幕末長崎的風味 茂木ドロップス
長崎といえば、原爆、異国交易=出島、隠れ切支丹ってところがすぐ思い起こされるが、昨今じゃこれに冬場のランタン・フェスティバルが加わるのだろうか。
夏・八月と云えば、やっぱり原爆=敗戦。
六日、広島にウラン原爆リトル・ボーイが落とされ、三日後の九日、長崎・松山町上空で、プルトニウム原爆が爆発し、広島型より威力が強かったにも拘わらず死者は半分の約七万人だった。山や丘の多い入り組んだ地形のせいという。
長崎出身の作家・大泉黒石は、この原子爆弾投下の事を、当時、如何感じていたろうか・・・その辺のところに言及したモノは残してないのだろう。遅かれ早かれ敗戦の不可避を開戦時から確信していたろう黒石にとって、知人も親戚も居たろう近世以来のコスモポリタン都市・長崎の潰滅の報は、鬼哭啾啾たる惨状が陰々鬱々と脳裏にゆらめきつづけるばかりの慟哭劇だったろうか。
横浜・神戸に較べて一番小さなチャイナ・タウンらしい長崎・新地中華街に並んだ土産物屋の店頭で、派手派手しい意匠の中国風味満載の中で、妙に地味な佇まいの小缶が眼についた。手に取って見ると、ドロップス缶で、中国の帆船・ジャンクの絵が描かれていた。モノクロ絵の上に、小さく 《 飛帆 》と記してあった。
1989年に中国・福州で建造された復元唐船 《 飛帆 》(フェイファン)号のことらしい。オリジナルは、明末・清初の時代に、主に福建省で造られていた木造帆船《 大福船 》。 かつての出島・唐人屋敷に出入りしていた中国の交易船なんだろうか。元々は、対-倭寇の大型軍船として建造されたものともいう。だから、大砲なんかも搭載し、海賊等を撃退することもあったのか。
長崎に寄港する途中のポルトガル船を、オランダ船が襲って、長崎港沖まで追いかけて来たって話もあるくらいだ。
幕末頃、長崎代官屋敷で行儀見習いをしていた三浦シヲが、唐通事に枇杷の種子を貰い、茂木村の自宅庭に植え、やがてそれが茂木枇杷の元祖となったという。以降、長崎の特産品となる。
因みに、茂木は、プルトニウム239原爆の炸裂した爆心地から入り組んだ丘陵の先十キロの天草灘に面した地にあって、直接的な人的損傷は余りみられなかったようだけど、熱波と爆風で窓硝子も粉々になったという。
更に附言すれば、天正8年(1580年)に、大村純忠と長崎甚左衛門純景によって、長崎と伴に、茂木もイエズス会へ寄進された地でもあった。
この茂木枇杷の果汁で造られた、昔ながらの飾らないさっぱりした風味のドロップスも、そんな歴史の変遷の中での人々の喜怒哀楽、諸行無常の妙味が隠されているのだろうか。
更にもう一つ小さな点を付け加えると、茂木びわの由来を述べている冒頭、「 天保・弘化の頃・・・」を、「天保・弘北の頃・・・」と誤植されている。とっくに指摘されてたろうが、既に商品として店頭に並んでしまってたので、それも良しという判断なのだろう。
天保といえば、長州藩で十五万人くらいの大規模な百姓一揆が起きているが、その後も、人肉まで貪る事態にまで陥った天保の大飢饉、大塩平八郎の乱等列島中、世情騒然とした時代でもあった。
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