クメール的呪句世界の跳梁 《 ネクロマンサー 魔界大戦 》 (2005年)
しばらく御無沙汰だったタイ映画、ビデオだけど、些かの期待感をもって観てしまった。
以前、このブログでも紹介した 《 ネクロマンサー (Necromancer)》 (2005年)の、同じ監督によるリメイク、しかし、実際には、かつての2005年オリジナル版の主演二人もちょっとだけど出ていての続篇だった。
タイの十八番の黒魔術、それをあろうことか警官達が、いわゆるギャングたちと同様に駆使するモー・ピー( 黒魔術師 )・コップという新しいジャンルが出来たと、もう十五年以上も前に当方勝手に面白がっていたものだけど、その後のタイ映画でそんなジャンルの映画が続出したかどうか定かじゃない。
予告編もさることながら、本編もそれなりに面白く出来ていて、好きな作品の一つだった。陥れられたチャトチャイ・プレングパニット演じる元黒魔術刑事とアカラ・アマタヤクン演じる若い刑事の対決って図式で、やがて若い現役刑事も黒魔術に染まり、二人の大黒魔術師=ネクロマンサーの座を巡っての対決にまで至る。結局、若い刑事の方が勝ってしまうのだけど、そのまま刑務所の奥深い呪文によって封印された獄房に幽閉されてしまう。
おどろおどろしい如何にもタイ風味溢れる一作であった。
十五年近く過っての今度の2020版は、しかし、前作の如く、暗雲垂れ込める沼地の一軒家とは無縁の、バンコクのど真ん中、コンクリ剥き出しの工事途中の上階で、主人公=路上格闘家・青年ジャイ( プリン・スパラット )が、金を賭けた路上ファイトをくり広げるシーンから映画が始まる。
霊験あらたからしい彼の父親の魔術的ペンダントが一味に狙われていて、ファイトの帰路、父親とジャイの乗っていた車が銃撃され、父親は殺害、ペンダントも奪われてしまう。被弾し九死に一生を得たジャイは、父親の仇を討とうとして、黒魔術世界にのめり込んでゆく。
全身呪句の入墨を付された身体のイケメン俳優も悪くはないのだけど、オリジナルほどにおどろおどろしさも希薄で、筋立ても、単なる格闘物のステレオ・タイプの域を出るものじゃなく、敢えて十五年も前の自身の作品をリメイクした意図も定かじゃない。
復讐を了えたジャイが、呪符で封印された獄房に入れられたのと入れ替わるように、自分の弟を殺害され復讐のため獄房から出て来ていた黒魔術師(チャトチャイ・プレングパニット)が、何処かへ向かう車両のラスト・シーンで、後方に乗っていたも一人の黒魔術師(アカラ・アマタヤクン)がむっくり起き上がり、いきなり、背後からチャトチャイ・プレングパニットに襲いかかろうとするところで終劇になってしまうのだけど、むしろそっちの方が、この映画がその二人の大黒魔術師=ネクロマンサーの戦いのプロローグに過ぎないって趣むきが、次回作を予想させるのだけど・・・
尤も、もうそれから二年も過ぎていて、果たして何時その双頭黒魔術師的一大対決篇がリリースされるのか。それとも、双頭が三つ巴の対決になってしまうのか。
そういえば、化生達の暗闘を描いた《オ-パパティカ》(2007年)なんてのもあって、クローネンバーグの《 スキャナーズ 》(1981年)ともども、超能力者達の跳梁跋扈世界への渇望って、現実社会の構造的な軋轢葛藤・不如意の底からの超越的希求ってところなんだろうが、最近ようやくその端緒についたVRゴーグル世界はその端的というべき方途に違いない。
映像の一層の精緻化と自在性が得られれば、単なるゲームから、正に如意的世界の実現って方途に大きく踏み込むことになる。やがて感覚性も加味されることになるのだろうから、随分と人間生活の有様も様変わりしてしまうのかも知れない。例えば、古くは映画 《 エルム街の悪夢 》 や最近新作として出た 映画《 マトリクス・リザクション 》なんかをゲーム化した世界の中に入ってしまうと可成りしんど、くメンタル的にもハードなものになってしまって、下手するとメンタルをやられてしまいかねない懸念も。
尤も、権力と企業が、自己利益のために、その十全的展開を歪曲し阻害するのもみえみえで、支配的機能の一つとして構造化され、さながらSF映画そこのけの、バーチャルの薄い皮膜も霧散したシュールなまでの現実世界が冷え冷えと開けるばかりなのかも知れない。
《 ネクロマンサー 2020 (Necromancer 2020)》 ( 2019年 )
( アカラ・アマタヤクン演じる黒魔術師・モーピー・コップ )
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