朦々たるピンディー 1994 Ⅱ
血に塗れたナイフや斧を手にした男達が通りのあっちこっちに屯し、男達の服にも赤黒く返り血が滑っていた。通りには点々と血溜まりが出来、血腥い独特の臭いが充満していた。中国ビザ取得のためやむなく、ペシャワールでの数日の滞在を余儀なくされた最後の朝の光景。
通りの両側に並んだ店々のほとんどがシャッターが閉まっていた。
《 イード 》だという。
数日前、派手にデコレーションされた羊や山羊、牛なんが繋がれ引っ張られてゆくの眼にしてたが、どうどうと朝一番、路傍に、大きな牛頭が両の眼を瞑ったまま横たわっていた。斬首して大鍋で煮たりあるいは焼いたりして頂くらしい。
そういえば、以前イランの聖地のある街のゲスト・ハウスでも、朝寝惚け眼にムッとする独特の異臭に気分を損なわされたことがあった。コンクリートの中庭に面した扉を開けると、扉の真ん前に、ずらり血塗れの羊の生首が何個も無造作に転がしてあって、腰抜かすことはなかったけど、唖然とはしてしまった。泊客が、皆イラン人達だったが、集まって皆嬉しそうに生贄の肉を頬張っている真っ最中。ボクも勧められたが、さすがに血腥い臭いに食欲は湧かず、丁重に断った記憶があった。それ以来の原初的祭祀との御対面。
夜の10時過ぎにラワルピンディ―に到着。
祭日だからか、ジュース屋なんかが煌煌と灯を点して営っていた。
また新市街のホテルに泊まることになった。5、6階建てのAL FALAHで、シングルで70Rs。21号室に入ったもののゴキブリがいっぱい這い廻っていたので、隣の22号室に移った。この部屋も窓はあったが廊下に面してて、風通しは最悪。けど、2泊だけってことで我慢。でも1.5リットルのボトルに入った飲料水のサービスがあり、水道の水は普通に出た。前回泊まったAl Muslim周辺の水事情が悪かっただけのようだ。
パキスタンにも源氏パイはあって、ペシャワールのカイバル・ホテルの直ぐ近くの食料品店屋で頻く買って重宝していたけれど、このピンディー新市街の門のパン屋で買ったのは、油が廻り過ぎて喰えなかった。( 1個5ルピーも取られた。)
ホテルのレセプションのある2階のレストランで、RCコーラ、トースト、紅茶とゆで卵の朝食。RCコーラ=ロイヤル・クラウン・コーラは、ラホールでも店頭にずらり並んでいるのを見かけていて、当時は流行っていたのだろうか。
レストランに備え付けのテレビで、巨体のパキのカッワリ―の総帥ヌスラット・ファティ・アリ・ ハーンが、依然と違って、伝統的な楽器以外のエレキ・ギターやサックス、キィー・ボードなんかを増やした楽団を率いて演奏していた。やっぱしサウンド・ボリュームが違う。YOU TUBEで見れるCoke Studioシリーズなんかでもはやリファレンスとなった構成の先駆けなんだろう。
ピンディーは暑い。
通りを歩いている男達もターバンかショールを頭に被り、誰も颯爽とは歩いていない。
このホテルは、周辺でも一番高く、屋上からピンディー中が見渡せた。
この時季、ペシャワールと同様、夕刻から風が吹き始め、雨雲が張り出してきても仄んの少し降雨。夜遅くまで雷光がつづいて、暗雲と夜の闇の向うに、ピンクや黄色の稲妻や光の帯が、360度明滅する様が眺められた。
今晩もファン全開で蒸し暑い中での就寝。
それでも、中国ビザも貰って、いざ明日は、フンザ・クンジェラーブ峠・中国へ向かっての、まずはギルギットへ。
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