眼下の海峡的騒擾を見続けてきた 厳島神社(伊崎) [ 下 ]
ここの厳島、鈴ヶ森稲荷の両神社、一通り見て廻って気づいたのは、荒廃とまではいかないものの、些か朽ちた観は否めない。もう一つの新地の長門國厳島神社の方は数百の騎兵隊員の墓標が整列し祀られているのからして如何にもオフィシャル的格式って趣きなのに較べて、この伊崎厳島神社の方はこじんまりとしている。そもそもが、地元漁師町・伊崎の人々の、機縁は源平合戦の時の平家船からの遺物ってこらしいけど、「航海安全」祈願などが主眼なのだろうから、村の鎮守的存在ってところだろうか。
神社の拝殿の屋根瓦こそまだ葺き替えて間がないのか黒々として艶やかだけど、朱塗装の剥落は昨今のトロピカル的焦熱故ってこともあろうが蔽うべくもなく、境内のあっちこっちに破損・倒壊したまま放置された石柱や石灯篭が転がっていて、中には相当年月も過っているのか土を被って久しいものもある。
アベノミクス的凋落と言ってしまえば簡単だけど、列島中年々の漁獲量の減少と高齢化で、地元の氏子たちのそれを支える財政的物理的力量も減衰してゆくばかり。かつかつの維持が精いっぱいってとろなんだろう。
ふと、以前直接眼にして驚いた瓦解と遺棄の完膚なきまでの廃墟と化してしまっていた小倉・頂吉の高倉神社や門司・田野浦の春日神社の惨状を思い出した。ここの神社も、いづれ下界の伊崎の漁師町の活性的崩落によって同じ運命を辿らないとも限らないという一抹の危惧を覚えてしまった。
( 腐食して倒壊した鳥居もそのままの、人一人がやっと通れる幅の恐らく旧い祠堂。ブログの写真見ると、この鳥居まだ立っていたので、倒壊したのは比較的最近のことのようだ・・・)
昼尚仄暗いを絵にかいたような鈴ヶ森稲荷神社の奥。
如何にも的な怪しげな雰囲気に満ちていて気に入ってしまった。
尤も、逢魔ヶ時以降は一人居座ろうなんて気は毛頭なく、さっさと退散するに限る。
いくら本拠地=阿弥陀寺から離れているとはいえ、何しろ[ 耳なし芳一 ]はじめ、平家怨霊の跋扈するエリアでもあるのだから。
右の小さな祠堂は、[ 稲荷大明神 ]とある。
その奥の神社の裏口とおぼしき境界に佇む緑蔦繁茂した廃屋と仏像三体。
戦前昭和の年号が刻印されていた。
右端の火焔の燃え立っているのが航海安全の[ 波切不動明王 ]。
廃屋の横を通る鎮守の森ならぬ裏山に続く裏参道。
裏山といっても神社自体がその丘の頂上近くに位置しているので、すぐ枯れた草原と雑木林に竹藪の意外と開けた頂きに至る。何か独特の雰囲気の場所で、そこを越え、反対側に行くと、今度は関門海峡から響灘につづく小瀬戸の海に面した伊崎の海岸奥に下る道になる。右手向うに、彦島に向かう高架の彦島大橋が覗けている。
この神社の一角は廃墟や空家と覚しき旧い建物が多く、全体沈んだ佇まい。
それだけに、そんなうらぶれたというより、静かな境界世界めいたのが好きな御人には興味深いスポットかも知れない。
そこで興味深い因縁を紹介すると、この伊崎厳島神社って、戦後間もない1950年に火災に遭って延焼したらしいのだけど、それから42年後、1992年に今度はもう一つの長門國厳島神社の方が、浮浪者の放火によって燃え落ちていたという。
つけ火といえば、すぐにJR下関駅の放火炎上が思い浮かぶ。
それが、ちょうど、その長門國厳島神社の燃えた年から14年後の2006年。
つまり、皆「7」年の倍数(間隔)。
そして、その「7」年にこじつければ、これは火災とは少し離れてしまうけど、下関の事件として一番有名になったのが、1999年の下関駅無差別殺人事件。
正に世紀末ミレニアム的因縁の年。
そして、もう少しこじつければ、2013年周南市金峰で起きた所謂「山口連続殺人放火事件」もあった。
ラッキーナンバーのはずが、アベノミクス本拠地じゃ、凶数となってしまったって訳だけど、高杉晋作たちが命をかけた維新革命も、戦後半世紀自民党支配およびアベノミクスですっかり息の根を止められてしまって、新地の地下で眠る晋作も浮かばれず、あるいは悲惨な末路を辿ることとなった奇兵隊員たちが怨霊となって警鐘を鳴らしてでもいるのだろうか。
ついそんな仄暗い想念に捉われてしまう2018年の伊崎・厳島神社の初春であった。
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