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2016年3月27日 (日)

大正十五年の《 六神丸 》

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 農歴日めくりカレンダーじゃ、今日、3月27日日曜の巳刻(9~11時)が〈吉〉となっていたからかどうか知らないが、久し振りに門司港レトロに足を向けてみると、岸壁沿いのエリアに、申し訳程度に並んだ食物屋台とは別に小さな露店が沢山並んでいた。
 何ごとかと寄ってみると、古物・骨董の出店だった。
 一般市民のフリーマーケットならそのまま通り過ごしたろうが、その類のもあったものの、少しく冷やかしついでにあれこれ眺めていると、本職らしい古物・骨董商の方に色々と面白い物が転がっていた。
 まだ初々しい山口百恵が口元にジャムかケチャップをつけた表紙の少年マガジンとか先だって亡くなった原節子が表紙になった月刊平凡なんかが、かなり綺麗な状態で展示されてて、思わず見とれてしまった。
 マガジンは1500円の値を言われ、平凡の方は6000円。
 確かに、保存状態も良く、マニアなら買ったろう。
 
 と、ある店で、大きな鞄の中に、何処かで見覚えのあるものが無造作に放り込んであった。
 派手なデザインの、何と、《 六神丸 》ではないか!!
 
 まじすか!?
 
 さすがに自分の眼を疑ってしまった。
 ビニール・ケースの中に入れてあったのを取り出し、確かめてみると、果たして本物。
 漢字ばかりの中にローマ字で小さく大阪の製剤会社の住所が記されていた。
 
  《 鳳龍虔脩 六神丸 》
 
  六神丸って、元々は中国の漢方薬だけど、戦前から国内でも多くの製薬メーカーが競って作っているようで、現在でも相当の数が出回っている。伝統的な和薬《救心》もこの六神丸を元に作られたもの。この製薬会社、今だに需要があるって訳で救心と六神丸の両方を出しているという。


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 中国のと日本のとでは、薬事法の問題もあってか、随分と効能が異なってきていて、中国のは咽喉(のど)の痛み、歯痛、口内炎等に、最近じゃ喉頭癌も含まれるようになってきてるようだ。国内のは、救心と同様、心臓疾患的な諸症状に特化されているようだ。企業によって若干のずれもあるらしい。
 その両方とも未だお世話になったことはないけれど、このレトロの古物商が陳列していた 《 鳳龍虔脩 六神丸 》って、現在は存在してないようだ。

 『 200円! 』ってことで、つい買ってしまった。
 普通の紙袋に印刷された紺と赤地に白抜き文字と絵柄が、如何にも遥か昔日の東アジア的溶融を想わせる。上方に“高貴薬”の文字が冠され、左右に“支那政府商標登録願”、“日本政府官許”の文字が配されている。
 裏側は微細だがちょっと破損箇所もあり、真ん中に、販売元の《 六神堂薬房 》の住所(東京)も記されている。上下に恭しく封印もしてある。そのデザインも悪くない。
 ずらり薬効が列挙され、“急性慢性胃カタル”や“心臓弁膜症”から“感冒”、“腹痛”まである。左下に、掠れてるけど別の印字で、片側に
 “大正十五年四月一日改正割増粒”
 と何とか判読できる。その隣の列のは殆ど読めず、一番下に定価らしい“銭”の文字が辛うじて分かる。
 つまり、この紙袋=《 鳳龍虔脩 六神丸 》って、大正十五年に発売された代物って訳だ。

 ・・・ まじすか !!

 封印は少し擦り切れてるけど破られてなくて、古物商の親爺さんが「飲めないんだろうけど・・・」的なことを呟いてたのは、どうも、そのことらしく、つまり、触ってみると、中に何やら堅い物が感じられる・・・つまり、大正末に生産され封入された時のまま・・・日支事変、太平洋戦争を経て更に70年、つまり90年の歳月を経て、ぼくの手元に届けられたってことだけど・・・

 家に戻って早速ネットで一応調べてみた。
 一向に《 鳳龍号本舗 》なんて名かすりもしない。
 もう存在しないメーカーなんだろうし、ひょっとして別の名に変わっているのかも知れない。
 で、あきらめ、六神丸ってどんな種類のものがあるんだろうと、イメージの方を眺めている内、ふと、同じような絵柄に出くわした。
 画像が小さくも一つ判然としないものの、同じ《 鳳龍号本舗 》なのが確認できた。
 そして、その同じブロガー、中身を取り出した写真も提供していて、かなり小さな管状の瓶
の中に微細な丸薬が覗け、背後に解説書らしき紙片を拡げている。
 その余りの小さなガラス瓶と底に収められた丸薬・・・・・・
 他の六神丸も同じような微細なガラス瓶入りなんだろうか?


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 改めて紙袋に触って確かめてみると、いやはや、その画像と同じような大きさと形の感触、そして光に翳すと、紙状の四角い影が薄っすらと透かし見えるではないか・・・


 もう何年も前、このブログで、大泉黒石の《 六神丸奇譚 》を紹介したことがあった。
 日清戦争の前後だったか、誘拐された子供たちが、動物性生薬で有名な六神丸の材料になっていたという長崎の中国人街を舞台にした怪奇物。魯迅の《 薬 》にも通じる素材だっただけに、ぼくの好きな小品でもあった。
 そのかかわりでの《 六神丸 》だったわけだけど、それにしても、大泉が《 六神丸奇譚 》を発表した頃とそんなに離れてない頃の実物の《 六神丸 》が巡ってくるとは・・・ 
 
実に、縁は奇なもの。


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