異形の猿神は楽神?
一体いつどこで買ったのか、もう、些か燻すんだブラスの、正体定かならぬ、チべタン・ホルン風のチャルメラを片手にした異貌の十二センチぐらいの立像。
口蓋の部分が膨らんで前に出ている骨格から、人面の鬼神じやなく、猿猴的風貌の猿神らしい。
タイの仏教寺院の仏塔の脇に侍る黄金に輝く半獣半人のキンナラ( 緊那羅 )像、鳥の下半身に細くくびれた胴の形の良い両の乳房が幻想的なエキゾチシズムを湛えたキンナリーの眷属ともいうべき、巨大な仏塔をずらり並んで両の手で支え続けている異貌の鬼神ヤック(夜叉)や猿神モック。
このインド神話ラーマヤーナ的キャラクターの猿神モックなのだろうか。
あるいは天竜八部衆の緊那羅ともどもの音楽神としての象徴とてのチべタン・ホルンなのか。
ラーマヤーナ( タイだとラーマキエン )的には、ヒーロー猿王ハヌマーンが猿猴的存在としては断トツだろうが、ハヌマーンの如くの凛とした雰囲気も窺えず、さりとてラーマ王に忠義な忠臣的なへりくだった気色も漂わせず、ちょっとお道化た姿態からして、やっぱり、猿鬼的楽師ってところが相場のように思える。
小さな何体かのセットになったブラスの鬼神的楽師像もあるけれど、これもひょっとして太鼓やシンバルを手にした他の像と薄暗い店の奥の棚に一緒に並んでいたのかも知れない。かさばるのでこのおどろおどろしくも些かのユーモラスを湛えた猿神を選んだのか。
彫りもそんなに細かくなく、到底匠の一品とは無縁の、製造的簡易性をもっぱらにした産物なのだろうが、その粉飾を削いだシンプルさと、その異貌性故に、一見呪術的趣きすら覚えてしまう。
タイやクメールの土着的呪術の呪具の一つにも想えなくもない。それでもやっぱし、手にしたのがチベッタン・ホルン=チャルメラってのが、それもそのポーズが何としても禍々しさよりもユーモラスに勝ってしまう。
被り物の両耳あたりの翼状のものは総じて緊那羅像に特徴的で、頭上に伸びた烏帽子風は、タイの緊那羅やヤック・モックの先の尖った冠風と明らかに相違してて、ミャンマーのマンダレー様式と銘うたれたキンナラ像が、当方が確かめた中じゃ、唯一同様の烏帽子風。当然、あくまでキンナラ故に、像自体の姿態はまるで別様。
やっぱし、猿神モックもどきの楽神像ってところに落ち付いてしまうようだ。
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