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2016年7月の3件の記事

2016年7月16日 (土)

因果応報的怪異譚 残穢

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 ネットやなんかで、やたら『怖い、怖い』と喧(かまびす)しかったので知っていた《 残穢  住んではいけない部屋 》、偶然youtubeで見つけ、観てみた。
 監督・中村義洋も原作の小野不由美も初めて聞く名前で、“怖いらしい”以外何の先入見もなく観れた。只、何しろパソコンの画面なので、迫力(怖さ)の点で些か弱くなってしまうのは仕方ない。
 この映画が比較的ホラーとして成功しているのは、やっぱり、妖魔・屍霊の類が薄闇の中、杳として形姿が明瞭でない黒々とした陰影ばかりの悪夢めいた存在だったからだろう。
 それを証すように、ドサクサ紛れのように最後になってその姿を晒してしまうのだけど、そのお粗末さ加減って、それまでの程よい緊張を突如青天の霹靂の如く白々さのうちに打ち砕いてしまった。
 要は、単純に、技術が拙いの一言に尽きる。

 
 
 サブ・タイトルで分かるように、“建物”にまつわる怪異譚。
 別段斬新なモノがある訳じゃなく、使い古された感のある定番で、いわゆる地縛霊+憑依霊=残穢。二年前の前田敦子・主演の《 クロユリ団地 》に相似した集合住宅が舞台。
 女性作家と女学生の主人公の二人が“実話怪談”(=都市伝説)を基に怪異現象の因果関係を辿ってゆく。
 
 地縛霊の因果を集合住宅=場所(土地)に求め、どんどんと時代を遡ってゆくプロセスがミステリアスな謎解きって寸法で些かスリリングに仕立てられているのが、この映画の面白味なんだろう。
 何たって原作の舞台が京都ってところが妙味。
 東京と違って、仄暗い辻裏の一隅からすらちょっと紐解こうとしただけで、古から千年のオドロオドロしい血と嗚咽の生々しい惨劇・歴史が噴き出して来かねない。
 ところが、この映画、そんな金襴緞子や鎧甲冑の時代まで遡行することもなく、明治の富国強兵策的一環としての九州・福岡近辺の石炭産業によって財を得た富豪一家に辿り着く。石炭採掘現場での忌まわしい惨劇(冷酷な企業利益最優先による企業の論理に因る)にすべての遡源・根因を見出す。
 原作者の出自が福岡・筑豊に隣接する大分であることに何か起因しているのかも知れないけど、普通に考えれば、古都・京都ならではの、もっと根の深い縁因が、敷地の底深く禍々しく蜷局を巻いている可能性も垣間見えてもおかしくはない。
 つまり、作者が、敢えてそれ以上の追及を押し留めてしまったって訳だけど、だとするとそこには如何なる因縁譚が伏在してたのだろうか?
 その辺りをあれこれ斟酌し想像していって、原作や映画よりもっと凄絶なあるいは逆に因果応報的紅蓮の火焔に焼き焦がされる紅い一本の、あるいは無数の糸を脳裏に結像するてのも、一興かも。


監督 中村義洋
脚本 鈴木謙一
原作 小野不由美《残穢》(新潮社)
    2016年公開(松竹)

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2016年7月 8日 (金)

長く熱い夜のリロイ・ジョーンズ的反芻

Leroi_jonew


 中国農歴日めくりカレンダーの、7月7日は 《小暑》となっていた。
 ネット検索してみたら、夏至の15日後、梅雨のそろそろ終わり頃で、徐々に本格的に暑くなってゆく季節という。小暑(あるいは大暑)から暑中ってことで、 《暑中見舞い》を出す時節でもあるらしい。確かに、我が南西辺境州は、このところ日中路上は35℃前後だった。(翌金曜からは雨天。)

 
 もう15年以上前から年々気温が高くなってきていて、
 
 「来年こそは、きっと40℃世界に突入するに違いない」

 と勝手に確信し始めてもう5年ぐらい過ってしまって、単純曲線って訳でもないらしいのが分かってきた。
 それでも、じわじわとやはり最高気温は上昇してて、極地の氷山が溶けつづけたり地球温暖化の進行、同時にもっと大きなスパンでの氷河期への深化という矛盾的並行って訳だけど、人類的犯罪としての地球温暖化がその氷河期をも突き破ってしまう地球破壊=人類自滅って、昨今のハリウッド映画の好餌となって久しい。


 約50年ほど前、1967年7月12日、スパイク・リーの《 ドゥー・ザ・ライトシング 》宜しく長く熱い夜だったのか、ニューヨークの対岸ニューアークで黒人運転手に対する警官の暴力から、数十人が死に千人以上が負傷する一大黒人暴動が発生した。
 大統領が黒人になってからも、この手の、警官による黒人達に対する、警官達の執拗な暴力(往々にして、KKKの全盛の頃と寸分も変わることのない白昼堂々の虐殺事件の形をとることも少なくない)って枚挙に暇がない。(つい最近も同様の事件が起こったらしい。)
 確かに、構造的なものなのだろう。

