行き来は殆ど自在のようで、写真の彼らも、国境を越えてやって来たアフガン・パシュトンたち。
何しろ面構えが好い。
皆そろいも揃って一癖ありそうな男ばかり。
でも気はいい連中のようで、右端の黒ブルゾンのオヤジがリーダーっぽく、カメラを向けると胸を張ってみせた。彼らも銃を買いに来たのだろう。尤も、この頃はまだソ連軍がアフガンに駐留していた頃で、イスラム解放勢力・ムジャヒディンが政府軍・ソ連軍を相手に戦っていて、ダッラはそもそもが近代的な工場で大量生産されるものとは相違して、小さな工房のマニファクチャー的生産。徒弟制なのか小さな少年も油まみれになって鉄ヤスリをかけてたりしていた。だから、欧米の最新式の銃なんて殆ど無縁の、ソ連・中国なんかの自動小銃カラシニコフやごっつい作りの拳銃トカレフのコピーばかりが店頭に並んでいた。
勿論店によっては機関銃やロケット・ランチャー、バズーカすら外人客に試射を勧めたりしてたけど、弾丸がバカ高。そして外人客とみれば、シヤープペンに見間違えるペンシル・ガンを買わせようとする。一応弾丸も装填されていて、殺傷能力もあるのだろうが、中には興味本位と護身用に買う物好きもいたらしい。大抵のバックパッカーはわざわざトラブルの元を金を出してまで入手しようとはしない。
カラシニコフは実弾一発3ルピー、拳銃の方が一発6ルピーと割高。
世間的常識とは逆。恐らく少年がぼくらが試射し飛び跳ねて地面に転がったカラシニコフの薬莢を必ず捜し持って帰っていたので、何度も使い廻しているのだろう。
ぼくもカラシニコフとベレッタ風をそれぞれ十発づつ撃ってみた。
さすがに自動小銃のカラシニコフは反動が大きかったけど、拳銃ベレッタの方は、店員が途中でマガジン弾倉を交換し、「 ブラッシュ!」とか言ってて何のことか分からず引金をひくと、一発づつのはずが続けて二発目も発射し、「 やばい!暴発・・・」と、瞬間、以前ダッラで英国人青年が拳銃暴発で自分の手首を吹っ飛ばしたって話を思い出し、思わず焦ってしまったら、更に続けて弾が飛んでいった。
結局難なくすんだけど、傍で若い店員がニヤニヤ、びっくりしたボクの顔をみて笑っていた。
引金を一回ひくと何発か続けて弾丸が飛び出す連発機能を加えたカスタム銃だったのだ。実用的には意味をなさないのは言をまたないが、職人の遊び心的産物って奴なのか。知らなかったぼくは本当に肝を冷してしまった。
それでも、貧乏旅行者には、安価で、国内では先ず撃つことのできぬ銃を実体験できる、それもムジャヒディンや世界のゲリラが使用している自動小銃カラシニコフが撃てる、結構評判の良いミニ観光スポット、ダッラではあった。
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