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2019年4月15日 (月)

強迫観念的譫妄  《 アンシンカブル 襲来 》

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以前、“ 9・11”的不安神経症産物、米国映画《 テイク・シェルター 》(2011年)に触れたことがあった。
 日毎の異常気象的世界崩壊の悪夢が絶対的予兆として主人公の精神・現実世界を圧倒してゆくストーリーだったけど、その主人公の抑鬱的な強迫観念世界と現実との溶融した境界世界に比して、このスウェーデン映画《 アンシンカブル 襲来 》( 2018年 )は、もっと規模を大きくした主人公の父親の抑鬱的な強迫観念的譫妄世界といえよう。

 

 スウェーデン映画といえば、当方にとってはもう古典の部類に入ったベルイマンに尽きる。それでも、ベルイマン以降の様々なジャンルの作品、結構面白いものがあれこれ出てきて、他のデンマークやらも含めて北欧映画ブームの観すら呈している昨今ではある。
 物語の基本は昔ながらの“父と子”、親子の関係的相克。
 伴侶たる嫁とその一人息子に対する父親の日本とそう違いないようなギクシャクした関係的軋轢によって一層色濃く父親の精神世界に蜷局(とぐろ)を巻いていったスウェーデンの政治的社会的環境的産物としての“ ロシアの侵略 ”的譫妄。
 いわゆるイスラム原理主義勢力による侵略=テロわも併せての、きわめて今日的な政治的社会的強迫観念で、ロシアを他の国名に替えても成り立つ普遍性をもった冷戦以来、否、もっと戦前にまで遡る仮想敵国=排外主義的観念群。

 

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スウェーデンでは、2010年に首都のストックホルムの繁華街で、行動途中で誤自爆したらしい自爆テロ事件、2017年にも同じ繁華街で、盗難トラックでISIS( イスラム国 )と思われる人物が通行人を次々に撥ねて行ったテロ事件(この事件の際、国会議事堂や地下鉄が封鎖されたという。)が起きていて、隣国ノルウェーでも、2011年7月22日、首都のオスロ政府庁舎爆破事件とウトヤ島銃乱射事件が起き、とりわけウトヤ島銃乱射事件では69人も殺害されたのは記憶に新しい。

 

 最近、スウェーデン政府の民間緊急事態庁が、「もし、危機や戦争になったら(IF CRISIS OR WAR COMES)」という小冊子を全世帯に配布したという。
 例えば、侵略者に対する抵抗を弱めたり、無抵抗を呼び掛けたりするニュースは皆デマである、我々は最後まで抵抗し続けるんだ、という戦前、米国との開戦間際、日本軍が発した戦陣訓(その後、警察や民間人にもそれに準じた運動が拡まった )と相似な総力戦態勢的プロパガンダの類。
 2014年のロシアによるクリミア半島併合やウクライナへの軍事介入で、ロシアの領土拡張主義として危機感を募らせていたらしい。それでなくとも、元々、ロシアとスウェーデンは昔から互いに敵対的な関係にあったようで、フィンランドを舞台に武力衝突してこともあったという。
 そんなスウェーデンの社会的背景の下に、“俺が養ってやってるんだ ! ”と前時代的な感性・価値観から抜けきれない父親との抑鬱的な軋轢・相克に疲れ果て嫁も息子も離れていってしまう。スウェーデン=“進んだ社会福祉の国”ってイメージからすると、随分と違和感を覚えてしまう。そういう家父長的保守的な父親の、嘗てナチスの下に参集していった没落的中産階級という図式そのままに、仮想敵国的強迫観念=盲目的排外主義が更に一歩踏み込んでの譫妄的具象化=譫妄世界=現実。
 その変容した譫妄的現実世界に、彼の息子や周辺の人々が次々と巻き込まれてゆくのだけど、それが集団ヒステリー的に世界に蔓延しているのが現実の昨今的状況ってところなんだろう。
 《 テイク・シェルター 》が当時の時代の心象風景だったように、この《 アンシンカブル 襲来 》も2020年代を前にしての時代の心象風景なのだろう。
 
 
監督・ヴィクター・ダネル
脚本・ヴィクター・ダネル 、 クリストファー・ノルデンルート
2018年( スウェーデン )

 

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