 この年、全米で黒人暴動が頻発することとなってしまうのだけど、このニューアーク暴動に、黒人解放論者・詩人・音楽評論家のリロイ・ジョーンズ(後、アミリ・バラカに改名)も関わっていて、逮捕されたあげく撲殺されかかったという。この5日後の7月17日、ジャズ・サキソフォーン奏者・ジョン・コルトレーン(当時、一部のミュージシャンや青年たちにとっては、“神”的な存在だったようだ。)が逝ったり、この1967年の7月って、米国黒人ムーブメントにおいて、象徴的な年月(ねんげつ)。


 リロイ・ジヨーンズのこの奴隷の勲章論とでもいうべきフレーズ、如何にも彼らしく気に入っている。
 そんな彼もすでに帰らぬ人となってしまったが、肝心の米国の黒人達って、"良きサーバント"として大統領の勲章まで白人旦那達が気前よく呉れる御時世になつても、基本、半世紀前と変わることのない劣悪な境遇に貶められつづけている。

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2016年7月 1日 (金)

2016・時代閉塞的集団ヒステリー 10 クローバーフィールド・レーン

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封切りの翌日曜の2回目で鑑賞。
 客は疎ら。
 前作《 クローバーフィールド 》(2008年)の悪夢的世界は結構気に入っていた。
 その後、“2”もやがて出来るような情報も見かけて期待してたのがさっぱり。忘れた頃、8年も過ってようやくくリリースされたのがこの《 10 クローバーフィールド・レーン 》。
 随分と前作とは別様な、というより、前作=オリジナルの世界像を持てあぐね、物語の導入でしかないはずの部分をめいっぱい引っ張って、最後にほんのちょっと形ばかりのそれらしき体裁を取り繕ったって尻切れトンボ的代物。
 いわゆる続編、“2”を前提としてしか了解性を有てない仕上げになってるのだ。
 え、えっ・・・・確か、この作品って、前作の続編じゃなかったっけ?
 前作《 クローバーフィールド 》もそんな作りだったはず。昨今“ 続編につづく ”的な尻切れタイプが流行ってはいるが。勿論、これも現実って必ずしも予定調和的に物事が解決・完結するわけじやない、否、むしろそのまま曖昧模糊のまま迷宮入りって方が少なくないのだからそっちの方がリアルといえばリアル。

 
 ブログ見ると、制作のJ・J・エイブラムス自身は、現在的に、《 クローバーフィールド 》当時と相違して巨大怪獣を登場させメインに据える理由・状況がないと考えているらしく、今回のこの作品も外からの持ち込み企画だったらしい。
 突如夜のニューヨークに降って湧いた形姿曖昧に黒々と聳えた巨大な怪魔(スタッフたちはクローバーと呼んでいたらしい)、宇宙からの侵略者と断定する者は居ても定かではなく、正体不明なまま怪魔はニユーヨーク10クローバーフィールド・レーン破壊しまくってゆくのだけど、時代は正に、《 9・11 》の記憶いまだ醒めやらぬ逢魔ヶ刻、国際貿易センター・ビルの黒煙の象徴の如く巨大化した夢魔(=クローバー)と無数の殺戮球体の跳梁跋扈するおどろおどろしい一抹の悪夢ってところが中々の妙味だったのだけど、今度の作品は、前作との差異を特化しようと密室ソリッド・シチュエーション・ホラー、猟奇誘拐殺人等あらゆるジャンルの演出をまぜこぜにし、怪魔クローバーは何時現れるのを今か、今かと期待して待っている観客の先入観を弄ぶように何時果てることもなく長々と引き延ばしつづけ、やっと最後にクローバーとは別個の、怪魔というよりエイリアン風の巨怪が出現するって次第。
 これって、トム・クルーズの主演した《宇宙戦争》(2005年)と相似過ぎ。
 トム・クルーズと娘のダコタ・フェニングが招かれた隠家(シェルター)の持主の男との猜疑に満ちた共棲関係ドラマが延々と展開されつづけてるような代物で、これまでの経緯からしてどうにも疑わしい更なる続編“2”を、さももっともらしく匂わせ正当化を計っている。


前作の集団劇と違って、冒頭、同居していた男に愛想を尽かして一人家を逃げるように出てゆくメアリー・エリザベス・ウィンステッド扮するミシェルを主軸に物語は展開してゆく。
 昨今流行の“ アクティブな女 ”の範疇なんだろうけど、そこから一歩も二歩も踏み越え逸脱したヒステリックで短絡的な、何とも“危ない”女で、傍にいるとどんな惨劇に引きづり込まれるか分かったもんじゃない。冒頭の別れた男って、このキャラだとむしろまともな男だったのかも知れないって疑念すら浮かんでくる。これって、2010年代末期資本主義米国の鬱屈し苛(いら)ついた若い女たちを象徴するキャラなのかも知れない。
 事故った彼女を助け出した、と自ら称するシェルターの主(ジョン・グッドマン)を、彼女は、やがて猟奇誘拐殺人犯と決めつけ(映画のあっちこっちでそういう流れにもっていこうと符号合わせ的伏線を施してはいるのだけど)、終いにはシェルターもろとも潰えさせてしまう。怖い、怖い・・・一体どっちが危険人物なのか分かったもんじゃない。
 そしてやっと真打ちの筈の宇宙怪獣の登場となり、終幕。

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