因果応報的怪異譚 残穢
ネットやなんかで、やたら『怖い、怖い』と喧(かまびす)しかったので知っていた《 残穢 住んではいけない部屋 》、偶然youtubeで見つけ、観てみた。
監督・中村義洋も原作の小野不由美も初めて聞く名前で、“怖いらしい”以外何の先入見もなく観れた。只、何しろパソコンの画面なので、迫力(怖さ)の点で些か弱くなってしまうのは仕方ない。
この映画が比較的ホラーとして成功しているのは、やっぱり、妖魔・屍霊の類が薄闇の中、杳として形姿が明瞭でない黒々とした陰影ばかりの悪夢めいた存在だったからだろう。
それを証すように、ドサクサ紛れのように最後になってその姿を晒してしまうのだけど、そのお粗末さ加減って、それまでの程よい緊張を突如青天の霹靂の如く白々さのうちに打ち砕いてしまった。
要は、単純に、技術が拙いの一言に尽きる。
サブ・タイトルで分かるように、“建物”にまつわる怪異譚。
別段斬新なモノがある訳じゃなく、使い古された感のある定番で、いわゆる地縛霊+憑依霊=残穢。二年前の前田敦子・主演の《 クロユリ団地 》に相似した集合住宅が舞台。
女性作家と女学生の主人公の二人が“実話怪談”(=都市伝説)を基に怪異現象の因果関係を辿ってゆく。
地縛霊の因果を集合住宅=場所(土地)に求め、どんどんと時代を遡ってゆくプロセスがミステリアスな謎解きって寸法で些かスリリングに仕立てられているのが、この映画の面白味なんだろう。
何たって原作の舞台が京都ってところが妙味。
東京と違って、仄暗い辻裏の一隅からすらちょっと紐解こうとしただけで、古から千年のオドロオドロしい血と嗚咽の生々しい惨劇・歴史が噴き出して来かねない。
ところが、この映画、そんな金襴緞子や鎧甲冑の時代まで遡行することもなく、明治の富国強兵策的一環としての九州・福岡近辺の石炭産業によって財を得た富豪一家に辿り着く。石炭採掘現場での忌まわしい惨劇(冷酷な企業利益最優先による企業の論理に因る)にすべての遡源・根因を見出す。
原作者の出自が福岡・筑豊に隣接する大分であることに何か起因しているのかも知れないけど、普通に考えれば、古都・京都ならではの、もっと根の深い縁因が、敷地の底深く禍々しく蜷局を巻いている可能性も垣間見えてもおかしくはない。
つまり、作者が、敢えてそれ以上の追及を押し留めてしまったって訳だけど、だとするとそこには如何なる因縁譚が伏在してたのだろうか?
その辺りをあれこれ斟酌し想像していって、原作や映画よりもっと凄絶なあるいは逆に因果応報的紅蓮の火焔に焼き焦がされる紅い一本の、あるいは無数の糸を脳裏に結像するてのも、一興かも。
監督 中村義洋
脚本 鈴木謙一
原作 小野不由美《残穢》(新潮社)
2016年公開(松竹)




